トップページ不定期刊・きょうのトピックス不定期刊・きょうのトピックス2016年(平成28年)分コミュニティ放送局のきのう・きょう・あす

コミュニティ放送局のきのう・きょう・あす(2016年〔平成28年〕8月8日公開)

 まずは私の友人・Xさんの話を聞いて頂きたい。Xさんは福山市中心部に住み、福山市西部にある勤務先までいつもは電車で通勤している方である。
「この6月22日深夜から6月23日未明にかけての集中豪雨の時のことなんですが、電車が動いていないというので午前6時30分頃家を出て車で出勤しようとしたんですよ。ところが国道2号線を西進していると本庄(注1)辺りから全く動かなくなったんですよ。だから本庄で国道2号線を離れ、北方に迂回して勤務先に行こうとしたんですよ」
 ところがこれが大変なことになった。迂回に迂回を重ねて勤務先にようやく到着したのは昼前という有様であった(大幅な遅刻にはなるが事情が事情だけに叱責されてはいない。無論Xさんは勤務先に大幅に遅刻することは電話で連絡している)。通れる道が限られ、どこも渋滞が起きていたからである。果ては尾道市に入り、どこがどうやら訳の分からないところ(お断りしておくが通ってはいけない道は通っていない)も通ったのだという。
 そんなXさんが役に立ったと話しているのが福山市を中心とした地域を放送区域としているコミュニティ放送局・エフエムふくやま(愛称:レディオBINGO。福山市西町二丁目)である。エフエムふくやまは平日は午前7時から午前11時15分まで自社制作の情報番組を設定している(注2)のだが、そこでは鉄道が不通になっていることだけでなく国道2号線や山陽自動車道が通行止めになっていることや浸水した地域があることなど詳細な情報を随時流していたのだという。
「あの時は中国放送ラジオ(RCC、広島市中区基町)や広島エフエム放送(HFM、広島市南区皆実町一丁目)も聴いていた(注3)んですが、これらの放送局の自社制作の情報番組ではあまり取り上げていなかった印象がありましたね」
 中国放送ラジオと広島エフエム放送はどちらも広島県全域を放送区域としており、更に本社が広島市にある以上(注4)どうしても福山市及びその周辺における集中豪雨に関する報道はきめ細かさがなくなる傾向があるわけであるが、Xさんはこの出来事を通じてやはり市区町村を放送区域とするコミュニティ放送局はあったほうが良いという思いを新たにしたという。エフエムふくやま自体いろいろ課題はあるわけであるが、もしエフエムふくやまがなかったらどうなっていたのか。恐らくXさんは何がどうなっているのか分からないまま勤務先に向かっていたことであろう(注5)
 実は20年前の今日、すなわち1996年(平成8年)8月8日は中国地方初のコミュニティ放送局・エフエムふくやまが開局した日である。この日はもう一つ、エフエム萩(愛称:FM NANAKO。萩市江向)も開局しているのだが、本放送開始時間はエフエムふくやまのほうが少しだけだが早いため本サイトではエフエムふくやまを中国地方初のコミュニティ放送局としているものである(注6)。そこで今回の「不定期刊・きょうのトピックス」では(エフエムふくやまとエフエム萩の開局20周年を記念する意図は毛頭ないのだが)コミュニティ放送局のこれまでと現状、そして将来を考えることにしたい。

コミュニティ放送局はなぜ生まれたのか

 日本放送協会(NHK、東京都渋谷区神南二丁目)にしても、民間放送局にしても放送区域は原則として都道府県となっていたが、そのことで次に挙げる不都合が生じていた。
・本社(演奏所)のあるところ及びその周辺の情報が多く取り上げられる傾向があること。
・本社(演奏所)のないある程度の人口のある都市で取り上げられる情報が少ないことについて不満が出ていたこと。
・放送局が伝える情報は放送局の裁量に任せられるために一般市民が知りたい情報が伝えられない場合が多かったこと。
・放送局が伝える情報は重要なものや視聴者または聴取者に広く知って頂きたいものが優先されるため局地的な事柄は軽んじられる傾向があったこと。
・本社(演奏所)のあるところ及びその周辺以外の地域で重大な事件や事故、災害が起きても詳細を知るにはかなりの時間がかかったこと。
 市区町村単位で放送区域を設定できるものとしてはケーブルテレビがあるが、受信機が持ち運びできないことや受信機は高額であること、自動車で移動している時には番組を楽しめないこと、初期投資がかなりかかること、平地の多いところでは開局への動きが起きにくいことといった難点が存在した。もし市区町村単位で放送区域を設定できるラジオ局があれば受信機は持ち運びができて安価なものが多いことや自動車で移動する時に番組を楽しめること、初期投資はそれほどかからないこと、緊急事態には即座に情報を発信できることといった利点があり、開局へのハードルもさほど高くはない。更に1980年代以降狭い範囲で小さい出力で放送を行うミニエフエム放送局(注7)が各地で開局したこともあり、市区町村を放送区域とするラジオ局があっても良いのではないかという声が高まった。
 そして1992年(平成4年)1月10日郵政省令第2号で放送法施行規則改正が行われ、市区町村を放送区域とするラジオ局、すなわちコミュニティ放送局が制度化されたのである。その第一号となったのは1992年(平成4年)12月24日に函館市で開局した函館山ロープウェイ(愛称:FMいるか。函館市元町)であった(注8)

中国地方におけるコミュニティ放送局の歩み

 函館市で初めてのコミュニティ放送局が開局してから各地でコミュニティ放送局が開局していった。各地方のコミュニティ放送局第一号は下表の通りとなる。

地方名 所属
都道府県名
第一号になった
放送局の名称
開局年月日 備考
北海道 北海道 函館山ロープウェイ
(函館市元町)
1992年
(平成4年)
12月24日
愛称:FMいるか。
日本初のコミュニティ放送局である。
東北 青森県
岩手県
宮城県
秋田県
山形県
福島県
山形コミュニティ放送
(山形市本町二丁目)
1995年
(平成7年)
4月1日
愛称:Radio Monsterまたはラジオモンスター。
日本の都道府県庁所在地で初めて開局したコミュニティ放送局でもある。
関東 茨城県
栃木県
群馬県
埼玉県
千葉県
東京都
神奈川県
逗子・葉山コミュニティ放送
(逗子市池子二丁目)
1993年
(平成5年)
12月3日
愛称:湘南ビーチFM。
甲信越 新潟県
山梨県
長野県
エフエム新津
(新潟市秋葉区新津東町二丁目)
1994年
(平成6年)
7月15日
愛称:RADIO CHAT。
北陸 富山県
石川県
福井県
エフエム・エヌ・ワン
(野々市市高橋町)
1995年
(平成7年)
12月27日
東海 岐阜県
静岡県
愛知県
三重県
エフエム豊橋
(豊橋市小畷町)
1993年
(平成5年)
11月27日
愛称:FM-DINO(1993〜1996)→やしの実。
近畿
(関西)
滋賀県
京都府
大阪府
兵庫県
奈良県
和歌山県
エフエムもりぐち
(守口市河原町)
1993年
(平成5年)
7月20日
愛称:FM-HANAKO。
中国 鳥取県
島根県
岡山県
広島県
山口県
エフエムふくやま
(福山市西町二丁目)
1996年
(平成8年)
8月8日
愛称:レディオBINGO。
エフエムふくやまが開局した1996年(平成8年)8月8日にはエフエム萩(愛称:FM NANAKO。萩市江向)も開局しているが本放送を開始したのはエフエムふくやまが先である。
四国 徳島県
香川県
愛媛県
高知県
エフエムサン
(坂出市京町一丁目)
1994年
(平成6年)
3月31日
九州 福岡県
佐賀県
長崎県
熊本県
大分県
宮崎県
鹿児島県
熊本シティエフエム
(熊本市中央区辛島町)
1996年
(平成8年)
4月1日
愛称:FM791。
沖縄 沖縄県 沖縄市エフエムコミュニティ放送
(沖縄市中央三丁目)
1997年
(平成9年)
3月1日
愛称:FM Champla!。
経営難により2004年(平成16年)3月31日をもって放送を終了し、FMコザ(沖縄市中央三丁目)に経営を譲渡した。その際コールサインが変更されたため沖縄市エフエムコミュニティ放送は廃業したものと見なしている。

