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SUNDAY TALK2011

第5回:「壁」は崩すべきか(2011年〔平成23年〕1月30日公開)

 この度日本にある都道府県域民間エフエム放送局52社(注1)の放送を全国どこでも聴取できる携帯電話のサービスが始まったという。一部の携帯電話会社の一部の機種に限られ、使用料も月々かかる(315円)のだが、現在東京・大阪両地区だけでサービスが実施されている、ラジオ放送をインターネットで同時にサイマル配信するradiko(ラジコ(注2))とともにラジオ放送の新しい潮流として注目すべき話と言える。
 中波(AM)放送や短波放送なら遠距離受信は容易にできるが、エフエム放送は広く開けたところ(山の上とか海岸)に行くか夏場のEスポ現象
(注3)に期待する以外の手段で遠距離受信をするのはほぼ不可能な話であった(注4)。更に「○○放送局の『××』という番組が聴きたいのに…」と思う人も少なくないだろうし、いくら日本の都道府県域民間エフエム放送局で最も多くの中継局を有する放送局であっても広島エフエム放送(HFM、広島市南区皆実町一丁目)が受信できない地域は広島県内にはいくらか存在する。放送局側にとってみれば地域色豊かな番組(注5)を他地域の方に聴いてもらえるし、手段は限られるが幅広い地域で聞いてもらえるようになることは経営破綻や廃業するところまで出て苦境に立たされている放送局にとって利益になることでもある。聴取者・放送局双方にとって利益のあることと言える。
 しかし、これらのサービスは次に挙げるような問題もはらんでいることはあまり知られていない。
・放送区域の在り方が揺らいでくる恐れがあること。サービスを実施する携帯電話会社とその機種、使用料金の発生など限定性はあるが都道府県域民間エフエム放送局52社は日経ラジオ社(愛称:ラジオNIKKEI。東京都港区赤坂一丁目)と同じく日本全国を放送区域とする民間放送局に事実上なってしまう
(注6)。また、「中継局を作って欲しい」という要望を「経営が苦しいのでできない。エフエム放送が聴ける携帯電話を買えば良いだろう」などと言って一蹴する可能性も否定できなくなる。無論、テレビ放送などにもかなりの影響が及ぶ可能性もある。
・52社中38社が加盟しているジャパンエフエムネットワーク(JFN)では土曜日の午後1時〜午後6時や日曜日の午前10時〜午後6時はほとんどの放送局で同じ番組が流れており、地域性が感じられないこと。ほぼ統一状態になっている背景には番組制作能力の低さがあるのだが、J-WAVE(東京都港区六本木六丁目)やFM802(大阪市北区天神橋二丁目)などのJFNに加盟していない他の放送局を聴くことはできるもののもう少し何とかならないかという意見が出てくることも考えられる。
・エフエム放送について若年者が聞くという固定観念があること。中国地方の場合、40代以上のアナウンサーまたはパーソナリティーが活躍しているところや中高年向けの番組を設定するところも出てはいるが中高年層や高齢者層に親しまれるメディアにはまだなり得ていない。
・JFNに加盟している放送局の格差が激しすぎること。広島エフエム放送は一時ほどではないが自社制作番組が多数存在しているのに対し、同じく政令指定都市を有する岡山県を放送区域とする岡山エフエム放送(岡山市北区中山下〔なかさんげ〕一丁目)は496もあった申請者を一本化するのにかなりの年数を要したために開局が20世紀末までずれ込み、自社制作番組があまりない状態になっている。自社制作番組が少ないということは地域性や魅力を引き出せないことでもあり、その点で避けられる恐れは否定し得ないだろう。
・Kiss-FM KOBE(現:兵庫エフエム放送〔愛称:Kiss FM KOBE。神戸市中央区波止場町〕)とエフエム九州(現:CROSS FM〔北九州市小倉北区京町三丁目〕)の経営破綻や愛知国際放送(愛称:RADIO-i。名古屋市東区東桜一丁目)の廃業の一因は聴取者離れにあるが、携帯電話でエフエム放送が聴けるようにしたところでどのくらいの聴取者を獲得できるのか疑問が残ること。ラジオから人気に火がついたタレントもあまりいない昨今、聴取者を引き入れるのは難しそうであるが…。
・テレビが音声多重放送やデジタル放送で進化を遂げる一方でラジオは進化を遂げないままでいること。エフエムの文字多重放送(見えるラジオ)も中波(AM)ステレオ放送もすぐに見向きもされなくなってしまった
(注7)
・都道府県域民間エフエム放送局が存在しない都道府県は茨城県・奈良県・和歌山県だけだが、前記3県での開局の可能性が消滅する恐れがあること。このうち奈良県と和歌山県では周波数割り当てが郵政省(現:総務省)からなされているが、「携帯電話で十分エフエム放送が聴けるならもう必要ない」ということで周波数割り当て破棄に至る可能性が十分考えられる
(注8)
・エフエム放送だけ特別扱いの感が否めないこと。中波(AM)放送も若年者向け番組は少なくないし、短波放送も維持のためには若年者を取り込む姿勢が必要になってくるがこれらの電波を用いた放送局はなぜ対象外なのだろうか。
・近くにエフエム放送の中継局も携帯電話会社の中継局もないところではどちらも受信できない可能性があること。山間部の人口が少ない地域ばかりではあるが情報過疎を蔑ろにするのはどうかと思う。
・魅力向上に追いまくられて身の丈に合わない経営に走り、結局経営破綻する放送局が出る恐れがあること。経営上の問題から終夜放送を実施していないところ(エフエム愛媛〔松山市竹原町一丁目〕など)や日曜日深夜は早く放送を終了させるところ(エフエム福岡〔福岡市中央区清川一丁目〕など)があるが、「こんなことをしていては飽きられる」ということで見栄えを良くしようとするところが出るのではないのだろうか。
・エフエムふくやま(愛称:レディオBINGO。福山市西町二丁目)など主にJ-WAVEを空いた時間に流すコミュニティ放送局が多数存在するが、それらの放送局との整合が問題になる恐れがあること。
・著作権・肖像権などの問題が絡む恐れがあること。
・その携帯電話会社にとって利益になることか疑問が生じること。まあ都道府県域民間エフエム放送局52社とこの携帯電話会社の関係は深く、2008年(平成20年)から毎年3月には有名歌手のライヴを全局で同時生放送する企画を設定していること
(注9)を思えば利益はあるのだろうが…。
 「YouTube」では各局のDJまたはアナウンサーが宣伝する動画が見られる
(注10)のだが、果たしてこれらのサービスはラジオ復権に大きく寄与するのか。それともすぐに忘れ去られるのか。更に放送業界に新たな流れを呼び起こすのか。これらのサービスの今後は注目すべきであろう(だからといって私は携帯電話をその会社のものに変えようとは思っていない。受信不可能な他局を聴く必要は今のところないし、今後もないだろうから…)。

