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それは最善の方法なのか(2019年〔平成31年〕3月23日公開)

 学生時代、実家のある福山市と大学のある下関市を往来する時いつも使っていたのはJR山陽本線の普通列車だった。実家の最寄駅となる福山駅(福山市三之丸町)と大学の最寄駅となる幡生(はたぶ)駅(下関市幡生宮の下町)の間は322.9km(注1)あり、普通列車だと約6時間かかるのだが、いろいろな風景が楽しめることもあっていつもこの長旅は退屈しなかったものである。
 福山〜幡生間の山陽本線には山陽本線から分岐してしばらく先のところで山陽本線に合流するという路線がいくつかある。三原駅(三原市城町一丁目)で分岐して海田市駅(広島県安芸郡海田町新町)で合流する呉線、岩国駅(岩国市麻里布町一丁目)で分岐して櫛ヶ浜駅(周南市久米)で合流する岩徳線、新山口駅(山口市小郡下郷)で分岐して宇部駅(宇部市西宇部南四丁目)で合流する宇部線といったところであるが、福山〜幡生間の長旅の中で遂に通らずじまいになったのが宇部線である。なぜ宇部線の列車に乗ることを選ばなかったのかは覚えていないのだが、停車駅が多くて時間がかかるとか山陽本線に乗り入れる列車があまりない(注2)とかそういうところだったのではないのだろうか。
 その宇部線であるが、途中の居能駅(宇部市居能町二丁目)で分岐し、小野田駅(山陽小野田市東高泊)で山陽本線に接続する小野田線とともに近い将来廃止され、バス専用道路に転用される可能性が今年になって浮上してきたという。私が自宅で購読している中国新聞でも今年1月12日付朝刊の一面でそのことが報じられているのだが、最近廃止された鉄道路線や近く廃止される予定の鉄道路線(注3)の沿線の多くよりもまだ恵まれていると思える宇部線や小野田線がなぜ廃止を取り沙汰される状況になったのか。その理由を挙げると次の通りになる。
・宇部線・小野田線とも利用が減っていること(注4)
・宇部線や小野田線の沿線にある宇部・山陽小野田両市の人口が減少していること(注5)
・宇部線や小野田線に並行していくつも幹線道路(山陽自動車道や国道190号線、山口・宇部道路〔県道6号山口・宇部線〕、県道212号山口・阿知須・宇部線など)が整備されていること。
・山口県の交通の要衝であり、(全てではないが)「のぞみ」号や「さくら」号が停車する新山口駅(山口市小郡下郷)と、宇部市の代表駅である宇部新川駅(宇部市上町一丁目)を鉄道で往来しようとした場合、距離で見れば宇部線経由のほうが近い(宇部線経由だと27.1km、山陽本線経由だと31.4kmとなる)のだが、所要時間は山陽本線経由のほうが早いこと(宇部線経由だと50分程度、山陽本線経由だと35分程度〔宇部駅での乗り換え時間は含めていない〕)。
・新山口〜宇部新川間に並行して設定されている路線バスは本数こそ宇部線新山口〜宇部新川間を走る列車とほぼ同数(宇部線…19往復、路線バス…19.5往復〔新山口駅行20本/宇部新川駅行19本〕)なのだが、この路線バスの中には山口・宇部道路を経由する特急便が8.5往復(新山口駅行9本/宇部新川駅行8本)設定されており、その所要時間は40分程度と宇部線の列車よりも短いこと。
・宇部線沿線には山口県中部の空の玄関である山口宇部空港(宇部市沖宇部)があるが、宇部線は空港アクセス鉄道として有用にはなっていないこと(山口宇部空港の近くに草江駅〔宇部市草江四丁目〕があるが空港のターミナルビルまで400mほど離れており、宇部線の列車本数の少なさや接続の悪さもあってほとんど利用されていない)。
・鉄道路線の維持・管理にはかなりの費用がかかる上に老朽化対策も今後は必要になってくるが費用対効果が見込めないこと。
・宇部線は地盤が悪いところ(注6)を通っている上に途中駅も多いので列車は速度を出して走れないこと(前に書いた、新山口〜宇部新川間について山陽本線経由が早く往来できるのはそのためである)。
・宇部線はかつては石炭や石灰石を運ぶ貨物列車が多く設定されていたが炭鉱の閉山(1967年〔昭和42年〕)や石灰石の輸送手段の変化(注7)により現在は全廃されていること。
・宇部線は宇部市中心部を貫いて通っているが中心部を通る道路とは平面交差が多く、自動車交通に支障をきたしていること。
・宇部線と小野田線は海岸に近いところを通っているため近い将来発生する可能性のある津波で甚大な被害を受ける恐れがあること。
 このように理由を挙げてみれば鉄道が有用だった時代は終わったという考えが宇部市にはあり、それ故宇部線や小野田線を廃止して跡地をバス専用道路に転用しようということなのだろう。しかし、本当にこれで良いのであろうか。ここからは宇部市の考えていることが果たして良いのかどうかを考えていくことにしたい。