 日本を11の地方に分けた場合、中国地方は10番目にコミュニティ放送局が開局した地方ということになる。11地方中10番目ということは遅いほうだったということになるのだが、なぜ遅くなったのか。理由としては次に挙げることが考えられる。
・コミュニティ放送局が制度化された1990年代前半はバブル景気が終わり、長期的な不況に入った時期でもあったこと。
・経営が厳しい都道府県域民間ラジオ放送局が多かったこと(注9)
・他の地方での動向を見極めてからどのようにするかを考えるという慎重姿勢を見せたところが多かったこと。
・人口が多くてもケーブルテレビ局のない都市があること(注10)からもうかがえるように必要があると感じても志(こころざし)を持つ人が出てこなかったこと。
・早期の開局を求める市民が多数いたとしても地元の政財界側が消極的だったこと。
 恐らく確実に成功するかどうか分からないものに手は出せないという意識が根強かったのだろう。
 しかし、ある大きな災害が意識を変える契機になった。その大きな災害とは中国地方でも大きな揺れを観測したところが多かった(注11)兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災。1995年〔平成7年〕1月17日)である。中国地方でも甚大な影響が出た(注12)この災害であるが、同時に都道府県域放送局しかない状況では被災地に関係する人々に対してきめ細かい情報を提供するのは難しいのではないかという声が高まった。そこでようやく中国地方でもコミュニティ放送局開局への動きが活発化したのである。
 前にも記した通り中国地方のコミュニティ放送局の歴史は1996年(平成8年)8月8日にエフエムふくやまとエフエム萩が開局したことをもって始まった。この2局を含めて現在までに開局したコミュニティ放送局は下表の通りとなる。

※周波数の単位は全てMHz。

順位 放送局名 開局年月日 周波数 備考
1 エフエムふくやま
(福山市西町二丁目)
1996年
(平成8年)
8月8日
77.7 愛称:レディオBINGO。
2 エフエム萩
(萩市江向)
1996年
(平成8年)
8月8日
77.5 愛称:FM NANAKO。
エフエムふくやまと同じ日に開局したがわずか数時間の差で中国地方初のコミュニティ放送局の座を逃した。
3 エフエムくらしき
(倉敷市白楽町)
1996年
(平成8年)
12月24日
82.8 岡山県初の民間エフエム放送局(エフエムくらしきが開局した時まだ岡山エフエム放送〔岡山市北区中山下〈なかさんげ〉一丁目〕は開局していなかったため(注13))。
中国地方にあるコミュニティ放送局では初めて中継局を設置したところでもある(開局と同時に設置)。
4 岡山シティエフエム
(岡山市北区中山下二丁目)
1997年
(平成9年)
1月1日
79.0 愛称:Radio momo。
5 コミュニティエフエム下関
(下関市上田中町二丁目)
1998年
(平成10年)
7月6日
76.4 愛称:COME ON! FM。
6 尾道エフエム放送
(尾道市土堂二丁目)
1999年
(平成11年)
6月1日
79.4 愛称:エフエムおのみちまたはエフエムおのみち79.4。
7 中国コミュニケーション
ネットワーク
(広島市中区土橋町)
2000年
(平成12年)
5月1日
76.6 愛称:ひろしまPステーション(2000〜2008)→エフエムちゅーピー。
8 エフエムきらら
(宇部市新天町一丁目)
2002年
(平成14年)
7月14日
80.4
9 エフエムいずも
(出雲市里方町)
2003年
(平成15年)
4月16日
80.1 愛称:愛ステーション。
10 エフエム周南
(周南市久米)
2003年
(平成15年)
10月7日
78.4 愛称:しゅうなんエフエム78.4。
演奏所は下松市中央町にある。
11 五日市コミュニティ放送
(広島市佐伯区皆賀四丁目)
2004年
(平成16年)
4月18日
77.3 愛称:エフエムななみ。
経営難により2007年(平成19年)11月30日をもって放送を終了し、2008年(平成20年)3月31日をもって廃業した。
12 ぷらざFM
(防府市栄町一丁目)
2004年
(平成16年)
12月12日
77.3 愛称:FMわっしょい。
開局当時の周波数は76.7MHzだったが、同じ周波数を使っている東九州コミュニティー放送(愛称:スターコーンFM。福岡県築上郡築上町椎田)との混信が起きていたことから2015年(平成27年)6月1日に現在の周波数に変更している(中国地方のコミュニティ放送局で周波数を変更したのはここだけ)。
13 FMながと
(長門市東深川)
2005年
(平成17年)
2月25日
87.8 愛称:FM AQUA。
14 エフエムゆめウェーブ
(笠岡市笠岡)
2006年
(平成18年)
5月1日
79.2 演奏所は浅口市鴨方町鴨方にある。
15 FM鳥取
(鳥取市東品治町)
2006年
(平成18年)
8月25日
82.5 愛称:RADIO BIRD。
FM鳥取の開局により中国地方各県に一つはコミュニティ放送局が存在するようになった。
16 エフエムはつかいち
(廿日市市下平良二丁目)
2008年
(平成20年)
2月23日
76.1
17 FMハムスター
(広島市安佐南区祇園五丁目)
2009年
(平成21年)
5月11日
79.0 広島経済大学(広島市安佐北〔あさきた〕区祇園〔ぎおん〕五丁目)に本社・演奏所がある関係上平日の昼間しか放送しないという珍しい形態をとっている。
18 つやまコミュニティFM
(津山市南新座)
2009年
(平成21年)
12月24日
78.0 愛称:エフエムつやま。
19 DARAZコミュニティ放送
(米子市法勝寺町)
2010年
(平成22年)
6月1日
79.8 愛称:DARAZ FM。
20 エフエム津山
(津山市小田中)
2010年
(平成22年)
7月1日
76.3 愛称:レディオつやま(2010〜2012)→MegaWAVE76.3。
21 FM東広島
(東広島市西条下見六丁目)
2011年
(平成23年)
10月8日
89.7
22 FM山陽小野田
(山陽小野田市小野田)
2012年
(平成24年)
2月3日
89.7 愛称:FMサンサンきらら。