 最近私が考えていることの一つに都道府県ごとに民間放送の放送区域を設定するやり方はもうそぐわないのではないかということがある。中国地方の場合、早くも1950年代半ばに山陰放送ラジオ(BSS、米子市西福原一丁目(注11))が鳥取県米子市に本社を置きながら米子市と境を接する島根県も放送区域に取り込み、複数の都道府県に跨る放送区域を構成したことがある(注12)が、なぜ今都道府県ごとに民間放送の放送区域を設定するやり方はもうそぐわないと感じるのか。その理由は次の通りである。
・放送格差が生じていること。例えば鳥取県と島根県の民間テレビ放送の放送区域統合(1972年〔昭和47年〕)で鳥取・島根両県で視聴できる民間テレビ放送局は3社となったが、鳥取・島根両県の合計人口を上回る人口を有する山口県ではその後20年以上視聴できる民間テレビ放送局は2社のままに置かれた。
・1980〜1990年代に郵政省が推進した、どの都道府県でもテレビ東京系列以外の系列に属する民間テレビ放送局は見られるようにしようとした構想は結局破綻したこと。例えば人口100万人以下の県に4局も民間テレビ放送局があったら経営は困難を極めただろうし、その後の地上波デジタル放送推進の中で経営破綻や廃業に至る恐れは十分考えられたはずなのになぜ推進しようとしたのかが理解できない。
・特に平成時代に入って開局した民間放送局(いわゆる平成新局)については経営事情が非常に厳しいこと。中国地方では岡山エフエム放送と山口朝日放送(YAB、山口市中央三丁目)だけであるが、自社制作番組の少なさや番組の打ち切りの多さに経営事情の厳しさを感じたくなる。
・世界的な不況やインターネットの台頭、少子・高齢化などを要因とした人口減少で地方の民間放送局は今後経営が成り立たなくなる恐れが生じること。既にラジオ放送についても終夜放送を取りやめたり日曜日深夜の放送終了時間を繰り上げたりするところが出ている
(注13)
・2007年(平成19年)5月末にテレビ東京(TX、東京都港区虎ノ門四丁目)の当時の社長が地上波テレビ放送のデジタルへの移行を契機として系列局を増やす構想を明らかにしたことに対して反感を抱いたこと。新聞報道では該当するのは京都府と宮城・静岡・兵庫・広島各県となっているが、もしこの構想が成就した場合宮城県より人口が多く、政令指定都市とプロサッカーチームのある新潟県、JR東海道・山陽両新幹線の沿線で唯一民間テレビ放送局が3局しかない山口県、テレビせとうち(TSC、岡山市北区柳町二丁目)の放送区域になっている香川県より人口が多く、四国地方最大の都市とプロサッカーチームのある愛媛県、プロサッカーチームがあり、来年4月1日に県庁所在地の熊本市が政令指定都市に移行する予定になっている熊本県、テレビ愛知(TVA、名古屋市中区大須二丁目)以外の名古屋市に本社を置く民間テレビ放送局の放送区域に含められている岐阜県と三重県、テレビ大阪(TVO、大阪市中央区大手前一丁目)以外の大阪市に本社を置く民間テレビ放送局の放送区域に含められている滋賀県と奈良県、和歌山県が仲間外れにされ、新たな放送格差を生み出してしまう。更に県として一体性が強いとは言えない静岡県についてはテレビ愛知の放送区域拡大で対応するとしたことも私としてはどうかと考えている(それが許されたらテレビせとうちは広島県に放送区域を拡大しても良いということになるがどうだろうか
(注14))。この構想がなくなったのか、水面下で進められているのかは定かではないのだが、1990年代初頭には進出を諦めておいて(注15)誰もがあり得ないだろうと思っている時期になって突然公にしたこともどうかと思っており、できるなら「あの話はなかったことにします」と表明して欲しいと思っている(注16)
・地上波デジタル放送では放送区域外での視聴が全く考慮されていないこと。例えば福山市では広島県内に系列局のないテレビ東京及びその系列局制作の番組を視聴するためにテレビせとうちを見ることで対処できたのだが、今年7月24日午後0時からはそれがほぼ不可能になる(もっとも、テレビせとうちなど岡山県内の民間テレビ放送局の番組を見る人は福山市内にはあまりおらず、むしろマニア視される
(注17)が…)。
 民間放送局の再編はかなり難航することは確実ではあるが、ならば数十年後も今の在り方が通用するかといえばそうとは言えないであろう。そういう中で愛知国際放送が都道府県域民間放送史上初の継承なき廃業
(注18)に追い込まれたことは全ての民間放送局に大きな衝撃を与えたのではないのだろうか。中には「事情が特殊だから」とか「誰かが継承すれば良かったのに。自滅だ」と思う方もいるかもしれないが、他人事に思って欲しくない。恐らく近い将来どこかの都道府県域民間放送局が継承なき廃業に追い込まれる可能性は十分考えられるからである。
 民間放送局の放送区域の問題は道州制の問題とも密接に関係することなのだが、我々は将来のために「壁」を崩すべきなのか。それとも今のままであり続けることを選ぶのか。radikoと携帯電話会社の新サービスは我々に対して新たな提起をしているようにも感じるのだが果たしてどうであろうか。