1 宇部市の代表駅が宇部市中心部から遠くなることはどのように考えているのだろうか

 宇部市の代表駅は宇部駅よりも宇部新川駅のほうがふさわしいと言える。そのように考える理由は次の通りである。
・宇部新川駅は宇部市中心部の最寄駅であること。
・宇部新川駅は宇部市中心部にある宇部線の駅(注8)で最も大きいこと。
・宇部新川駅は宇部市の経済を支えてきた宇部興産(宇部市小串(注9))の最寄駅であること。
・宇部駅は宇部市の郊外にあること(宇部市役所〔宇部市常盤町〈ときわちょう〉一丁目〕の西北西約6kmのところにある)。
・宇部駅があるところは1910年(明治43年)7月1日に開業した時(注10)は厚狭(あさ)郡厚南村(1889〜1941)に属しており、厚狭郡宇部村(1889〜1921)→宇部市にあったわけではないこと。
・宇部新川駅は宇部駅という名称だった時期があること(注11)
 このように考えると宇部市中心部に山陽本線を通していれば良かったと思う方がいるかもしれないのだが、現在の路線より遠回りになることや建設当時は需要が見込めなかったこと、そして海岸沿いに線路を通すことに強硬に反対する声や政府からの干渉があったこと(注12)などから実現しなかったのだろう。無論普通列車と貨物列車しか山陽本線を通らない現状では山陽本線を宇部市中心部経由にすることなど実現するわけがない。
 現在では遠隔地に住む方が用があって宇部市中心部に赴く時に宇部線や小野田線を利用することはあまりないと思われるのだが、ではもし本当に宇部線や小野田線が廃止されたらどうなるのだろうか。「宇部市中心部に赴くのであれば新山口駅か山口宇部空港からバスかタクシーで行けば良い。そう不便は感じない」とか「自動車を持っているので公共交通機関を利用する必要がない。別にどうでも良い」という声が少なくないかもしれないのだが、次に挙げる問題点はどのように感じるのだろうか。
・ただでさえ宇部市中心部は市内唯一の百貨店であった宇部井筒屋(宇部市常盤町一丁目。1933〜2018)が廃業する(注13)など空洞化が進んでおり、中心部の象徴たる代表駅の喪失はそれに拍車をかける恐れがあること。
・(現在でもいる可能性はあるが)宇部駅を宇部市中心部にある駅だと思い込む方が増える恐れがあること。
・宇部市中心部に鉄道で行けなくなることで宇部市中心部に行くことを億劫(おっくう)がる人が出る恐れがあること。
・宇部市の中枢性が低下し、更なる人口減少を招く恐れがあること。
・宇部市の魅力を減退させる恐れがあること。
・宇部市としては宇部線・小野田線の廃止→バス専用道路への転用を2035年度(平成47年度(注14))までに実現させたいとしているが、2035年(平成47年(注14))時点の宇部市の人口が10万人の大台を割ることは大きな社会的変動がない限りはあり得ないこと。
・宇部市の考えは人口が今後も減少することを念頭に置いたものでしかなく、人口増加や宇部線の利用者増加に向けてどのように動くかが全く示されていないこと。
・日本にある人口10万人以上の都市で鉄道路線が全く通っていないところや鉄道路線は通っているが中心部を通っていないところはあまりないこと(注15)
 記すまでもなく宇部線・小野田線を廃止してバス専用道路に転用することは決定事項ではなく検討事項である。しかし、今挙げたことを考える時中心部を通る鉄道路線の廃止は問題がありすぎるのではないかと感じたくなる。それでも宇部市は鉄道廃止を強行したいのだろうか。宇部市は今一度現状を直視してどのようにするかを考える必要があるのではないかと私は考えるのだが…。

2 山口県は鉄道の振興に対して力を入れているのだろうか

 山口県は日本の大動脈である山陽新幹線と山陽本線が瀬戸内海沿岸を通っているところである。山陽新幹線の停車駅も5箇所と多く、「のぞみ」号や「さくら」号が停車する駅もある。
 それはそれで良いのだが、どうかと思う面も少なくない。問題点を挙げると次の通りになる。
・自動改札機があまり普及していないこと。山口県内の駅で自動改札機が導入されているのは和木・岩国・南岩国・下関の4駅だけである。山陰地方中央部(鳥取県西部・島根県東部)ですら自動改札機が導入されているのになぜ山口・岩国・宇部・下関・周南・防府(ほうふ)と人口10万人以上の都市がいくつもある山口県では導入が進まないのだろうか。

 

広島・山口両県の山陽本線を走る電車の中にある路線図。
ICカード乗車券対応地域、すなわち自動改札機導入地域は水色で塗られている部分である。
山口県の大部分がICカード乗車券に対応していないことがよく分かる。

・日本国有鉄道(東京都千代田区丸の内一丁目。1949〜1987)の分割・民営化後に山口県内のJRグループ各社が運営する鉄道路線で設置された駅は山陽本線の和木駅(玖珂郡和木町和木四丁目。2008年〔平成20年〕3月15日開業)、山陰本線の梶栗郷台地駅(下関市綾羅木新町三丁目。2008年〔平成20年〕3月15日開業)、岩徳線の欽明路駅(岩国市玖珂町。1990年〔平成2年〕9月27日開業)の三つしかないこと。駅の設置を求める声はいくつもあるようであるが、需要が見込めないことや通る列車の本数が少ないこと、設置費用を地元自治体が負担しなければならないことなどが障害になって実現しないままになっているところが少なくないものと思われる。
・日本国有鉄道の分割・民営化後、言い換えれば西日本旅客鉄道(JR西日本。大阪市北区芝田二丁目)発足後に製造された車両があまり走っていないこと。確かに中国地方、特に山陽地方(岡山県・広島県・山口県)は車両の新調がなかなか進まない地域になっているのだが、もし山口県で新しい車両が導入されるとすれば広島地区(注16)→岡山・福山地区の後になるのだろうか。
・山口市中心部に鉄道で赴くのにほとんどの場合新山口駅で乗り換えを余儀なくされること。山口線山口方面と山陽本線下関方面は直通できるようになっているので直通列車があっても良いように感じるのだが山口線が電化されていないことや需要が見込めないこと(注17)などから見送っているのだろう。
・西日本旅客鉄道が運営する鉄道路線の改良(路盤強化や電化など)に対して消極的な面が見られること。西日本旅客鉄道が運営する鉄道路線の改良に際しては通過自治体も費用を負担せざるを得なくなっていることが積極的になれない理由の一つなのだろうがこのままではますます鉄道は利用されなくなる恐れがある。山口県としても鉄道路線の廃止は避けたいことだと認識しているのではないかと思うのだがどうにかならないものであろうか。
・山口県には山陽新幹線の停車駅がない都市や山陽新幹線が郊外に停車する都市が多いのに並行する山陽本線などには快速列車の設定がなく、鉄道利用では不便を強いられること。利用が見込めないことから快速列車の設定は考えない(注18)のだろうがこれでは鉄道は利用しないで下さいと言っているように聞こえる。
・鉄道の近くに空港があるのに連携があまりなされていないこと。西日本旅客鉄道としては山陽新幹線の利用客を奪う旅客機に利することはしたくないという思惑があることや山口県にある空港は便数や行き先が少なく(注19)、費用対効果が見込めないことが背景にあるものと思われる。
 このような問題点が起きている背景にあるのが山口県の人口が30年間で20万人も減っていること(注20)や多くの人口を有する都市(考え方はいろいろあるが私としては現在の福山市と同じくらいの人口(注21)を持つ都市があれば望ましいと考えている)が県の中央部に存在しないことである。そのことは他の面でも不都合を起こしている(注22)のだが、それ故に複数の市町村が合併して山口県には存在しないとされる中核都市を作りましょうなどという話が浮上していたのだろう。山口県でも記すまでもなく平成の大合併は多数の地域で行われた(注23)のだが、その効果はいかほどだったのだろうか。
 山口県としては山陽新幹線と山陽本線で十分だという考えなのかもしれない。しかし、山陽新幹線の停車駅から山口市中心部に行くには山口線を、宇部市中心部に行くには宇部線を、美祢市中心部・長門市中心部に行くには美祢線をそれぞれ使わざるを得ない。更に人口が減り、それに伴って列車本数が減っても自動車やバイクの免許を持たない方々にとっては鉄道はかけがえのない交通機関の一つである。道路整備も大切だが鉄道の振興にも真剣に取り組んで頂けないものであろうか。