 FM山陽小野田(愛称:FMサンサンきらら。山陽小野田市小野田)を最後に中国地方ではコミュニティ放送局の開局は4年半途切れているのだが、それまでほぼ毎年どこかで開局したことや都道府県域放送局の本社がない都市での開局が目立つこと、都道府県域ラジオ放送局の本社がある都市での開局への動きが鈍いという傾向があることが上表からうかがえる。都道府県域放送局の本社がない都市での開局が目立つのは都道府県域放送局しかない状況では重大な事件・事故・災害が起きた時対応できないという危機感があったことや都道府県域放送局の本社誘致に敗れ去ったこと(注14)に対する悔しさをどこかで晴らしたいという思いが強かったことが、反対に都道府県域ラジオ放送局の本社がある都市での開局への動きが鈍いのは必要性を感じないことや志を持つ人が出てこないことに加えて対抗局には太刀(たち)打ちできないだろうという諦めの思いが強いことがそれぞれ考えられる。

コミュニティ放送局の課題

 昨年11月3日に栃木県でコミュニティ放送局が開局したことをもって全ての都道府県で最低一つは存在することになったコミュニティ放送局(注15)であるが、都道府県域放送局の放送区域で最も人口が少ないのは高知県の76万4,456人(2010年〔平成22年〕10月1日実施の国勢調査の結果に基づく)であること(注16)やほとんどの市区町村は高知県の人口を下回ること(注17)を考えればいくら地域密着を開局目的としていたとしても経営環境は厳しいものになる。そこでどんな問題が起きているのかを挙げると次の通りになる。
・人口の多い都市でも未だに存在しないところがある。
・未だに一つしか存在しない県がある。
・過去に甚大な災害に見舞われたところでも開局に向けた動きが起きていないところがある。
・調整が難航したのか一つの市区町村に複数コミュニティ放送局があるところがある。
・一つの市区町村に複数コミュニティ放送局があるところでは必ずと言って良いほど後発局が苦戦する(注18)
・公式サイトを設置しなかったり設置しても整備されていなかったりするため知りたい情報が得にくいところがある。
・公式サイトを設けない代わりにアカウントを取得しないと使えないSNSしか用いていないところがある。
・新聞のテレビ・ラジオ欄に番組表が載っていないところがある。
・コミュニティ放送局があっても、その放送区域に含まれていても中継局が整備されていないために受信不可能な地域がある。
・せっかく予備免許を取得してもその後何らかの問題が起きて開局できずに終わったところがある。
・放送局を私物化する経営者がいる。
・利益至上主義に走っているところがある。
・自社制作番組が少ないところがある。
・放送風景を見られないところが少なくない。
・ある程度の支持があった番組でもスポンサーが付かないことを理由に打ち切ったところがある。
・番組の穴埋めにミュージックバード(東京都千代田区麹町一丁目)やJ-WAVE(東京都港区六本木六丁目)などの番組を入れるところがあるが、その割合が高いところが少なくなく、「ミュージックバード○○中継局」とか「J-WAVE△△中継局」などと揶揄(やゆ)したくなる。
・人材流出を招いているところがある。
・人材が不足しているのかろくな営業活動や宣伝活動を行っていないところがある。
・深夜・早朝に緊急事態が起きることに備えて終夜放送を実施しているところがあるが、必要なのだろうかと思うことがある。
・あえなく廃業に追い込まれたところがある。
・廃業に追い込まれたところでは再興への動きが起きていないところが少なくない。
・廃業からかなり経ったのに未だにサイトが残っているところがある。
・情報公開や説明責任に対して消極的なところがある。
・演奏所の位置が分かりにくかったり積極的な宣伝をしなかったりするなどしたために知名度が低いところがある。
・不祥事や問題が起きたところがいくつかある。
・地域第一主義をとり、近隣の放送局との連携が見えないところがある。
・せっかく近隣の放送局で連携していたのに自然消滅している例がいくつも見られる。
・周波数が近接しているためにどの放送局を聴いているのか分かりにくくなることがある。
・一般市民の関心が高いとは言えない感じがある。
・放送を流しさえすればいずれ認知度は上がってくるだろうからそれで良いという考えを持つ人が少なくない。
・一般市民の要望・意見に対してきちんと対処しない。
・有力な職員や経営者がいなくなったことを契機に経営が傾くところが少なくない。
・開局計画が頓挫したことや廃業させてしまったことに対して責任を完遂しない経営者が少なくない。
・放送内容がどうかと思うところがある。
・周波数が近接して設定されているために混信を起こしているところがある。
・都道府県域放送局と比べて知名度や聴取率が低いところが少なくない。
・いわゆるワンマン経営をしているところは経営者に何か問題が起きた場合どのようにするかという備えができていない場合が多く、それで廃業に追い込まれたところがある。
・スポンサーの経営状況に左右されることが見られる。
 確かに都道府県域放送局の放送区域で最も人口が少ない高知県より人口が少ない市区町村が多いことや放送区域はそのほとんどが都道府県より狭い行政区域を持つ市区町村であること(注19)、経済基盤が盤石な市区町村ばかりではないこと、既存の都道府県域民間ラジオ放送局や日本放送協会との競争が厳しくなることが予想されること、使える周波数に限りがあること(注20)などを考えると状況は厳しくなるのは致し方のないところではある。そこでどのようにするのかが経営者の腕の見せ所と言っても良いわけであるが、果たしてどうなのだろうか。

福山市及びその周辺のコミュニティ放送局の現状

 では中国地方のコミュニティ放送局の現状はどうなのだろうか。現在放送中のところだけでも21社あるし、事情をあまり知らないところもあるのでここでは私の住んでいる福山市及びその周辺のコミュニティ放送局、すなわちエフエムふくやま以外にエフエムゆめウェーブ(笠岡市笠岡)と尾道エフエム放送(愛称:エフエムおのみちまたはエフエムおのみち79.4。尾道市土堂二丁目)の3社について現状を見ることにしたい。一部の放送局だけではあるけれどある程度コミュニティ放送局の現状が垣間見られるのではないかと考えるからである。
 まず、それぞれのコミュニティ放送局の概要を示すと下表の通りになる。

放送局名 所在地 開局年月日 中継局 備考
エフエムふくやま 720-8555
福山市西町二丁目10番1号
福山商工会議所ビル1階
1996年
(平成8年)
8月8日
福山(77.7MHz)
新市(77.7MHz)
愛称:レディオBINGO。
中国地方初のコミュニティ放送局である。
尾道エフエム放送 722-0035
尾道市土堂二丁目3番23号
1999年
(平成11年)
6月1日
尾道(79.4MHz)
因島(79.4MHz)
愛称:エフエムおのみちまたはエフエムおのみち79.4。
エフエムゆめウェーブ (本社)
714-0081
笠岡市笠岡4295番地の6
トピアビル
(演奏所)
719-0243
浅口市鴨方町鴨方1101番地の1
笠岡放送浅口局内
2006年
(平成18年)
5月1日
笠岡(79.2MHz)