(注釈コーナー)

注1:その後2012年(平成24年)4月1日にFM802が関西インターメディア(愛称:FM COCOLO。大阪市住之江区南港北一丁目)が放送事業を受け継ぎ、一社二波体制に移行したため現在は51社になっている。

注2:radikoについては中国地方では2011年(平成23年)7月20日に中国放送ラジオ(RCC、広島市中区基町)と広島エフエム放送が実用化試験配信を開始したことで始まったが、中国地方に本社を置く民間放送局ではその後山陰放送ラジオが2012年(平成24年)1月30日に実用化試験配信を開始しただけにとどまり、残った岡山・山口両県では日経ラジオ社の第一放送と第二放送、放送大学ラジオ(千葉市美浜区若葉二丁目)しか受信できない状態が続いている。
※radikoについては次に挙げる問題点もある。
・パソコンの所在地の誤判定が頻発していること。私のパソコンでの話なのだが、なぜか所在地が広島ではなく大阪や鹿児島、沖縄になっていたことがある。
・参加していない放送局がまだ多数あること。中国地方における未参加局にも受信困難地域を抱えるところはあると思うのだが、参加をためらわせる何かがあるのだろうか。
・どれだけ浸透したのかが不透明であること。広島県の場合、実用化試験配信開始時には中国放送の泉水(せんすい)はる佳アナウンサーと広島エフエム放送の笹原綾乃アナウンサーが出演する宣伝が中国放送ラジオ・広島エフエム放送双方で盛んに流されていたが、最近はない。
・radikoを必要としていない人も少なくないこと。私の家の場合、中国放送ラジオ福山中継局(1530kHz)と広島エフエム放送福山中継局(82.1MHz)が十分受信できるところ(更に広島エフエム放送尾道中継局〔77.1MHz〕も受信可能)にあるのでほとんど使ったことがない。だからと言って存在や必要性を否定するつもりはないことをこの場においてお断りしておく。
・一部を除き他の都道府県の放送を楽しめないこと。ただ、山陰放送ラジオが開局時からほとんど休まず続けている長寿番組「音楽の風車」のように現地でないと聴く意味がないと(私としては)思う番組もあり、他の都道府県の番組を楽しむかどうかはその人次第になるであろう。

注3:Eスポとは春から夏にかけて上空約100km付近に局地的かつ突発的に発生する特殊な電離層であるスポラディックE層の通称である。その電子密度が極度に高い場合、超短波帯(30〜300MHz)の電波を反射するという特殊な性質を持っている。私が経験した例は次の通りである。
・2008年(平成20年)6月22日午後6時頃、広島市安芸区内の国道2号線を走行中にエフエムノースウェーブ(札幌市北区北七条西四丁目)の函館中継局(79.4MHz)を受信。但し、エフエムノースウェーブは79.5MHzも小樽中継局の周波数として使用しており、小樽中継局を受信した可能性もある。
・2009年(平成21年)6月20日午前11時頃、世羅郡世羅町内の広島県道404号小谷・宇津戸線を走行中に琉球放送ラジオ(RBC、那覇市久茂地二丁目)の南大東中継局(81.4MHz)を受信。琉球放送ラジオは基本的には中波(AM)放送局なのだが、混信対策で那覇本局以外の中継局は全てエフエム電波を使用している(民間中波〔AM〕放送局では他には北日本放送ラジオ〔KNB、富山市牛島町〕やラジオ沖縄〔ROK、那覇市西一丁目〕で実施している)。

なお、Eスポ現象を利用して海外の放送局の受信に挑んでいる方もおり、「VHF-DX blog〜海外FMを聞く〜」というサイトでは神奈川県相模原市在住の運営者がその状況をブログで報告しているので興味のある方はご覧頂きたい。

注4:私もさすがに住んでいる地域及びその周辺、すなわち岡山・広島・香川・愛媛各県以外のエフエム放送を受信するのは難しいだろうと考えていたのだが、2004年(平成16年)1月のある日の深夜に福山市の芦田川河口付近でエフエム大阪(大阪市浪速区湊町一丁目)の電波を受信したことから近畿(関西)地方を放送区域とするエフエム放送局も十分福山市内で受信可能であることを知った。エフエム大阪以外にはFM802やFM COCOLO、兵庫エフエム放送が福山市の芦田川河口や沼隈半島東岸で受信可能である。

注5:中国地方の都道府県域民間エフエム放送局で流れている代表的な地域色豊かな番組としてはエフエム山陰(愛称:V-air。松江市殿町)の「おがっちのレトロ本舗」(毎週金曜日午後5時5分〜午後7時)や広島エフエム放送の「DO THE CARP」(毎週月曜日午後8時〜午後8時54分。エフエム山口〔FMY、山口市緑町〕でもネットされていたことがある)、「サンフレッチェ・ラジオ・サポーターズクラブ“GOA〜L”」(毎週火曜日午後8時〜午後8時54分)が挙げられる。「おがっちのレトロ本舗」は出演者(安来のおじと名乗る男性)が出雲弁で話す点で、「DO THE CARP」と「サンフレッチェ・ラジオ・サポーターズクラブ“GOA〜L”」は地元のプロスポーツチームの情報を取り上げる点でそれぞれ地域性豊かな番組と判断した。
※広島エフエム放送ではこの他プロバレーボールチームのJTサンダーズの情報を取り上げた番組を設定していたこともあったが、2010年(平成22年)春の改編で平日夕方のワイド番組に内包され、単独の番組としては放送されなくなった。