3 鉄道の代わりとなるバスは本当に最適な手段なのだろうか

 宇部市は宇部線と小野田線を廃止してその跡地をバス専用道路に転用するとしている。鉄道路線の跡地(注24)をバス専用道路に転用する例は1950年代以降全国で見られ(注25)、山口県から近いところでは福岡市東区に短距離だが存在する(注26)
 鉄道路線跡地をバス道路に転用すると多くの停留所を設置できることや専用道路を通るために朝夕の渋滞に巻き込まれないで済むこと、便数を多く設定できること、ある程度の幅のある道路ならどこでも走れるので自由自在に路線を設定できることといった利点がある。しかし、問題点がないわけではない。宇部線と小野田線に関して浮上する可能性のある問題点を挙げると次の通りになる。
・バスの運賃は多くの場合同じ区間の鉄道の運賃より高くなること(注27)
・宇部線と小野田線は全線が単線であり、もしバスの便数を大幅に増やすのであればすれ違いができる箇所を多く設置せざるを得ないこと。
・宇部線と小野田線は全線が単線であり、もしその跡地を転用したバス専用道路をバスが走る場合、一般道路を走る場合に比べて速く走れるかどうか疑問が残ること。
・宇部線や小野田線は人口集積地を外れた田園地帯を通過している箇所が少なくなく、一般道路を走るバスに比べて利用者が増えるかどうか疑問が残ること。
・バス専用道路と一般道路を相互乗り入れするためには交差箇所の拡幅が必要になること。
・バス専用道路は記すまでもなく他の道路との平面交差は残されるためいくら進入を禁止することを記した標識や看板を立てても進入する人や車(自動車・バイク・自転車・車いすなど)が出る可能性があること。
・宇部線や小野田線は市街地で幹線道路と平面交差している箇所が多数存在することから朝夕の便数が多い時間帯に幹線道路の交通が遮断され、結果交通渋滞の悪化を招く恐れがあること。
・鉄道を廃止してからバス専用道路が開通するまでバス専用道路転用のための準備作業が必要になるためある程度の時間が必要になること。
・バス専用道路に転用されない箇所はある程度生じるためその箇所の利用方法が課題になること。
・便数がどれほどになるかは分からないが、バスの運転手の確保ができるのかどうかが分からないこと。
・一般道路を通る路線バスとどのように住み分けを図るのかが課題になること。
・施設の老朽化や利用の低迷などを理由に結局バス専用道路としての使用を取りやめる箇所が出る可能性があること(注28)
 これらの問題点を宇部市が認識しているかどうかは分からない。無論これらの問題点はこれから行われるであろう論議の中で出てくるであろうがどのように考え、取り扱うのか。その点が気になるところである。

4 宇部市は市営バスの相次ぐ廃業をどのようにとらえているのだろうか

 中国地方で市が路線バス事業を行っていたところは下表の通りである。

県名 都市名 運営者の名称 現状
島根県 松江市 松江市交通局 現存。
出雲市 出雲市自動車部 1968年(昭和43年)事業廃止。路線は民間業者に移譲。
岡山県 倉敷市 倉敷市交通局 1989年(平成元年)事業廃止。路線は民間業者に移譲。
広島県 尾道市 尾道市交通局 2008年(平成20年)事業廃止。路線は尾道(おのみち)市も出資する第三セクター企業・おのみちバス(尾道市東尾道)に移譲。
呉市 呉市交通局 2012年(平成24年)事業廃止。路線は民間業者に移譲。
三原市 三原市交通局 2008年(平成20年)事業廃止。路線は民間業者に移譲。
山口県 山口市 山口市交通局 1999年(平成11年)事業廃止。路線は民間業者に移譲。
岩国市 岩国市交通局 2015年(平成27年)事業廃止。路線は岩国市が全額出資するいわくにバス(岩国市日の出町)に移譲。
宇部市 宇部市交通局 現存。

 上表から鳥取県を除く各県に路線バス事業を行っていた都市があったことがうかがえるが、現存するのは松江市と宇部市の二つだけである。記すまでもなく背景にあるのは利用者の減少や財政事情の悪化である。福山市より人口が多く、財政規模が大きい倉敷市ですら事業から撤退しているところにこの業界の厳しさがうかがえる。
 2035年度(平成47年度(注14))までに宇部線・小野田線を廃止してバス専用道路に転用することを検討していることを考えれば宇部市としては今後も路線バス事業は続ける考えであることは明らかであるが、中国地方では10市中8市までが事業廃止に追い込まれていることや人口減少・利用者減少・財政事情悪化といった問題は今後も悩ませ続けるであろうことはどのように考えているのだろうか。その点が気になるところである。

5 宇部線・小野田線の沿線にはいくつも学校があることをどのように考えているのだろうか

 宇部線と小野田線の沿線に存在する、電車通学者が多いと考えられる学校は下表の通りである。

(下表をご覧頂くに当たっての注意)

・把握がしやすい高等学校(通信制高校を除く)と高等専門学校、大学、短期大学を対象としている。高等学校の中には中学校を併設しているものがあるがそのことは「備考」欄で触れている。