西側から撮影したエフエムふくやま本社。
すぐ西側には交通量の多い福山市道が通っている。

福山商工会議所ビル1階ロビーから撮影したエフエムふくやまのスタジオ。
ロビーから放送を見物することができるようになっている。

尾道エフエム放送本社。
JR山陽本線尾道駅(尾道市東御所町)の東方にある商店街の中にある。

エフエムゆめウェーブ本社。
ケーブルテレビ業者・笠岡放送の本社でもある。
演奏所はここには設置されていないが小規模ながら食料品店が併設されているのが珍しい。

北側から撮影したエフエムゆめウェーブの演奏所。
すぐ北側を通る浅口市道はバイパスの整備がなかなか進まない国道2号線(注21)の迂回路として通る車が少なくない。

 次にそれぞれの放送局の特色と難点を記すと次の通りになる。

放送局名 特色 難点
エフエムふくやま ・愛称に福山市及びその周辺の令制国名(備後〔びんご〕)が入っていることからもうかがえるように福山市だけでなく近隣自治体(備後国ではなかった地域(注22)も含む)を見据えた放送を展開している(注23)
・福山市だけでなく近隣自治体を見据えた放送を展開することを念頭に置いたことにより本局を福山市中心部の南西に聳(そび)える彦山(標高:429.7m)の山頂に置いている
(注24)
・平日に三つ設定している2時間程度のワイド番組を中心として多くの自社制作番組を設定している。
・広島県にあるコミュニティ放送局では唯一J-WAVEの番組を深夜・早朝や週末に挿入している。
・一方でミュージックバードの番組は喋り手のいるものは一切流していない。
・演奏所は福山商工会議所ビル1階にあり、福山商工会議所ビル1階のロビーから放送している様子を見ることができる。
・喋り手の中にはかつて中国放送福山支社(福山市北美台)が制作し、中国放送ラジオ福山・府中・三原各中波中継局だけで放送されていた番組に出演していた方がいくらかいる。
・原則として放送休止は設定していない。
・専用郵便番号を所有している稀有なコミュニティ放送局である
(注25)
・本局を彦山の山頂に置いたために彦山の山頂が見えなくなる地域、例えば福山市南部・西部での受信状況が芳しくない。
・受信環境改善への動きが鈍い。
・中国地方にある県庁所在地ではないが人口の多い都市にあるコミュニティ放送局、すなわちエフエムくらしき(倉敷市白楽町〔ばくろちょう〕)やコミュニティエフエム下関(愛称:COME ON! FM。下関市上田中町二丁目)と比べると自社制作番組が貧弱な感が否めない。
・J-WAVEの番組を深夜・早朝や週末に挿入するのは構わないが、土曜日午後0時〜月曜日午前6時の42時間にわたってJ-WAVEの番組(注26)をずっと流しており、記すまでもなくその間自社制作番組が一切ない。
・収益至上主義をとった結果人気のある番組でも打ち切りの憂き目に遭うものが続出し、結果人材流出を招いてしまった。
エフエムゆめウェーブや尾道エフエム放送との差別化を図るためなのかミュージックバードが制作する喋り手のいる番組は一切ネットしなくなった(注27)
・演奏所が市民の目に触れにくい場所にある。
・他のコミュニティ放送局との連携が見られない
(注28)
尾道エフエム放送 ・エフエムふくやまが福山市だけでなく近隣自治体を見据えた放送を展開しているのに対して尾道市を中心にした放送を展開している。
・本社・演奏所はJR山陽本線尾道駅の東方にある商店街の中にある。
・平日に三つ設定している1〜2時間程度のワイド番組が主な自社制作番組になっている。
・自社制作番組を設定していない時間帯はずっとミュージックバードの番組を流している。
・開局当初は放送休止を入れていなかったが現在は月曜日午前3時〜午前5時に放送休止を入れている。
・尾道市は人気の高い観光地であるにもかかわらず週末に自社制作番組が全く設定されていない(過去にはあった)。
・広島県南東部の中心都市を巡る確執があることや尾道市を第一に考えたことなどからかエフエムふくやまとの連携が全く見られない。
・いわゆる平成の大合併で尾道市が編入した地域のうち、因島(いんのしま)・瀬戸田地区には中継局を設置したのに御調(みつぎ)地区については未だに中継局を設置しないままになっている。
・エフエムゆめウェーブと周波数が近接している上に同じ番組を流している時間帯が少なくないためにどちらの放送局を聴いているのか分かりづらくなることがある。
エフエムゆめウェーブ ・浅口市・笠岡市・浅口郡里庄町でケーブルテレビを運営している笠岡放送(笠岡市笠岡)が親会社となって開局させたコミュニティ放送局である。
・演奏所と本社が別々の場所にある。
・エフエムふくやまや尾道エフエム放送にあるようなワイド番組はなく、自社制作番組は最長でも1時間になっている。
・自社制作番組を設定していない時間帯はずっとミュージックバードの番組を流している。
・原則として放送休止は設定していない。
・人口規模が小さく、経済基盤が脆弱なせいもあるのかワイド番組が設定できないため受信可能なラジオ局と競争していくに当たって不利になっている。
・本社はともかく演奏所は浅口市中心部の外れにあるため市民の目に触れにくい。
・尾道エフエム放送と周波数が近接している上に同じ番組を流している時間帯が少なくないためにどちらの放送局を聴いているのか分かりづらくなることがある。
・中継局を全く設置していないため放送区域内でも受信しにくいところがある。
・浅口市・笠岡市・浅口郡里庄町は倉敷市と福山市の間にあり、倉敷市・福山市双方へのストロー効果(ストロー現象とも称する)が著しいことから立ち位置を確立するのが難しくなっている。
・ケーブルテレビ業者が親会社になっている以上別のケーブルテレビ業者のある井原市・小田郡矢掛(やかげ)町への展開が不可能になっている。

 福山市を中心とした地域にあるコミュニティ放送局の現状を記してみたのだが、やはり厳しいなという感想を抱きたくなる。福山市を中心とした地域で人口が増加し続けているのは浅口郡里庄町と福山市だけであることや福山市は広島県南東部の中心都市であり、交通至便な土地であり、商工業も盛んだが地域の中心都市として見劣りする面も少なくないこと(注29)などが背景にあるのだが、それぞれの放送局の現状を見る限り身の丈に合った放送を展開しているのかなと思うところである。この点をこのようにすれば…と思うところはある(注30)のだが、今後も地域のために頑張って頂きたいものである。