注6:日経ラジオ社も我々がよく使用する受信機では受信不可能なこと(ホームセンターに行けば比較的安価で対応機が売られているのを目にすることができる)や聴取者層が株式投機やギャンブルに興味がある人に限られることなどを考えると限定性があると考えても良い。もっとも、「週刊少年マガジン」(講談社〔東京都文京区音羽二丁目〕発行)などに番組の広告が載るほど若年層にも人気があった時期(1970〜1980年代)もあったのだが…(そのせいもあってradikoに参加し、第一放送・第二放送双方を楽しめるようにしたとも言える)。

注7:本作公開後間もなく中国地方で中波(AM)ステレオ放送を実施していた山陽放送ラジオ(RSK、岡山市北区丸の内二丁目)と中国放送ラジオが相次いで中波(AM)ステレオ放送を取りやめており、現在中波(AM)ステレオ放送を実施しているのはニッポン放送(LF、東京都千代田区有楽町一丁目)・CBCラジオ(名古屋市中区新栄一丁目)・大阪放送(OBC、大阪市港区弁天一丁目)・和歌山放送(WBS、和歌山市湊本町三丁目)の4社だけになっている(ニッポン放送と大阪放送〔ラジオ大阪と呼称することがほとんどで大阪放送と呼称することはあまりない〕が全中継局で、CBCラジオと和歌山放送は本局だけでそれぞれ実施)。一方、2013年(平成25年)4月にはJFN系列に属する都道府県域民間エフエム放送局各社が2014年(平成26年)3月31日をもってエフエム文字多重放送を取りやめることを発表した。これによりエフエム文字多重放送は完全に取りやめになることになる。
※中国放送ラジオは最も多くの中継局で中波(AM)ステレオ放送を実施していたことはあまり知られていない。1992年(平成4年)10月1日から2011年(平成23年)3月14日まで実施していた広島本局(途中2002年〔平成14年〕10月1日に廿日市市住吉二丁目から江田島市沖美町美能に移転)以外に福山・府中・三原各中継局でも1994年(平成6年)秋から1995年(平成7年)春までに実施された周波数統一(福山中継局〔1062kHz〕と三原中継局〔720kHz〕の周波数を府中中継局〔1530kHz〕の周波数に統一するもの。福山・府中両中継局の統一は1994年〔平成6年〕11月14日に、福山・府中・三原各中継局の統一は1995年〔平成7年〕2月13日にそれぞれ実施)を契機に中波(AM)ステレオ放送を導入し、4局で実施されていた。しかし、尾道市や福山市でコミュニティ放送局が開局したことや中国放送の経営事情が厳しくなったことから福山・府中・三原各中継局については2001年(平成13年)10月15日未明の放送終了をもって取りやめになった。

注8:今のところ奈良・和歌山両県の都道府県域民間エフエム放送局用の周波数の割り当てが総務省で取り下げになったという情報は把握していない。ただ、こちらでも書いているのだが、開局にこぎ着けたとしてもかなり苦しい状況に追い込まれるのは確実であろう。

注9:2008年(平成20年)は桑田佳祐、2009年(平成21年)はコブクロ、2010年(平成22年)はレミオロメンがそれぞれ出演している。2011年(平成23年)はSuperflyのライヴが3月20日に放送される予定になっていたが直前の3月11日に東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)が発生したため取りやめになった。翌2012年(平成24年)は福山雅治が東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)の被災地の一つである宮城県石巻市内の中学校の体育館で開催したライヴが放送されたが、残念ながら2013年(平成25年)は諸事情により企画は中止された(この携帯電話会社の経営上の問題が一因であり、2014年〔平成26年〕以降再開されるかどうかは不明)。

注10:現在はその動画は削除されており、閲覧できなくなっている。

注11:山陰放送の略称は開局当初はRSBだったが、テレビ・ラジオ兼営局に移行した後の1961年(昭和36年)6月1日に社名をラジオ山陰から山陰放送に変更した際に現在のBSSに変更した。

注12:ラジオ山陰は1959年(昭和34年)12月15日にテレビ放送も開始し、テレビ・ラジオ兼営局に移行するがテレビ放送については鳥取県米子市に本社があるにもかかわらず既に鳥取県を放送区域とする民間テレビ放送局、すなわち日本海テレビジョン放送(NKT、鳥取市田園町四丁目)が開局していたこと(1959年〔昭和34年〕3月3日。実は日本海テレビジョン放送は中国地方初のテレビ放送のみの民間放送局である)や送信所を松江市郊外の枕木山(標高453m)に設置したことから島根県だけを放送区域とすることになり、テレビ放送とラジオ放送で放送区域が異なる結果になった。テレビ・ラジオとも鳥取・島根両県を放送区域とするようになったのは1972年(昭和47年)のことであるが、経営事情から新たに放送区域にしたところ(日本海テレビジョン放送…島根県、山陰放送テレビ及び島根放送改め山陰中央テレビジョン放送〔TSK、松江市西川津町〕…鳥取県)の中継局設置が進まなかったからか平成時代初頭まで山陰放送テレビと日本海テレビジョン放送で同じ時間にテレビ朝日系列のワイドショーが放送されるという番組編成がとられていた。