・山口市内の宇部線沿線地域には該当する学校はない。

・下表で出てくる学校は全て男女共学である。

・直線距離は地図サイト「Mapion」のキョリ測で計測している。

市名 名称 所在地 最寄駅/
駅からの直線距離
備考
宇部市 山口県立宇部高等学校 寺の前町 東新川駅(1.9km)
琴芝駅(1.9km)
山口県立宇部工業高等学校 北琴芝一丁目 琴芝駅(1.0km)
宇部新川駅(1.3km)
山口県立宇部商業高等学校 際波 宇部駅(0.6km)
山口県立宇部中央高等学校 東梶返四丁目 東新川駅(0.6km)
山口県立宇部西高等学校 沖ノ旦 宇部駅(1.8km)
宇部鴻城高等学校 際波 宇部駅(1.1km)
宇部フロンティア大学付属
香川高等学校
文京町 居能駅(0.8km)
岩鼻駅(0.9km)
中高一貫校(中学校の名称は宇部フロンティア大学付属中学校)。
慶進高等学校 西琴芝二丁目 琴芝駅(0.3km) 中高一貫校。
国立宇部工業高等専門学校 常盤台二丁目 東新川駅(1.7km)
国立山口大学医学部 南小串一丁目 宇部新川駅(0.6km) 通称:小串キャンパス。
2年次以上の学生
(注29)と大学院生が在学している。
国立山口大学工学部 常盤台二丁目 東新川駅(1.6km) 通称:常盤キャンパス。
2年次以上の学生
(注29)と大学院生が在学している。
宇部フロンティア大学 文京台二丁目 岩鼻駅(0.8km)
宇部フロンティア大学
短期大学部
文京町 居能駅(0.7km)
岩鼻駅(0.9km)
山陽小野田市 山口県立小野田高等学校 くし山(注30)一丁目 小野田駅(0.3km)
山口県立小野田工業高等学校 中央二丁目 南小野田駅(0.3km)
サビエル高等学校 くし山(注30)三丁目 小野田駅(0.9km)
山陽小野田市立
山口東京理科大学
大学通一丁目 雀田駅(0.4km) 山口東京理科大学(注31)(山陽小野田市大学通一丁目。1995〜2016)が2016年(平成28年)に市立大学化した、山口県二つ目の市立四年制大学。
敷地の一部は宇部市東須恵にかかっている。

 宇部市と山陽小野田市の合計人口は23万人ほどであるが、多くの学校があることが上表からうかがえることであろう。どのくらいの生徒または学生が宇部線や小野田線を利用しているかは定かではないが、中には最寄駅から遠いところもあることを考えると乗り換えなしで路線バスで通学できることに好意的な考えを持つ方も少なくないと思われる。
 しかし、「3 鉄道の代わりとなるバスは本当に最適な手段なのだろうか」で指摘したように単線の線路敷を使用した専用バス道路を走る路線バスが電車と同じように速く走れるかどうかが分からない。となると上表に挙げた学校やそこに通う生徒・学生には下表に挙げるような不都合が生じることになる。

立場 生じる可能性のある不都合
学校側 ・広い範囲から生徒を集められなくなる。
・不便だということで志願者や入学者が減り、経営に甚大な影響が生じる。
・不便だということで脱落者が出るなどし、学校の評判に影響が生じる。
生徒・学生側 ・通学時間が長くなる。
・通学時間が長くなることにより自宅出発の時間を早めざるを得なくなる。
・学校の近くに住まわざるを得なくなるため進学費用が更にかかるようになる。
・「3 鉄道の代わりとなるバスは本当に最適な手段なのだろうか」で指摘したように路線バスの運賃は鉄道のそれより高い場合が多いので交通費(定期券代)が更にかかるようになる。
・通学時間が長くなることにより帰宅の時間が遅くなる場合がある。
・犯罪に巻き込まれる恐れが高くなる。
・通学時間が長くなることにより課外活動
(注32)ができなくなる場合がある。
・自宅外通学者が少ない高等学校の場合学校までが遠いことを理由として進学を拒んだり入学したが登校しなくなったり退学したりする生徒が出る恐れがある。

 無論このことは宇部・山陽小野田両市在住・出身の生徒または学生が多く在籍する周辺地域(ここでは山口市・下関市・防府市・美祢〔みね〕市・北九州市を範囲としている)の学校にも共通して言えることである。下関市立大学(下関市大学町二丁目)の大学祭実行委員会事務局で3年間活動していた(注33・注34)自分の目からすればやはり遠距離通学のスタッフは活動を続けるのは難しい面が多かったように思う(注35)のだが、そのことを知っている以上学校側にも生徒・学生側にも不都合が多く生じる鉄道路線の廃止→跡地のバス専用道路転用には賛成できない。

6 山口県や山口市、山陽小野田市、そして一般市民は宇部市の考えをどのように思っているのだろうか

 宇部線・小野田線を廃止して跡地をバス専用道路に転用するという話は宇部市が言い出したものである。今年1月12日付朝刊中国新聞朝刊の記事によると宇部市としては今後宇部線が通る山口市や小野田線が通る山陽小野田市に呼びかけて勉強会を開くというのだが、問題は山口市と山陽小野田市が宇部市のこの呼びかけに応じるのかどうかということである。山口市と山陽小野田市が宇部市の提案に賛同しなければ宇部市はこの計画を進められないのは火を見るより明らかなわけであるが、山口市が宇部線について、山陽小野田市が小野田線についてそれぞれどのようにとらえているかがカギになるのは間違いないであろう。
 一方で気になるのは宇部市のこの計画を山口県や宇部線・小野田線の沿線地域の住民がどのように感じているのか、全くと言って良いほど報道がないことである。無論宇部市のこの計画に対して反対する考えを持つ方が多いのではないかと思うのだが、あまりそういう話が浮かんでこないのは宇部市が宇部線・小野田線廃止→バス専用道路転用を行うのは十数年先のことであり、場合によっては撤回に至ると考えている方が多いからではないのだろうか(この点が西日本旅客鉄道が廃止を提案し、結局沿線住民の反対も空しく廃止に追い込まれた三江〔さんこう〕線や可部線可部〜三段峡間(注36)と異なるところである)。宇部市がこの計画の目標時期としている2035年度(平成47年度(注14))までには何度も市長選挙や市議会議員選挙があり(注37)、その結果如何で状況が変わる可能性はあるので危機感は抱くような状況にはないといったところなのだろうが反対に公共交通機関の置かれた苦境を考え、振興策を考える契機にはならないのだろうか。「雨降って地固まる」ということわざもあるくらいだし…。

7 宇部市は鉄道路線廃止を提案する一方で宇部新川駅周辺の整備を考えているが矛盾していないのだろうか

 宇部市公式サイトには「社会資本総合整備計画 宇部新川駅を中心としたにぎわいのある街の顔づくり」というページがある。昨年2月に三度目の変更を行っているのだが、そのページを読むと老朽化が著しい宇部新川駅やその駅前広場の整備を行うと記されている。三度目の変更から1年も経たないうちに宇部線と小野田線を廃止して跡地をバス専用道路に転用すると言い出しているのだが、駅舎や駅前広場の整備を行うことを考えている一方で鉄道路線廃止→バス専用道路転用を考えているというのは矛盾していないだろうか。「鉄道路線廃止→バス専用道路転用は検討事項であって決定事項ではない」と主張するのだろうが、宇部新川駅やその駅前広場の整備を行うのなら鉄道路線廃止→バス専用道路転用は考えないだろうし、反対に鉄道路線廃止→バス専用道路転用を行うのなら十数年後には無駄な投資になることが明らかな宇部新川駅やその駅前広場の整備は取りやめ、その代わりになること(宇部新川駅及びその駅前広場へのバス発着場設置など)を考えるのが妥当ではないのだろうか。