これからのコミュニティ放送局に望むこと

 各都道府県に一つは存在するようになったコミュニティ放送局。これまでに開局した放送局は300を超えており、今後も開局するところは出てくることであろう。こちらでも記したように中国地方でも開局したら良いなと思うところはまだまだある。
 しかし、前にも記したようにコミュニティ放送局の放送区域人口はそのほとんどが都道府県域放送局の放送区域で最も人口が少ない高知県の人口を下回っている。更に放送内容を充実させるのに必要な経済基盤が脆弱なところも少なくない。だから経営が厳しいところが少なくないし、既に廃業したところも出ている。また、残念なことに多くの一般市民を蔑(ないがし)ろにしているところもある。
 前にも記したようにコミュニティ放送局は都道府県域放送では手の届かない、市区町村の情報を広く一般市民に提供することを目的に制度化され、広まっていった。そういう一般市民に近いところにある放送局はできる限り維持・発展させていかなければならないものである。ではそういう立場にあるコミュニティ放送局は今後何をしていったら良いのか。私が考えていることは次の通りである。
・とにかく公開し得る情報は公開するように努めること。コミュニティ放送局の中にはサイトを設置していないところやサイトはあっても内容が充実していないところ、サイトの更新が長らくなされていないところ、本社・演奏所の所在地を一切明かしていないところが少なくないが、なぜこのようにしているのだろうか。一般市民に近い存在になるためにも一般市民から訝(いぶか)しがられるようなことはしないで頂きたい。
・身の丈に合った経営を目指すこと。中国地方で初めて廃業に追い込まれたコミュニティ放送局・五日市(いつかいち)コミュニティ放送(愛称:エフエムななみ。広島市佐伯〔さえき〕区皆賀四丁目。2004〜2007)は身の丈に合わない放送を展開したこと(注31)がいけなかったのだろうと思っているのだが、放送地域の人口や住民の年齢構成、経済情勢などを勘案してどのような番組を設定するのかとか一日の放送時間はどのくらいにするのかなどを決めてはどうであろうか。地域に不釣り合いな放送を展開しても親しまれる存在にはなり得ないし、結局損をするだけである。
・なるべくなら演奏所を人目に付きやすい場所に置き、市民に近い放送局になるように努めること。放送している様子を市民に公開することについては賛否両論あるのだが、都道府県域放送局よりも近い存在であることを宣伝するためにも、多くの市民に親しまれる放送局になるようにするためにも積極的になってはどうであろうか。
・受信環境改善に努めること。受信困難地域があることは認識しているが経営事情などから中継局設置に動けないところが少なくないが、実は現在市区町村などが免許を保有する中継局(いわゆるギャップフィラー中継局)が設置できるようになっている。市区町村側も財政事情が厳しいところはあるが、地域のためにも導入を考えてはどうであろうか。
・使用できる周波数の幅を拡大すること。現在は76.0〜90.0MHzだけだが、エフエム補完放送が推進されていることや電波混雑が起きる可能性があることを考えると76.0〜95.0MHzにしても良いのではないのだろうか。もっとも、その前提として90.0MHz以上を用いる放送局が受信できるラジオ受信機の普及が必要であるが…。
・地域で放送局を支える体制を確立させること。コミュニティ放送局が都道府県域放送局ではなし得ない市区町村のきめ細かな情報を伝える手段であることを考えるとその存廃は看過できない問題ととらえる必要があるように思う。
・現状はできる限り公開するように努めること。不都合なことを明かしたら避けられて損をしてしまうと考える方が少なくないが、不都合を悟られまいと思って無理を続けたらいつか破綻するだけである。きちんと状況を明かしたことで放送局を支えようと考える方が出ることも考えられるのでその点を考えて頂きたい。
・放送局が永続するためにも人材の育成に努めること。コミュニティ放送局の廃業の一因には次代を担う人材がいなかったというのがあるのだが、現在一線で頑張っている人がいついなくなるかを考えないというのはどうなのだろうか。今だけでなく未来も考えて欲しい。
・コミュニティ放送局同士の連携を強化すること。地域第一主義を掲げる以上連携などどうでも良いというところもあるだろうし、都市間の確執など難しい面もあるのだが、ネットワーク化が進めばある地域の複数のコミュニティ放送局だけでネットされる番組が作れるし、あるコミュニティ放送局が厳しい状況に立たされた時は他のコミュニティ放送局が支援をすることもできるようになる。確かに放送区域は大切だが広い視野を持つ必要があるのではないのだろうか。
・コミュニティ放送局の開局が難しい市区町村が少なくないことを踏まえてコミュニティ放送局の放送区域の拡大を積極的に行えるようにすること。例えばエフエムふくやまは府中市・神石郡神石高原町を正式に放送区域とし、府中市・神石郡神石高原町への中継局設置を進めても良いように思う。
・ケーブルテレビ業者との連携を考えること。エフエムゆめウェーブはそれができている典型的な事例であるが、そのように考えるのはかつてかにかも放送(愛称:FMでんでん。可児〔かに〕市広見七丁目。2004〜2010)がケーブルテレビ可児(可児市広見七丁目)と社屋を共有するようになったのに連携しなかったために経営難に陥った時どうにもならなくなったという問題があったからである(注32)。ケーブルテレビはほとんどの場合市区町村を営業区域としていることを考えると映像・音声双方の狭域メディアがあれば地域の信頼も高まるのではないのだろうか。また、ケーブルテレビ局がないところはコミュニティ放送局がケーブルテレビ局の経営に乗り出しても良いと思う。
・もし廃業に追い込まれた場合や開局を目指してきたが何らかの事情で断念せざるを得なくなった場合はきちんと説明責任を果たすこと。なぜ廃業に追い込まれたり開局を断念したりしなければならなくなったのかをきちんと説明しなかったために釈然としない思いを残すことが多いように思うのだが、後ろめたいことやなかったことにしたいこと、誰かに触れて頂きたくないことであっても正直に関係者に対して説明し、謝る姿勢は見せて頂けないものであろうか。ただ、釈明において責任者が全て真実を喋るとは限らないという問題があるのだが…。
・都道府県域民間ラジオ放送局はコミュニティ放送局を対抗関係にあるものととらえるのではなく住み分けのできる関係ととらえるように努めること。広島県におけるコミュニティ放送局の開局状況は人口の多い広島市より南東部の尾道市・福山市のほうが早かったのだが、そのようになった背景にあるのが中国放送ラジオが中国放送福山支社(福山市北美台)が制作し、福山・府中・三原各中波中継局だけで流していたワイド番組を経費節減を理由に取りやめたかったことである(注33)。つまり、中国放送としては地域の情報はコミュニティ放送局で、広島県全体の情報は中国放送ラジオでそれぞれ得て頂きたいと考え、エフエムふくやま・尾道エフエム放送の開局に積極的になったのだろう。一見すると中国放送は広島県南東部を軽んじているように感じたくなるのだが、エフエムふくやま・尾道エフエム放送とも平日は三つワイド番組を設定・維持していることを考えるとこれで良かったのかなと感じるところである。
・派手に走らず、地道に努力すること。多くの人々に知られ、親しまれる存在になるためには多くの人々の関心を引き付け、離さないようにする努力が必要であるが、派手な路線を続ければいつかは息切れするし、開局当初は派手にやっていたのに経営事情などを理由に親しまれていた番組を打ち切れば聴取者離れを引き起こす恐れがある。どのようにするか難しいものがあるのだが、じわじわと放送区域に住んでいる人々に知られ、親しまれたほうが良いと思うのは私だけだろうか。「激動の時代にそんな悠長なことは言っていられるか」と言う方がいるかもしれないのだが、地道に努力したほうが良いと思うのは私だけではないはずである。
 本サイトは閲覧者の参考になるようにコミュニティ放送局の所在地や周波数に関する情報を公開している(それはこちら)。まだ一つしかない都道府県がいくつかあるし、都道府県庁所在地・政令指定都市・人口10万人以上の都市でも未だに存在しないところも少なくない。果たして今後どのような進展を見せるのだろうか。本サイトが続く限り注目していきたいと思っている。

(注釈コーナー)

注1:福山市中心部西部の芦田川左岸にある地域の名称。現在は北本庄・本庄町中・南本庄に分かれている。

注2:午前7時〜午前9時は「GO! GO! Bびんご〜」、午前9時〜午前11時15分は「おはようときめきタイム」をそれぞれ放送しており、4時間15分ぶっ通しの番組を設定しているわけではない。

注3:エフエムふくやまが「GO! GO! Bびんご〜」と「おはようときめきタイム」を放送している時間帯における中国放送ラジオと広島エフエム放送の自社制作の情報番組は下表の通りである(それぞれの番組の放送時間は今年6月23日〔木曜日〕のものを記している)。

放送局名 番組名 放送時間 備考
中国放送ラジオ 本名正憲のおはようラジオ 午前7時〜午前9時 全国ネットの番組を挿入している時間帯あり。
平成ラヂオバラエティ ごぜん様さま 午前9時〜午前11時30分
広島エフエム放送 MORNING ALIVE 午前7時30分〜午前10時50分 全国ネットの番組を挿入している時間帯あり。