注13:中国地方で終夜放送を取りやめたところはないが2009年(平成21年)春の改編では山陽放送ラジオが月曜日午前2時から月曜日午前1時に放送終了時間を繰り上げているし、2013年(平成25年)春の改編では山陰放送ラジオが「あなたへモーニングコール」(JRN系、2001〜2013年〔平成13〜25年〕放送)終了により日曜日早朝の放送休止時間を1時間(午前3時〜4時)から2時間(午前3時〜5時)に拡大した。
※中国放送ラジオも「あなたへモーニングコール」は日曜日早朝だけネットしていたが、その後継番組は55分間ずっと音楽を流し続けるという自社制作の「オコノミックス」なる番組の再放送である(本放送は土曜日午後7時〜午後7時55分)。山陰放送ラジオにしても中国放送ラジオにしても何か別の番組を挿入したほうが良いのでは…という意見があるが、そういうことができないところにラジオ業界の苦境がうかがえる(山陰放送ラジオがエフエム山陰に劣る一因になっている日曜日の放送休止を解消しようとしないのは経営基盤の脆弱さもあるのだろうし…)。

注14:テレビせとうちは中国地方に本社を置く民間テレビ放送局で唯一広島支社を設置していない。経営上の問題があるからとか快く思わない存在が妨害しているとかいろいろ説はあるが確かなことは分かっていない。一方で広島県内には岡山市に本社を置く企業が多数進出しているという現実もある(山陽新聞社〔岡山市北区柳町二丁目〕、中国銀行〔岡山市北区丸の内一丁目〕、天満屋〔岡山市北区内山下二丁目〕、トマト銀行〔岡山市北区番町二丁目〕、両備ホールディングス〔岡山市北区錦町〕など)。経営上の問題で進出しないのならなぜ20年少々で岡山市北区野田五丁目の岡山県道21号岡山・児島線(国道2号線旧道)沿いに建っていた本社を放棄したのかという疑問が、快く思わない存在が広島県内にいるとすればなぜそういう方々は山陽新聞社や中国銀行、天満屋、トマト銀行などの広島県進出は黙認しているのかという疑問がそれぞれ出てくる。私はテレビせとうちが広島支社を設置しないのはいずれ広島県を放送区域とするテレビ東京系列に属する民間テレビ放送局が開局するのではないかと見ていることや「岡山県に先を越された。けしからん!!」という感情を持っている方に対して配慮していることがあるのではないかと考えているのだがどうであろうか。
※両備ホールディングスの傘下にある広島県内の主な企業としては中国バス(福山市多治米町六丁目)や岡山交通・福山両備タクシーカンパニー(福山市曙町四丁目)がある。どちらも福山市を中心に営業してきた企業の経営権を継承し、傘下に収めたものである(中国バスは両備ホールディングス加入前と社名や所在地は変わらないのだが、岡山交通・福山両備タクシーカンパニーは福山交通〔福山市西深津町五丁目〕だった。現在福山交通跡地は宅地になっている)。

蔵王山中腹から撮影した在りし日の福山交通本社(写真左側の青い大きな屋根。2006年〔平成18年〕9月22日撮影)

注15:原因はバブル景気の終焉と系列局6局中放送区域人口が最も少ないテレビせとうちの経営状況の厳しさにあったと思われる。テレビせとうちはアニメ番組の制作に乗り出したが岡山県が発祥地の大企業・ベネッセコーポレーション(岡山市北区南方三丁目)と提携した「しまじろう」シリーズ以外はヒットしたとは言い難いし、アナログ・デジタル双方とも中継局設置を見送っているところすらある。
※確かにテレビ東京系列に属する民間テレビ放送局がない広島県に住んでいて広島県を放送区域とする民間テレビ放送局各社のテレビ東京及びその系列局制作の番組に対するぞんざいな扱い(全く放送しない、何の理由説明もなく途中で打ち切る、深夜帯に流すべき番組を昼間に流すなど)もどうかと思うのだが、広島県民から見ていてテレビせとうちのやり方をどうかと思うこともよくある。例えば広島県では広島テレビ放送(HTV、広島市中区中町)が流しているテレビ大阪制作の「たかじんNOマネー」をテレビせとうちは今春打ち切ったし、広島県ではテレビ新広島(TSS、広島市南区出汐二丁目)が流していたAKB48の柏木由紀主演のドラマ「ミエリーノ柏木」(2013年〔平成25年〕放送)は今に至るまでテレビせとうちで放送したという話を聞かない(但しBSデジタル放送が視聴できればBSジャパンでも放送されているのでそちらで見れば良いのだが…)。テレビせとうち自体どのくらい岡山・香川両県で親しまれているか定かではないのだが、「『たかじんNOマネー』を放送再開しろ」とか「何で広島ではやっている『ミエリーノ柏木』を放送しない」とか「早く井原市にも中継局を作ってくれ。金をかけてまでテレビせとうちを見ようとは思わない(井原市では地元のケーブルテレビ業者に加入しないとテレビせとうちが見られない)」というような意見をどのように受け止めているのだろうか。