 鉄道会社ではなく通過自治体が鉄道路線廃止を提案した例は今年4月1日に廃止される予定のJR石勝線夕張支線が挙げられる。かつては石炭を運ぶ貨物列車が多く行き交ったこの路線は炭鉱の閉山や過疎化の進展により利用が減り、今年3月15日までは普通列車が一日5往復するだけになっていた(注38)。北海道旅客鉄道(JR北海道。札幌市中央区北十一条西十五丁目)が経営再建の一環として石勝線夕張支線の廃止を提案するのは確実な情勢になっていたのだが、夕張市長がその提案がなされる前に石勝線夕張支線の廃止を条件付きで北海道旅客鉄道に提案したというのである。夕張市は石勝線夕張支線廃止後どのように中心部を整備するのかなども考えた上で提案しており、石勝線夕張支線の廃止を前向きにとらえていることがうかがえる(無論存続を望む声もないわけではないのだろうが…)。
 宇部市の鉄道路線廃止→バス専用道路転用構想は夕張市の動向に影響された可能性がある。しかし、夕張市よりはるかに人口が多く、確固たる主力産業があり、通勤・通学客の需要が多い鉄道路線がある宇部市が夕張市と同じことをしても私は成功するとは思えない。むしろ反対意見が多く出て鉄道路線廃止→バス専用道路転用構想は立ち消えになる可能性が高いであろう。
 ただ、車両や施設は新調しない、自動改札は導入しない、速度向上は考えない、乗り換えの不便は解消しない…というのでは宇部線・小野田線の利用は更に減ることであろう。もしそうなれば列車本数の少ない小野田線(注39)の電化廃止(注40)や小野田線本山支線の廃止も考えられない話ではなくなってくるだろうし、宇部市の思うつぼにもなってくるだろう。宇部市の本音は中心部を通る鉄道路線は残したいしもっと利用して欲しいと考えているのではないかと私は思うのだが、ならばどうすれば良いのか。やはり沿線自治体、すなわち山口県や山口市、宇部市、山陽小野田市が宇部線・小野田線についてどのように振興を図っていくのかを議論し、実践することが必要ではないのだろうか。私としては宇部線・小野田線は完全に使命を終えた路線だとは思わないし、設備の改良を行えばまだまだ需要が掘り起こせて活性化が図れると考えている。それも考えずにいきなり鉄道路線を廃止してバス専用道路に転用することを企図するのは最善の策ではないし、他の通過自治体や沿線住民が賛成しないだろう。(私は鉄道路線の廃止には一切賛成しない立場であることをお断りした上で書くのだが)そういうことを考えるのは本当に利用されなくなり、鉄道としての使命を終えていると誰もが感じるようになってからでも遅くはない(無論その際も十分に論議を尽くし、使命を終えたことが明白な証拠を示すことが必要である。廃止を強行することは認められるべきではない)。
 この問題が今後どのように展開していくのか、それは誰にも分からない。しかし、今後こういう問題は各地で出てくる可能性は高い。どのような選択をとるかは地域の事情次第となろうが禍根を残さないような結論を出すことを望みたいところである。

(注釈コーナー)

注1:福山〜幡生間の実際の営業キロ。福山〜幡生間の運賃計算キロは岩徳線経由で計算されるため305.6km(福山〜幡生間の営業キロ301.2km+岩徳線の地方交通線加算距離4.4km)となる。

注2:呉線や岩徳線の列車が多数山陽本線に乗り入れるのに対し宇部線の列車があまり山陽本線に乗り入れないのは次に挙げる事情があるからではないかと思われる。
・呉線の終点である海田市駅や岩徳線の終点である櫛ヶ浜駅はどちらも郊外の駅であり、最低限利用の多い主要駅(呉線…広島駅〔広島市南区松原町〕、岩徳線…徳山駅〔周南市御幸通二丁目〕)まで列車を乗り入れさせる必要があること。
・呉線や岩徳線は山陽本線を補佐する路線として敷設され、どちらも優等列車が走ったことがある(特に岩徳線は山陽本線に組み入れられていた時期がある)が、宇部線はそういう目的で敷設されたわけではなかったこと。
・呉線や岩徳線は国が敷設したが、宇部線は第二次世界大戦中に国に買収されるまで私鉄だったこと。
・呉線や岩徳線は起点・終点双方で山陽本線に乗り入れられるようになっているが、宇部線は終点でしか山陽本線に乗り入れられないこと(起点の新山口駅では山陽本線防府方面だけでなく山口線山口方面にも乗り入れられない)。
・宇部線の列車が山陽本線下関方面や美祢線美祢方面に乗り入れたとしても需要がないこと。
・もし宇部線の列車が山陽本線下関方面に乗り入れた場合、山陽新幹線の停車駅である厚狭駅(山陽小野田市厚狭)までの乗り入れが考えられるが、厚狭駅に停車する山陽新幹線の列車は「こだま」号だけであり、しかも1時間に1〜2本しか停車しないため有用であるとは言い難いこと。

注3:2010年(平成22年)以降に鉄道としての営業を取りやめたか鉄道としての営業を取りやめることが決まっている路線は下表の通りである。

(下表をご覧になるに当たっての注意)

・廃止年月日は原則として運行最終日の翌日としている。

・延長の単位は全てkmである。

・ダム建設や高架化などが理由になる路線の付け替えは含めていない。

・災害で長期間不通になっていてなおかつ鉄道としては廃止になることが確実な情勢になっている路線は掲載していない(正式に廃止が確定したわけではないしもしかしたら状況が変わって鉄道で復旧させるかもしれないから)。

・現在の天皇陛下のいわゆる生前退位により今年5月1日以降は新しい年号になるが、現時点で新しい年号は決まっていないため便宜上今年5月1日以降も平成時代が続くものとして年号を記している。