注4:広島県を放送区域とする放送局で広島市以外に本社を置いているところは一切ない。「広島県大百科事典」(1982年〔昭和57年〕中国新聞社〔広島市中区土橋町〕刊)には広島県を放送区域とする都道府県域民間エフエム放送局(すなわち現在の広島エフエム放送)について広島県東部(恐らく尾道市か福山市のどちらかであろう)に本社を誘致しようという声が上がったことが記されているが実現しなかった(どのように考えても広島市以外への本社設置は無理だと思うが…)。

注5:Xさんは浸水被害が起きた福山市山手町を通っている(但し山手橋→芦田川右岸土手を走行)のだが、浸水被害が起きていたことは全然知らなかったという。

注6:更に運営企業設立もエフエムふくやまのほうが早い(エフエムふくやま…1996年〔平成8年〕1月9日、エフエム萩…1996年〔平成8年〕6月7日)。

注7:ミニエフエム放送局がどれだけ存在したかは分からないが、大規模な行事の際に設置されるいわゆるイヴェント放送局は中国地方でもいくつか設置されている。主なものとしては広島・山口両県で開催された第12回アジア競技大会(1994年〔平成6年〕)や山口県で開催された山口きらら博(2001年〔平成13年〕)が挙げられる。
※第12回アジア競技大会は広島県各地で開催されたのだが、山口県でも開催した競技(自転車のロードレース。宇部興産専用道路を使用)があったため「広島・山口両県で開催された」と記している。

注8:コミュニティ放送局の運営会社は「○○放送」「エフエム××」「△△エフエム放送」というような都道府県域民間放送局で見られる名称を付けていないことが多い。故に社名を見ると放送局とは全然関係のないものが多いのだが、本サイトではコミュニティ放送局は運営会社の名称を正式名称(放送局名)として記載し、愛称がある場合は付記する方式を採っている(こちらの「コミュニティ放送局一覧表」もそれを踏襲している)。その点はご了承願いたい。

注9:1990年代前半の中国地方の都道府県域民間ラジオ放送局の厳しい現状を記すと次の通りになる。
・山陰放送ラジオ(BSS、米子〔よなご〕市西福原一丁目)は1990年(平成2年)春の改編で終夜放送に移行したが、それは平日だけであり、日曜日深夜(月曜日早朝)だけでなく土曜日深夜(日曜日早朝)にも放送休止を設定したこと(これは現在も継続している)。
・岡山県を放送区域とする都道府県域民間ラジオ放送局が496もあった申請を一本化するのに手間取っていたこと(結局1999年〔平成11年〕4月1日にようやく岡山エフエム放送として開局した)。
・中国放送ラジオの平日午前中の自社制作のワイド番組が安定しなかったこと(安定するのは21世紀に入ってからである)。
・広島エフエム放送は1989年(平成元年)春の改編で終夜放送に移行したが、それは平日だけであり、日曜日深夜(月曜日早朝)だけでなく土曜日深夜(日曜日早朝)にも放送休止を設定したこと(詳細な時期は分からないが1990年代中期までに土曜日深夜〔日曜日早朝〕の放送休止は解消され、放送休止は現在は日曜日深夜〔月曜日早朝〕だけとなっている)。
・山口放送ラジオ(KRY、周南市徳山)は平日の午前中に自社制作のワイド番組を設定しなかったこと。

注10:呉市が挙げられる。呉市は丘陵地や山岳部、島嶼(とうしょ)部が多いことを考えるとケーブルテレビ局があっても良いところだと思うのだがそういう志を持つ人はいないのだろうか(そうなるとケーブルの敷設も大変なものになるだろうが…)。
※ちなみに福山市は一応ケーブルテレビ局はあるが加入に制限があることや自主放送を行っていないこと、知名度が低いことといった問題を抱えている。まあ福山市の場合平地が広く、そこに大半の方が住んでいることからケーブルテレビ局を開局させようという動きが鈍いのではないかと思うのだが…。

注11:兵庫県南部地震において中国地方で震度4を記録した市区町村は次の通りである。
・鳥取県…鳥取市・境港市
・岡山県…岡山市・津山市
・広島県…呉市・福山市

注12:中国地方において大きかったのは中国地方と三大都市、すなわち東京・名古屋・大阪を結ぶ鉄道や高速道路が被災したことであった。特に高速道路(中国自動車道と阪神高速道路3号神戸線〔兵庫県道高速神戸・西宮線〕)が不通になったことは物流に甚大な影響を与えている。

注13:岡山エフエム放送は1999年(平成11年)4月1日に開局している。結局エフエムくらしきだけでなく岡山シティエフエム(愛称:Radio momo。岡山市北区中山下二丁目)よりも開局が遅くなった。
※岡山県を放送区域とする都道府県域民間エフエム放送局の開局が遅れたのは注9で触れたように496に及ぶ申請者の一本化に手間取ったためである。

注14:倉敷市は岡山エフエム放送について、尾道市・福山市は広島エフエム放送について、宇部市・下関市・萩市・防府(ほうふ)市は山口朝日放送(YAB、山口市中央三丁目)についてそれぞれ本社誘致に動いたことがある。

注15:栃木県でのコミュニティ放送局開局への動きは1993年(平成5年)頃に栃木市で起きたことがあり、予備免許取得まで話は進んだのだが、諸事情で頓挫した。そのことに対するトラウマもあって栃木県ではなかなかコミュニティ放送局開局への動きが起きなかったのではないかと思われる(ちなみに栃木県で初めて開局したコミュニティ放送局はその栃木市にある)。

注16:高知県より人口が少ない都道府県は鳥取県(58万8,667人)と島根県(71万7,397人)である(いずれも2010年〔平成22年〕10月1日実施の国勢調査の結果に基づく)。しかし、鳥取県と島根県は都道府県域民間テレビ放送・都道府県域民間ラジオ放送とも放送区域を統合しており、放送区域上は日本で最も人口の少ないところとはならない。
※都道府県域民間放送局における鳥取県と島根県の放送区域統合の状況は下表の通りとなる。