注16:その一方で開局を望む意見もわずかながらある。中国新聞朝刊の投稿欄「広場」では少なくとも二度開局を望む投稿が掲載されたことがある(1994年〔平成6年〕12月16日付朝刊と2007年〔平成19年〕6月19日付朝刊)し、テレビ東京及びその系列局制作の人気番組の打ち切りや放送未了も多数存在し、視聴者の既存局への不満が高まっているからである。但し、次に挙げる現実だけは認識しておいて頂きたい(その現実を知っていることも構想に賛成しない理由である)。
・開局時点の中継局が広島・呉・福山だけになる可能性が高いこと。アナログ時代に開局したテレビせとうちの場合、岡山・津山南・高松しか開局当時中継局がなく、笠岡中継局が設置されたのは開局から2年も経ってからだったことを念頭に置いているのだが、もしかしたらデジタル時代でもこういうことが起きるかもしれない。
・福山市では(「SUNDAY TALK2010」第29回「地名と方位」でも触れたのだが)中心部にテレビ電波を供給する中継局が中心部の南西にある彦山(標高430.1m)の山頂(福山中継局)と中心部の東北にある蔵王山(標高225.5m)の中腹(福山南中継局。中心部の東北にあるのに「福山南」中継局という名称になった経緯は「SUNDAY TALK2010」第29回「地名と方位」で触れているので併せてご覧頂きたい)の二つできてしまい、どちらに福山中継局を設置するかでもめる恐れがあること。私は蔵王山中腹に利があると考えているのだが、果たして…。
・経営上の都合などを理由に中継局設置が見送られるところが出る恐れがあること。広島県の場合地形が複雑なことや人口集積地が点在していることからそのようにされた地域から反発を受ける恐れがある(広島エフエム放送の中継局が都道府県域民間エフエム放送局51社で最も多くの中継局を有する結果になったのも地形が複雑なことや人口集積地が点在していることが原因。広島県より面積の大きい道県はいくつもあるのだが…)。
・広島県の人口は岡山・香川両県の人口よりも実は少ないこと。広島県自体の人口も減少傾向にあり、岡山・香川両県の人口を抜くことも考えられなくなっている。ちなみに政令指定都市を有しながらテレビ東京系列に属する民間テレビ放送局がない府県で岡山・香川両県の人口を上回っているのは静岡県と兵庫県だけである。
・経営上の問題から自社制作番組を多く設定できない恐れがあること。広島県初のUHF電波を用いた民間テレビ放送局・広島ホームテレビ(HOME、広島市中区白島北町)は開局して15年が経過した1985年(昭和60年)時点で自社制作番組の割合はわずか6%しかなく、郵政省から指導が入ったこともあったという。
・アナウンサー事情が厳しくなる恐れがあること。中国放送・広島テレビ放送・テレビ新広島にはいて広島ホームテレビにはいないものの一つに名物アナウンサーがあるが、これは入れ替わりが激しいことや広島ホームテレビが長らく不人気系列とされ、系列局も少なかったテレビ朝日系列に属していることが原因である。
・TVQ九州放送(福岡市博多区住吉二丁目)が開局する前、福岡県を放送区域とする民間テレビ放送局4社はTVQ九州放送が開局するまでまだ時間があるにもかかわらずアニメ番組を中心としたテレビ東京及びその系列局制作の番組を多数打ち切ったこと。テレビ東京及びその系列局から遅れて放送されているのでTVQ九州放送開局時点でテレビ東京及びその系列局の放送分に追い付かず、結果視聴者に不利益を与えることになるからそのような措置をとったのだろうが、視聴者にとっては番組を打ち切られることも迷惑である。もし広島県を放送区域とするテレビ東京系列に属する民間テレビ放送局が開局する際はそういうことはしないとは思うのだが、長寿番組の「いい旅・夢気分」ですら広島テレビ放送が打ち切ったこと(2010年〔平成22年〕秋。その後2012年〔平成24年〕4月から中国放送テレビが不定期に流すようになり、2013年〔平成25年〕4月から定期化した。もっとも、これもBSジャパンで視聴するという手もあったのだが…)を考えると同じことをしかねないのではと考えたくなる。
・テレビ東京及びその系列局制作の番組が放送されなくなった後の中国放送テレビ・広島テレビ放送・広島ホームテレビ・テレビ新広島の番組編成が相当厳しくなる恐れがあること。恐らくそれぞれが属する系列の番組の再放送や通販番組で埋めることになるのだろうが…。

注17:最近廃業したある福山市内の古書店は何と店内でエフエム香川(高松市西宝町一丁目)を流していた。その古書店は海岸からかなり離れたところにあったのだが、岡山・香川・愛媛方面の放送を楽しむ人もわずかながらいるのだろう。なお、テレビ放送がデジタルに移行した現在でも手段を講じれば福山市内でテレビせとうちを視聴することは可能であるが、私の家ではアンテナを笠岡中継局に向けていないためしていない。

注18:民間放送でもコミュニティ放送局では多数存在する。一方で愛知国際放送でニュースを担当していた女性のブログでは放送局名こそ出さなかったが「閉店を知らせる貼り紙をぎりぎりまで出さず、業務を引き取って続けたいと申し出る人がいても『申し訳ありませんが遅すぎました』などと言って断っている」と愛知国際放送の廃業以外眼中にない態度を非難する記述が見られたという。何とか考えれば愛知国際放送は廃業せずに済んだはずなのだが、なぜ廃業する以外の方法を思い付かなかったのだろうか。いくら状況が厳しいとしても存続への努力を放棄し、廃業すれば良いと思うのは経営者として失格と言わざるを得ない。ただ、現在愛知国際放送が属していたMegaNet系列の総本山・エフエムインターウェーブ(愛称:InterFM。東京都品川区東品川一丁目)が名古屋市周辺の外国語エフエム放送局再興に向けて動き出しているという情報があり、今後が注目される。

(AFTER TALK)