関係
都道府県名
路線名称 延長 廃止年月日 備考
北海道 JR江差線 42.1 2014年
(平成26年)
5月12日
一部区間(木古内〜江差間)の廃止。
残る区間(五稜郭〜木古内間)は2016年(平成28年)3月26日に北海道新幹線新青森〜新函館北斗間開業に伴う経営分離によって北海道旅客鉄道から道南いさりび鉄道(函館市若松町)に移管され、道南いさりび鉄道道南いさりび鉄道線になっている。
JR留萌本線 16.7 2016年
(平成28年)
12月5日
一部区間(留萌〔るもい〕〜増毛間)の廃止。
残る区間(深川〜留萌間)も過疎化や並行して通る深川・留萌自動車道の整備などにより利用は減っており、今後が憂慮される状況になっている。
JR石勝線 16.1 2019年
(平成31年)
4月1日
(予定)
いわゆる夕張支線(新夕張〜夕張間)の廃止。
いわゆる本線(南千歳〜上落合信号場間)は札幌市と道東地方を結ぶ特急列車(「スーパーおおぞら」号〔札幌〜釧路〈くしろ〉間〕と「スーパーとかち」号〔札幌〜帯広間〕)が多く行き交う幹線になっているが、夕張支線は一日5往復の普通列車しか通らない路線になっている。
JR札沼線 47.6 2020年
(平成32年)
5月7日
(予定)
一部区間(北海道医療大学〜新十津川間)の廃止。
1972年(昭和47年)6月19日に新十津川〜石狩沼田間が廃止されており、二度目の路線短縮となる。また、新十津川〜石狩沼田間廃止をもって路線名称(札幌市と雨竜郡沼田町を結ぶことが路線名称の由来)と実態が合わなくなったが路線名称は今に至るまで変更されていない(但し愛称の学園都市線を使うことがほとんどであり、札沼線を使うことはあまり見られなくなっている)。
存続区間(桑園〔そうえん〕〜北海道医療大学間)は札幌都市圏に組み入れられているために電化され、更に一部区間(八軒〜あいの里教育大間)は複線化されているが廃止予定区間は利用が少ないため非電化のままである。また、並行して電化・複線化が完了し、多くの列車が行き交うJR函館本線が通っていることも利用者減少の一因になっている。
廃止予定区間のうち浦臼〜新十津川間は一日1往復しか列車が走っておらず、終点の新十津川駅(樺戸郡新十津川町中央)は午前10時に最終列車が出ていくようになった。
青森県 十和田観光電鉄
十和田観光電鉄線
14.7 2012年
(平成24年)
4月1日
全線廃止。
岩手県 JR岩泉線 38.4 2014年
(平成26年)
4月1日
全線廃止。
土砂崩落に列車が乗り上げ、負傷者を出した事故が起きた2010年(平成22年)7月31日を最後に列車は運行されていなかった。
結局復旧されないまま左記年月日をもって正式に廃止となった。
長野県 長野電鉄屋代線 24.4 2012年
(平成24年)
4月1日
全線廃止。
関電トンネル
無軌条電車
6.1 2018年
(平成30年)
12月1日
全線廃止。
関電トンネルトロリーバスとも称する。
今春からは充電式電気バスが跡地を走る予定である。
大阪府 阪堺電気軌道
上町線
0.2 2016年
(平成28年)
1月31日
一部区間(住吉〜住吉公園間)の廃止。
廃止区間は大阪市内にあるにもかかわらず近くに阪堺電気軌道阪堺線が通っていることもあって2014年(平成26年)3月1日以降は通常は午前7〜8時台にしか列車が走らないようになっていた。
島根県
広島県
JR三江線 108.1 2018年
(平成30年)
4月1日
全線廃止。

宇部線・小野田線より沿線人口が多い路線もないわけではないが、上表をご覧頂ければうかがえるように大半の路線が過疎化に悩む地域を通っている路線である。中にはもう少し努力を見せていれば廃止は免れたのではないかと思える路線もあるのだが、やはり経営者側としてはそこまでしてもどうにもなる問題ではないという思惑があるのであろう。
※三江線の廃止前の駅と並行道路の様子は私の友人で「ちゅうごくDrive Guide〜道と歴史と地理とラジオにこだわって〜」というサイトを運営している深津安那さんがこちらで紹介しているので興味のある方はご覧頂きたい。

注4:1989年度(平成元年度)と2017年度(平成29年度)の一日の平均乗車人員を比較すると宇部線(新山口・宇部両駅を除く)は1万365人から4,276人に、小野田線(居能・小野田両駅を除く)は1,846人から507人になっている。

注5:現在の行政区域基準で人口(国勢調査による)が最も多かった時期は宇部市は1995年(平成7年)で18万2,771人、山陽小野田市は1955年(昭和30年)で8万2,784人だった。2015年(平成27年)10月1日実施の国勢調査では宇部市は16万9,429人、山陽小野田市は6万2,671人となっており、どちらも最も人口が多かった時期から大きく減っていることが分かる。

注6:宇部市の平地部分は干拓や埋め立てで形成されたところが多いことが地盤が良くない主たる理由である。

注7:宇部興産が石灰石を安定的に輸送するために建設したのが宇部興産専用道路(正式名称:宇部興産宇部・美祢高速道路)である。宇部興産専用道路は日本で最も長い私道であることや一般道路との平面交差には踏切を設けていることなどでも知られている。

注8:中心部の範囲の解釈によりどこまでを中心部にある駅とするかは考えが分かれるのだが、ここでは宇部新川駅と東新川駅(宇部市東新川町)、琴芝駅(宇部市琴芝町二丁目)を宇部市中心部にある駅としている。

注9:ここでは宇部本社の所在地を記している。宇部興産は他に東京都港区芝浦一丁目に東京本社を設置している。

注10:宇部駅付近の山陽本線が開業したのは1900年(明治33年)12月3日のことである(三田尻〔現:防府〕〜厚狭間の開業による)。当時は需要が見込める集落が形成されていなかったなどの理由で駅の設置は見送られたものと思われる。

注11:1943年(昭和18年)5月1日〜1964年(昭和39年)9月14日の話。この間現在の宇部駅は西宇部駅と呼称していた(呼称期間は1943年〔昭和18年〕5月1日〜1964年〔昭和39年〕9月30日)。

注12:山口県内の山陽本線には海岸から離れたところを通る箇所が多く、宇部駅周辺(区間としては防府〜埴生〔はぶ〕間となる)以外では柳井〜光間や長府〜下関間がそのようになっている。