種類 放送局名 開局年月日 概要
中波 山陰放送ラジオ
(BSS、米子市西福原一丁目)
1954年
(昭和29年)
3月1日
開局当初の社名はラジオ山陰(RSB)。
本社のある米子市が島根県を境を接していることや地形上の都合で島根県(開局時点では松江市・安来市・出雲〔いずも〕市及びその周辺)でも受信可能だったことから開局当初から鳥取・島根両県を放送区域としていた。
テレビ 日本海テレビジョン放送
(NKT、鳥取市田園町四丁目)
1959年
(昭和34年)
3月3日
中国地方初の民間テレビ単営放送局(中国地方初の都道府県域民間テレビ放送局は1958年〔昭和33年〕6月1日に開局した山陽放送テレビ〔RSK、岡山市北区丸の内二丁目〕となるが山陽放送はテレビ・ラジオ兼営局であり、テレビ単営局ではない)。
開局時は鳥取県を放送区域としていたが、1972年(昭和47年)の鳥取・島根両県の放送区域統合で島根県を放送区域に編入した。但し鳥取県だけを放送区域としていた時代でも島根県東部で視聴していた方がいた可能性はある。
山陰放送テレビ
(BSS、米子市西福原一丁目)
1959年
(昭和34年)
12月15日
開局当初の社名はラジオ山陰(1961年〔昭和36年〕6月1日に現在の社名に変更)。
本社は鳥取県米子市にあるが本局を松江市郊外にある枕木山(標高:453m)に設置したことや島根県では都道府県域民間テレビ放送局開局への動きがなかったこと、鳥取県では既に日本海テレビジョン放送が存在し、鳥取県に二つも都道府県域民間テレビ放送局が存在するとなると過当競争になる恐れが高かったことから島根県だけを放送区域とするという変則体制をとった。
1972年(昭和47年)の鳥取・島根両県の放送区域統合で鳥取県を放送区域に編入し、晴れて本社のある米子市も放送区域に含まれることになった(もっとも放送区域編入前でも枕木山との間に遮るものがない米子市などの鳥取県西部では山陰放送テレビの番組は視聴できていたのではないかと思われる)。
山陰中央テレビジョン放送
(TSK、松江市西川津町)
1970年
(昭和45年)
4月1日
開局当初の社名は島根放送(通称:テレビしまね)。
島根県に本社を置き、島根県だけを放送区域とする初めての都道府県域民間テレビ放送局である。
1972年(昭和47年)の鳥取・島根両県の放送区域統合で鳥取県を放送区域に編入したが、その少し前の1972年(昭和47年)4月1日に現在の社名に変更している。ただ、島根放送時代の略称のTSK(通称のテレビしまねに由来)は社名変更後も使用し続けている。
エフエム エフエム山陰
(愛称:V-air。松江市殿町)
1986年
(昭和61年)
10月1日
鳥取県・島根県それぞれで都道府県域民間エフエム放送局を開局させても経営が成り立つかどうか疑問視する声があったことや既に民間中波放送局・民間テレビ放送局が放送区域を統合していたことから鳥取・島根両県を一つの放送区域とする都道府県域民間エフエム放送局として発足した。米子本局だけで開局した山陰放送ラジオ、鳥取県だけを放送区域としていた日本海テレビジョン放送、島根県だけを放送区域としていた山陰放送テレビ・島根放送→山陰中央テレビジョン放送とは異なり最初から鳥取・島根両県を放送区域としていたため中継局は鳥取・島根両県に設置されたが、経営上の問題から開局当初は松江(本局)・鳥取・浜田の3箇所しか設置されなかった(その後島嶼〔とうしょ〕部や山間部での中継局設置が進められ、現在は10箇所になっている)。
外国語放送のMegaNet系列では複数の都道府県を放送区域とする都道府県域民間エフエム放送局は存在するが、エフエム山陰が属しているJFN系列では唯一の事例になっている。

注17:高知県の人口を上回る市区町村はただ一つだけ存在する。それは東京都世田谷(せたがや)区であり、2010年(平成22年)10月1日時点の人口は87万7,138人(2010年〔平成22年〕10月1日実施の国勢調査の結果に基づく)であった。

注18:中国地方では津山市がある。実際、後発局のエフエム津山(愛称:レディオつやま〔2010〜2012〕→MegaWAVE76.3。津山市小田中)は2012年(平成24年)に半年ほど放送を休止している。

注19:都道府県で最も狭い香川県(2015年〔平成27年〕全国都道府県市区町村別面積調によると1,876.72平方キロメートル。但し岡山県との間に境界未定箇所〔井島〈香川県側の表記。岡山県側は同じ読み方で石島と表記している〉の西岸部〕があるため前記数値は参考値である)より広い行政区域面積を持つ市区町村は高山市だけである。高山市の面積は2015年(平成27年)全国都道府県市区町村別面積調によると2,177.61平方キロメートルであり、大阪府(2015年〔平成27年〕全国都道府県市区町村別面積調によると1,905.14平方キロメートル)よりも広い。

注20:日本においてエフエム放送で使える周波数は76.0〜95.0MHzである。

注21:岡山県南西部、すなわち倉敷市から笠岡市にかけての国道2号線については現在玉島・笠岡道路の建設が進められている。2015年(平成27年)3月29日には玉島西インターチェンジ(倉敷市玉島阿賀崎)〜浅口金光(あさくちこんこう)インターチェンジ(浅口市金光町佐方)間が開通したのだが、浅口金光インターチェンジ以西についてはいつ開通するかはまだはっきりしていない。

注22:備中(びっちゅう)国に属していた井原市や笠岡市を指す。

注23:もしエフエムふくやまが福山市だけを対象とした放送を展開することにしていたら恐らくエフエムローズなどの福山市に因(ちな)む事柄を愛称に入れていたのではないかと思われる。

注24:それまでの福山市中心部に電波を送るためのエフエム放送の中継局はNHK-FM・広島エフエム放送とも蔵王(ざおう)山(標高:225.3m)の中腹(所在地は福山市西深津町七丁目)に設置していた。
※ちなみに今秋開局予定の中国放送ラジオ福山エフエム中継局も蔵王山に設置されることになっている。但しNHK-FM福山南中継局・広島エフエム放送福山中継局とは異なる場所(福山市千田町千田)で現在建設が進められている。

注25:中国地方では他にエフエムくらしきと中国コミュニケーションネットワークが専用郵便番号を持っている。

注26:J-WAVEは月曜日午前1時〜午前5時の4時間は放送を休止するため、月曜日午前1時〜午前5時についてはJ-WAVEの制作になるがJ-WAVEでは流れない「J-WAVE MUSIC SELECTION」を流している。

注27:エフエムふくやまにおいてミュージックバード制作の喋り手のいる番組が全てなくなったのは土曜日の夕方に放送されていた「JP TOP20」を打ち切った2015年(平成27年)春のことである(「JP TOP20」はエフエムゆめウェーブ・尾道エフエム放送では現在も日曜日の午後に放送されている)。

注28:過去には岡山・香川両県にあるコミュニティ放送局と連携し、共同で特別番組を流していたことや中国コミュニケーションネットワーク(愛称:ひろしまPステーション〔2000〜2008〕→エフエムちゅーピー。広島市中区土橋町)でエフエムふくやまの番組を、反対にエフエムふくやまで中国コミュニケーションネットワークの番組をそれぞれ流していたことがあった。いずれも数年で終わっている。

注29:例えば倉敷市や下関市といった、中国地方にある県庁所在地ではないが人口の多い都市ほど知名度が高くないことや福山市にもあっても良いはずの大手チェーン店が進出しないままになっていたりかつては存在したが撤退し、そのままになっていたりすることが挙げられる。