 私が初めてパソコンを買った頃、インターネットで他のラジオ放送局の番組を楽しむことができるのではないかと考えていたことがある。その年、すなわち2003年(平成15年)の春に広島エフエム放送が私が好きだったある番組を聴取率低迷などの事情から打ち切ったことが背景にあるのだが、当時はそういうものはなく、がっかりしたものであった(それからほどなくしてその番組をネットしていた放送局の一つであるエフエム大阪が福山市内で受信できることを知ったわけであるが…)。それから数年が経ち、携帯電話で各地の民間エフエム放送局を聴けるサービスやインターネットでラジオ放送を同時にサイマル配信するradikoが始まったことを聞き、初めてパソコンを買った当時そういうものがあれば…と感じた次第である(もっとも、2003年〔平成15年〕春で広島エフエム放送が打ち切った番組は2006年〔平成18年〕春で終わったためにそのサービスの開始には間に合わなかったのだが…)。
 そういうサービスが始まったということは自分と同じ考えの人が多くいたのだろうと私は思うわけであるが、
過去に残念な思いをした私は結局その波には乗らなかった。遠距離受信をしてまで聴きたいと思う番組がないことや地方の番組はその地方に行った時聴くのが良いと考えること、受信環境が良好であり、導入する必要を感じないことが主な理由であるが、サービス開始から2年、実は少々分が悪いサービスになっている。というのも、2011年(平成23年)12月にJFN系列の総本山・エフエム東京(TFM、東京都千代田区麹町一丁目)がスマートフォンで系列38社の放送を聴けるサービス・ドコデモFMを開始したからである。現在のところ聴ける放送局はJFN系列38社とMegaNet系列に属するラブエフエム国際放送(福岡市中央区今泉一丁目)の39社であり、全てとは行っていないのだが、実はスマートフォンであればどの携帯電話会社のものであっても導入可能なのである。51社全て聴けるが一部の機種しか導入できない携帯電話会社のサービスと51社全てとは行かないがスマートフォンであればどの携帯電話会社のものでも使えるサービスではどちらか良いかは火を見るより明らかであるが、今後どうなっていくのだろうか(私としては携帯電話会社が主催の有名歌手のライヴを全局で同時生放送する企画が2013年〔平成25年〕は開催されなかったことと最近ドコデモFMの宣伝しか聴かなくなったこと〔何とそれには島根県雲南市吉田地区出身との設定がなされているアニメ「秘密結社鷹の爪」の登場人物・吉田くんが出演している〕が気になる)。
 まあこれらのサービスが
原則として都道府県ごとに放送区域を設定するやり方を直ちに形骸化させることはないと思う(考えてみればそのように思う自分自身の考え方が極端なのかも…)のだが、その一方でテレビにしてもラジオにしても都道府県域民間放送局は苦境に立たされていることは事実である。バブル景気の終焉から続く不況による広告収入の減少やインターネットの急速な普及による視聴者・聴取者・スポンサー離れ、テレビ放送のデジタルへの移行による費用の増大、番組の低俗化(視聴率または聴取率至上主義の蔓延〔まんえん〕)による視聴率または聴取率の低下、少子・高齢化や若年者を中心とした流出による人口減少など理由はいろいろ考えられるのだが、そういう中で郵政省が「原則として都道府県ごとに民間エフエム放送局を開局させよう」とか「どの都道府県もテレビ東京系列以外の各系列局の番組を視聴できるようにしよう」などという政策を推進したことが状況を更に悪化させたと言っても間違いではない(さすがにどの都道府県もテレビ東京系列以外の各系列局の番組を視聴できるようにしようという方針は1990年代中期に破棄されたが…)。
 中国地方の場合、平成時代になってから開局したのはテレビ局・エフエム放送局各1社だけである。本文でも触れているのだが、テレビ局とは山口朝日放送のことであり、エフエム放送局とは岡山エフエム放送のことである。どのような点が問題なのかを挙げると下表のようになる。