注13:宇部井筒屋の閉店時の様子は宇部市及びその周辺の事象を紹介しているサイト「宇部マニアックス」で触れられているので興味のある方はご覧頂きたい。

注14:現在の天皇陛下のいわゆる生前退位により今年5月1日以降は新しい年号になるが、現時点で新しい年号は決まっていないため便宜上今年5月1日以降も平成時代が続くものとして年号を記している。

注15:現在日本にある人口10万人以上の都市で鉄道が通っていないのは鹿屋(かのや)市・浦添市・うるま市・沖縄市の四つである(このうち鹿屋市と浦添市はかつて鉄道路線が通っていた)。但し浦添市については今夏に市内を通過する沖縄都市モノレール沖縄都市モノレール線が開業することになっており、鉄道のない都市ではなくなる。

注16:広島地区は電化区間については今年3月16日実施のJRグループのダイヤ改正をもって日本国有鉄道時代に製造された車両は走らなくなる。

注17:かつては山口市と下関市を結ぶ高速バス路線が設定されていたことがある他新山口駅始発・終着を基本線としていた特急「おき」号(1975〜2001。現在の特急「スーパーおき」号の前身)が上り1本だけ下関駅(下関市竹崎町四丁目)始発で運転されていたことがあった。いずれも利用が低迷したことから廃止されている。
※個人的な話で恐縮だが私は学生時代に山口市と下関市を結ぶ高速バスを何度か利用したことがある。

注18:宇部線でも過去に何度か快速列車を設定していたことがあったが利用が低迷したため廃止されている。

注19:山口県にある二つの空港の2019年(平成31年)3月現在の状況は下表の通りである。

空港名/所在地 行き先 便数 備考
岩国飛行場
(岩国市旭町三丁目)
東京 5 愛称:岩国錦帯橋空港(岩国飛行場と国道2号線を結ぶ県道路線の名称〔県道110号岩国錦帯橋空港線〕にも採用されている)。
那覇 1
山口宇部空港
(宇部市沖宇部)
東京 10 ソウル便は月曜日・水曜日・土曜日のみ運航。
ソウル 1

注20:国勢調査によると山口県の人口は1985年(昭和60年)には160万1,627人だったが30年後の2015年(平成27年)には140万4,729人となっている。

注21:国勢調査によると福山市の人口は2015年(平成27年)時点で46万4,811人となっている。
※福山市を引き合いに出したのは次に挙げる理由による。
・近隣にストロー効果(ストロー現象とも称する)を起こすような大都市がないこと。
・地域の中心都市として確固たる地位を築いていること。
・高速道路や国道路線、鉄道路線が集まる交通の要衝であること。
・国や県の出先機関が多数設置されていること。
・まとまった平地があること。
・福山市は江戸時代の城下町を起源としているが、歴史の展開如何では県庁所在地になり得ていたこと。

注22:主な例としては都道府県域民間テレビ放送局の数が東海道・山陽新幹線の通過する都府県で最も少ないことが挙げられる(他の都府県は4局以上あるが山口県は3局しかない)。

注23:山口県における平成の大合併の状況は下表の通りである。

月日 異動内容 市区郡町村数 備考
2003年
(平成15年)
4月20日 14市11郡37町5村 山口県で平成の大合併が始まる前の状態。山口県では1978年(昭和53年)4月1日に大津郡日置(へき)村(1889〜1978)が町制施行して大津郡日置町(1978〜2005)に移行したのを最後に市区郡町村の異動はなかった。
4月21日 新南陽市・徳山市・熊毛郡熊毛町・都濃(つの)郡鹿野(かの)町が統合して周南市が発足する。 13市10郡35町5村 この異動をもって都濃郡が所属町村がなくなったことにより消滅した。
2004年
(平成16年)
10月1日 大島郡大島・久賀(くか)・橘(たちばな)・東和各町が統合して大島郡周防大島(すおうおおしま)町が発足する。 13市10郡32町5村
10月4日 光市と熊毛郡大和(やまと)町が統合して改めて光市が発足する。 13市10郡31町5村
11月1日 宇部市が厚狭(あさ)郡楠(くすのき)町を編入する。 13市10郡30町5村
2005年
(平成17年)
2月13日 下関市と豊浦郡菊川・豊浦・豊田・豊北各町が統合して改めて下関市が発足する。 13市9郡26町5村 この異動をもって豊浦郡が所属町村がなくなったことにより消滅した。
2月21日 柳井(やない)市と玖珂(くが)郡大畠(おおばたけ)町が統合して改めて柳井市が発足する。 13市9郡25町5村
3月6日 萩市と阿武郡須佐・田万川(たまがわ)両町及び旭・川上・福栄(ふくえ)・むつみ各村が統合して改めて萩市が発足する。 13市9郡23町1村
3月22日 小野田市と厚狭郡山陽町が統合して山陽小野田市が発足する。 13市8郡22町1村 この異動をもって厚狭郡が所属町村がなくなったことにより消滅した。
長門(ながと)市と大津郡日置・三隅・油谷(ゆや)各町が統合して改めて長門市が発足する。 13市7郡19町1村 この異動をもって大津郡が所属町村がなくなったことにより消滅した。
10月1日 山口市と佐波(さば)郡徳地(とくぢ)町、吉敷(よしき)郡秋穂(あいお)・阿知須・小郡(おごおり)各町が統合して改めて山口市が発足する。 13市5郡15町1村 この異動をもって佐波・吉敷両郡が所属町村がなくなったことにより消滅した。
2006年
(平成18年)
3月20日 岩国市と玖珂郡玖珂・周東・錦・美川・美和・由宇各町及び本郷村が統合して改めて岩国市が発足する。 13市5郡9町 この異動をもって山口県から自治体としての村が消滅した。
2008年
(平成20年)
3月21日 美祢(みね)市と美祢郡秋芳・美東両町が統合して改めて美祢市が発足する。 13市4郡7町 この異動をもって美祢郡が所属町村がなくなったことにより消滅した。
2010年
(平成22年)
1月16日 山口市が阿武郡阿東町を編入する。 13市4郡6町