注30:エフエムふくやま・尾道エフエム放送・エフエムゆめウェーブそれぞれの改善してはどうかと思う点は下表の通りである。

放送局名 改善してはどうかと思う点
エフエムふくやま ・本社はともかくとして演奏所を多くの市民の目に付く場所に移転すること。考えられる場所としては天満屋福山店(福山市元町)やJR山陽新幹線・山陽本線・福塩線福山駅構内(福山市三之丸町)、ポートプラザ日化(福山市入船町三丁目)が挙げられる。
・中継局の設置を進めて受信環境改善を行うこと。中継局を設置したら良いと思うところとしては福山市内では芦田川河口から鞆の浦にかけての地域や内海(うつみ)・沼隈地区、松永地区が、福山市外では神石郡神石高原町や府中市上下地区がそれぞれ挙げられる。
・週末に自社制作番組を設定すること。本文で触れたように土曜日午後0時から月曜日午前6時まで42時間にわたってJ-WAVEの番組を流し続けるのはどうなのだろうと思うものがある。長寿カウントダウン番組「TOKIO HOT 100(ワンハンドレッド)」などのJ-WAVEの人気番組が流れなくなることに対して苦情が出る可能性はあるが、J-WAVE福山中継局と揶揄されるよりはましである。
・若年者向けの番組を設定すること。福山市は倉敷市や下関市に比べて高等教育機関(大学)が少ないという難点があり、それ故設定しにくくなったことが考えられるのだがそれでも市内には三つ四年制大学があることを考えるとそれを生かさない手はない。
・終夜放送を見直すこと。かつては日曜日深夜(月曜日未明)に放送休止を設定していたことがあるが、最近は臨時であっても放送休止を入れることが全くと言って良いほど見られない。経営状況や機器の疲弊状況を考えるとどうなのだろうか。
・近隣のコミュニティ放送局との連携を図ること。地域第一主義をとる以上近隣のコミュニティ放送局との連携は軽んじられる傾向にあるが、かつては岡山・香川両県にあるコミュニティ放送局と共同で番組を制作・放送していたことや中国コミュニケーションネットワークと番組を相互乗り入れしていたことを考えると現状はあまりにも寂しいものがある。せめてエフエムくらしき・エフエムゆめウェーブ・尾道エフエム放送とは何らかの連携を持てないものであろうか。
・ミュージックバードの喋り手のいる番組を復活させること。エフエムふくやまがミュージックバードの喋り手のいる番組を全て打ち切ったのはエフエムゆめウェーブ・尾道エフエム放送との差別化が理由ではないかと考えられるのだが、福山市内にはエフエムゆめウェーブ・尾道エフエム放送とも受信しにくいところがあることなどを考えるといくらかは残しても良かったのではないか。ただ、もしミュージックバードの喋り手のいる番組を復活させた場合、J-WAVEの人気番組を打ち切らざるを得なくなるという問題が生じるので難しい課題になるのは確実であろう。
尾道エフエム放送 ・尾道市北部の御調地区に中継局を設置すること。御調地区への中継局設置を見送っているのは経営事情が厳しいことや御調地区の人口が少ないことが考えられるが、もし御調地区で災害が起きた時御調地区の住民にきめ細かな情報を流せないというのはどうなのだろうか。
・観光客が多く訪れる週末に自社制作番組を設定すること。週末はずっとミュージックバードの番組だけというのでは地域の情報を流す機会がないし、観光客の求めるものに合致しないからである。
・周波数が近接しているエフエムゆめウェーブとの混同を解消すること。混同を解消するためには周波数を変更することが考えられるが尾道市が瀬戸内海に面している以上混信しない周波数を設定するのが難しいし、聴取者の反発も予想される。また、中波放送のエフエム補完放送で使われ始めた90.0〜95.0MHzに周波数を変更する場合は90.0〜95.0MHzに対応していないラジオ受信機が少なくない現状も考慮する必要があろう。
・近隣のコミュニティ放送局との連携を図ること。特にエフエムふくやまとの連携は今後必要になるのではないのだろうか。尾道市と福山市の間に広島県南東部の中心都市を巡る確執があることや尾道エフエム放送の自社制作番組が少ないことなどから難しいものがあるが、福山市でも尾道市との関係が深いところ(松永地区)があることや尾道市は福山市の影響を少なからず受けていることを考えると関係を持たないままでいるのは難しいのではないのだろうか。
エフエムゆめウェーブ ・周波数が近接している尾道エフエム放送との混同を解消すること。混同を解消するためには周波数を変更することが考えられるが浅口市・笠岡市が瀬戸内海に面している以上混信しない周波数を設定するのが難しいし、聴取者の反発も予想される。また、中波放送のエフエム補完放送で使われ始めた90.0〜95.0MHzに周波数を変更する場合は90.0〜95.0MHzに対応していないラジオ受信機が少なくない現状も考慮する必要があろう。
・本社はともかくとして演奏所を多くの市民の目に付く場所に移転すること。放送区域となる浅口市・笠岡市・浅口郡里庄町の地理を考えた場合、適切な場所はなかなか見つかりにくい面があるのだが、一般市民に広く知られる存在になるためには必要不可欠な問題ではないのだろうか。
・放送区域人口を増やし、経営を安定させるためにも井原市・小田郡矢掛町への放送区域拡大を考えること。ただ、井原市・小田郡矢掛町ともケーブルテレビ業者があるため放送区域拡大は困難を極めるのは確実であろう。
・終夜放送を見直すこと。開局当初から放送休止は原則として設定していないが、経営状況や機器の疲弊状況を考えるとどうなのだろうかと思いたくなる。
・エフエムくらしきの放送区域である倉敷市やエフエムふくやまの放送区域である福山市を見据えた放送を展開すること。放送区域となる浅口市・笠岡市・浅口郡里庄町だけを念頭に置いた放送を展開しても人口が少ないために広がりが期待できない。倉敷市や福山市へのストロー効果(ストロー現象とも称する)は如何ともし難いものではあるが、それを逆手にとって倉敷市や福山市でも聴いてもらえる放送は目指せないものであろうか。
・近隣のコミュニティ放送局との連携を図ること。特にエフエムくらしきやエフエムふくやまとの連携は今後必要になるのではないのだろうか。

注31:五日市コミュニティ放送は確かに広島市佐伯区五日市地区の地理的条件(中枢性・経済基盤・住民構成など)を無視した放送を展開したこと(NHK広島放送局〔広島市中区大手町二丁目〕・中国放送ラジオ・広島エフエム放送・中国コミュニケーションネットワークとの競争は避けられなかったことや広島湾岸地域で十分受信できたことを考えれば致し方なかった面はあるのだが…)が仇(あだ)になったと言えるのだが、私は市民との距離を縮められなかったこともいけなかったのではないかと考えている。その象徴的な事実が本社・演奏所を広島市佐伯区五日市地区中心部からいくらか離れたところにある娯楽施設・ミスズガーデン(広島市佐伯区皆賀四丁目)に置いたことである。

五日市コミュニティ放送の本社・演奏所があったミスズガーデン。
JR山陽本線五日市駅(広島市佐伯区五日市駅前一丁目)・広島電鉄宮島線広電五日市駅(広島市佐伯区旭園)の北北西約1.4kmのところにある。
なお、写真左側に見える高架橋は国道2号線西広島バイパスである。

もし広島市佐伯区の代表駅である五日市駅・広電五日市駅(鉄道会社は違うが駅舎は一体化している)のすぐ近くの人目に付く場所に本社・演奏所を設置していたら市民に近い存在になり、何とか存続できたのではないかと思いたくなるのだが、なぜそれができなかったのだろうか。

注32:かにかも放送は経営難により2009年(平成21年)12月31日をもって全ての自社制作番組を打ち切り、以後は音楽だけを流すようになっていた。それも2010年(平成22年)7月15日頃に止まり、放送免許の更新を行わなかったために2010年(平成22年)11月1日をもって廃業した。廃業から既に5年以上が経過しているが、公式サイト(但し臨時ホームページと位置付けられている)は現在も残り続けている(それはこちら)。
※このことを重く見たケーブルテレビ可児が中心となって可児市を中心とした地域のコミュニティ放送局は再興されている。現在盛業中のFMラインウェーブ(愛称:FMらら。可児市広見七丁目)がそれである。

注33:中国放送福山支社が制作し、中国放送ラジオ福山・府中・三原各中波中継局だけで流していたワイド番組は2001年(平成13年)春の番組改編をもって9年半の歴史に終止符を打っている。