注24:中には鉄道として建設されたが諸事情により開業に至れなかったところをバス専用道路に転用したところもある。

注25:本格的な鉄道路線跡地のバス専用道路転用の第一号は福島県南部を通っていた国鉄白棚(はくほう)線(1916〜1944)である(1957年〔昭和32年〕転用)。JR東北本線白河駅(白河市郭内)とJR水郡線磐城棚倉(いわきたなくら)駅(東白川郡棚倉〔たなぐら〕町棚倉)を結んでいたこの路線は第二次世界大戦中に不要不急路線に指定され、営業を休止していた。鉄道として復旧させようという動きもあったが結局断念され、バス専用道路に転用された背景には鉄道として営業していた時代利用が低迷しており(記すまでもなくそれが不要不急路線に指定された一因になったのであろう)、鉄道として復旧させるのは妥当ではないという判断がなされたことがあったのではないかと思われる。

注26:かつては北九州市小倉北区・戸畑区にも存在したが道路整備により廃止されている(JR鹿児島本線を走る列車から見たことがある)。なお、福岡市東区にあるものも北九州市小倉北区・戸畑区にあったものも西日本鉄道(福岡市博多〔はかた〕区博多駅前三丁目)が運営していた路面電車路線の跡地を転用したものである。

注27:新山口駅〜宇部新川駅間の運賃(大人〔12歳以上〕用)は鉄道だと500円だが路線バスだと1,010円となる。

注28:本格的な鉄道路線跡地のバス専用道路転用の第一号となった白棚線跡地を転用したバス専用道路は並行して通る国道289号線が整備されたことなどから現在は使用されなくなっている区間が多くなっている。また、紀伊半島中央部を縦断する目的で建設されながら途中で建設が放棄された国鉄阪本線(五新線とも称する)の建設済みの部分を用いたバス専用道路は施設が老朽化したことなどから2014年(平成26年)に使用を取りやめている。

注29:国立山口大学(山口市吉田)は新入生は全員本部のある吉田キャンパスで学ぶことになっている。よって宇部市内にあるキャンパスに通うのは2年生になってからである。

注30:「くし山」の「くし」は正式には漢字表記である(手へん+帝)が、機種依存文字になるため平仮名表記にしている。
※漢字表記の「くし山」は山陽小野田市公式サイトや一部の市販の道路地図で見ることができる。

注31:山口東京理科大学は東京理科大学山口短期大学(山陽小野田市大学通一丁目。1987〜1995)が四年制大学に再編されて発足したものである。

注32:ここではクラブ活動またはサークル活動や学生自治会活動を指す。

注33:下関市立大学の大学祭実行委員会事務局は1980年度(昭和55年度)までは4年生も活動していたが、(はっきりした理由は分からないのだが)1981年度(昭和56年度)から活動できるのは原則として3年生までとなっている。

注34:下関市立大学の大学祭実行委員会事務局で3年間ずっと活動する方が多くなったのは平成時代(1989〜2019)に入ってからである。次代の大学祭実行委員会事務局を担い、学園祭の成功に貢献する人材を育成することを目的として1981年(昭和56年)に委員会組織からサークル状組織に再編されたことや昭和時代末期から推進してきた大学祭実行委員会事務局及びそれが運営する学園祭の振興が成就したこと、組織の大所帯化を進めたことなどが背景にある。

注35:主たる原因は記すまでもなく通学に制約がかかることである。制約がかかることで生じる弊害は次の通りである。
・出遅れてしまう。
・組織環境に溶け込めなくなる。
・主流的な立場にいる同級生との緊密な関係が構築できず、孤立する。
・先輩方の信頼を得られず、戦力外と見なされる。
・活動に対する意欲をなくし、幽霊部員化する。
・犯罪に巻き込まれる恐れがあるので夜遅くまで活動できない。
・他の課外活動も兼ねていた場合両立が厳しくなり、どちらかを切り捨てざるを得なくなる。
中には幹部になっても良かったのでは…と思う方もいたのだが、やはり時間の制約が壁になったことは否定し得ないことであろう。

注36:可部線の廃止区間のうち可部駅(広島市安佐北〔あさきた〕区可部二丁目)から1.6kmの部分については2017年(平成29年)に復活している。但し途中にあった河戸(こうど)駅(広島市安佐北区亀山二丁目。1956〜2003)は復活していないので復活というよりは新規開業路線と見なすのが妥当だと思われる。

注37:次の宇部市長選挙は2021年(平成33年)6月下旬から7月上旬にかけての時期(2年以上先なので実施時期は未定)に、宇部市議会議員選挙は今年4月21日にそれぞれ実施される予定である。

注38:廃止直前になる今年3月16日〜31日の16日間は廃止に伴い各地から石勝線夕張支線の列車に乗りに来る方が増えることを見越して3往復増発され、一日8往復になっている。

注39:今年3月16日現在の小野田線の列車本数は次の通りである。
・本線居能〜雀田間…11.5往復(下り11本/上り12本)
・本線雀田〜小野田間…10往復
・本山支線…3往復
小野田線本山支線の列車本数はJR木次(きすき)線出雲横田(いずもよこた)〜備後落合(びんごおちあい)間やJR芸備線東城〜備後落合間と同じであり、中国地方の鉄道路線では最も少なくなっている。

注40:日本国有鉄道→JRグループ各社が現在も運営している鉄道路線で電化を廃止した例は過去に一つだけ存在する。JR福塩線府中〜下川辺間である。福塩線は福山〜府中間が現在も電化されている(この区間の電化は国有化前の1927年〔昭和2年〕実施。結果的に中国地方の日本国有鉄道→JRグループ各社が管理する鉄道路線では最初に電化された区間になっている)が、1954年(昭和29年)にこの電化区間を府中駅(府中市府川町)の一つ先の下川辺駅(府中市篠根町)まで延伸している。しかし、列車本数が少なく、電化した意味が見出せなかったことから1962年(昭和37年)に廃止されている。
※福塩線府中〜下川辺間の電化の理由は定かではないが、私は福山市北部・府中市と尾道市との連絡を考慮したからではないかと考えている。そのように考える理由は次の通りである。
・1954年(昭和29年)時点の広島県南東部の中心都市は尾道市だったこと。
・下川辺駅の近くを尾道鉄道市(いち)駅(尾道市御調〔みつぎ〕町市。1926〜1957)に通じる幹線道路(現在の国道486号線。ちなみに国道486号線と福塩線の平面交差箇所にある踏切の名称は尾道街道踏切になっている)が通っていること。
・下川辺駅周辺は1949年(昭和24年)まで御調郡(?〜2005)に属しており、尾道市や三原市との関係があったこと。
恐らく福塩線→路線バス→尾道鉄道と乗り継ぐことで福山市北部・府中市と尾道市を往来して欲しいという思惑があったのだろう。