放送局名 問題点
山口朝日放送 ・開局した時自分が住んでいた地域では受信状況が良くなかったこと。他の山口県を放送区域とする民間テレビ放送局2社と同じ火の山(標高268.2m)に下関中継局を設置しているのになぜ…と思ったものである(更に記しておくと山口朝日放送下関中継局は山口放送テレビ〔KRY、周南市徳山〕の下関中継局と施設を共有していた)。
・山口放送テレビが日本テレビ系列とテレビ朝日系列のクロスネットだった時代、青少年に好ましくないものは受け入れないという姿勢をとっていたことはよく知られているが、山口朝日放送はそれを受け継いだ感が否めず、その縛りのせいで損をしている感が否めないこと。例えば「トゥナイト」(テレビ朝日系、1980〜1994年〔昭和55年〜平成6年〕放送)→「トゥナイト2」(テレビ朝日系、1994〜2002年〔平成6〜14年〕放送)は「トゥナイト2」末期の3年間しかネットしなかったし、名古屋テレビ放送(NBN、名古屋市中区橘二丁目)制作の「夫婦交換バラエティ ラブちぇん」(2005〜2008年〔平成17〜20年〕放送)や広島ホームテレビ制作の「中野浩一のK-ファン」(2003〜2008年〔平成15〜20年〕放送)は一切ネットしなかった(「中野浩一のK-ファン」は山口放送テレビでネット)。「夫婦交換バラエティ ラブちぇん」は山口県以外の中国地方各県では放送されていたこと(但し広島ホームテレビ以外は昼間に放送していたのがいただけなかったが…)や山口朝日放送が「トゥナイト2」をネットした時期は番組の凋落期に当たったこと(主要な出演者が次々と降板したことやいわゆる風俗を取り上げるのが好ましくないという声が高まり、自粛したことなど。但し現在も活躍している安めぐみが出演していたのはこの時期だった)を思うともしこれらの番組を放送していればどうだったのだろうかと考えたくなる。
※「中野浩一のK-ファン」を山口放送テレビがネットすることになったせいで山口放送から広島ホームテレビに移籍し、現在も広島ホームテレビのアナウンサーとして活躍している松藤好典アナウンサーの声が山口放送で流れる結果になった。
・山口県は一部しか福岡県との繋がりが深い地域がないにもかかわらず九州朝日放送テレビ(KBC、福岡市中央区長浜一丁目)制作の長寿深夜番組「ドォーモ」をネットし、結局打ち切らざるを得なくなったこと。開局する少し前に女性出演者の妊娠公表から出産までを追跡した企画が大きな反響を呼んだこともあって「ドォーモ」をネットすることにしたのだろうが、九州朝日放送テレビが視聴できる地域では山口朝日放送には乗り換えないし、広島県との繋がりが深い地域や広島市・福岡市・北九州市のいずれからも離れた地域ではまず見向きもされないことは開局時点で分かっていたことではないのだろうか。しかも1999年(平成11年)春の改編で一度打ち切りながら6年後の2005年(平成17年)春の改編で復活させ、2009年(平成21年)春の改編で再度打ち切るという体たらくである(ネット再開を望む意見が多かったから復活させたのだろうが…)。決してネットすべきではなかったと主張するつもりはないのだが、もう少し慎重になるべきではなかったのだろうか。
※「ドォーモ」については長崎文化放送(NCC、長崎市茂里町)も2000〜2005年(平成12〜17年)にネットしなかったことがある。こちらは現在もネットを続けているが私はやはり福岡県との繋がりの濃淡が明暗を分けたのではないかと思っている。もっとも、長崎文化放送が一度「ドォーモ」を打ち切った時、後番組として入った「トゥナイト2」では長崎県ゆかりの女性レポーター・せがわきりは既に番組を降板していたので長崎県ゆかりの出演者が出ていない以上ネットする意味はなかったのではないかと私は考えているのだが…(せがわきりは自身のエッセイ集の中で父親が長崎県出身であることや小学校低学年時代に諫早〔いさはや〕市に居住していたことを明かしている)。
・かつては平日夕方に自社制作のワイド番組を設定するなど意欲的な番組編成を行っていたが、最近では自社制作番組は少なくなっていること。
・アナウンサーの入れ替わりが激しいこと。
岡山エフエム放送 ・1984年(昭和59年)に周波数割り当てがなされたが、496もあったという申請者を一本化するのに手間取り、開局が20世紀も末の1999年(平成11年)になったこと。1990年(平成2年)までには隣接各県で都道府県域民間エフエム放送局が開局したことや1992年(平成4年)には中国・四国地方で唯一都道府県域民間エフエム放送局が存在しない県になったこと、1996年(平成8年)には岡山県でもコミュニティ放送局が開局したことなどを考えるとなぜどうでも良いようなことにこだわることをやめて一日も早く開局に至るように一致団結しなかったのかと思いたくなる。
・開局があまりにも遅かったために自社制作番組が少ないこと。福山市でも受信できるので自社制作番組の多い広島エフエム放送では流れていない番組を聴くのに重宝する点で良いのだが、中国地方第二の都市で政令指定都市でもある岡山市、中国地方第三の都市である倉敷市があるのにこの状況は…と思いたくなることがある。特に土曜日・日曜日の自社制作番組の少なさは淋しさすら感じる。
・コミュニティ放送局で流している番組を放送していること。スポンサー側はコミュニティ放送局での放送を聴き逃した方やそのコミュニティ放送局が受信できない地域に住んでいる方のために岡山エフエム放送でも流しているとのことであるが、このような例は珍しい。
・受信状況が良くないこと。私の家の場合だが、広島エフエム放送尾道中継局より岡山エフエム放送笠岡中継局が近いのに岡山エフエム放送がきれいに入らない(出力の差もあると思われる)。
・音質が良くないと思えることがあること。広島エフエム放送と岡山エフエム放送で同じ内容の放送をしている時聴き比べると岡山エフエム放送の音質が広島エフエム放送のそれより劣っているのでは…と感じることがある。
・中継局の増減が開局当時から全くないこと。岡山県の地理的事情が他の中国地方各県よりも恵まれていることも一因ではあるが、ある程度の人口集積があるにもかかわらず観光地があるにもかかわらず受信できない地域はあるのかなと考えることがある。
・岡山県でも人口が集中している地域(南部の平野部や瀬戸内海沿岸)はエフエム香川を受信できるのだが、エフエム香川に流れた聴取者を取り戻せる状況になっていないこと。自社制作番組の多さや全曜日終夜放送(但し時々機器調整のため月曜日の未明に放送を休止することがある)といった利点を考えれば一度エフエム香川に流れた聴取者を岡山エフエム放送に戻すことは困難と言える。
・地元出身の喋り手が少ないこと。自社制作番組が少ないから致し方ない面はあるのだが…。
・未だに専用郵便番号を用いていないこと。(こちらでもうかがえるのだが)実は都道府県域民間エフエム放送局についてはそんなに珍しい話ではないのだが…。
・周波数の宣伝が少ない感が否めないこと。極端な話、今なお自分が住んでいる地域の周波数を知らず、故に岡山エフエム放送の番組を一度も聴いたことがない人がいるのではないか。
・日曜日深夜(月曜日未明)の放送終了時間が開局当時からずっと月曜日午前1時で固定されてきたこと。2013年(平成25年)春の改編で自社制作番組「ゆいぽんとさえぴぃのおやすみNMB48」が設定され、15分だけ放送終了時間が繰り下がったが、今後どうなるのだろうか。

 バブル景気終焉後の長期不況の真っ只中に開局したこれらの放送局はかなり厳しい立場に置かれていることが上表からうかがえると思うのだが、実は日本の都道府県域民間放送局はテレビ局にしてもラジオ局にしてももう10年以上開局していないのである。今のところ最後に開局したのはラジオ局は2001年(平成13年)4月1日開局の岐阜エフエム放送(愛称:Radio 80〔レディオエイティ〕。大垣市小野四丁目)、テレビ局は1999年(平成11年)4月1日開局のとちぎテレビ(GYT、宇都宮市昭和二丁目)となっているのだが、10年以上新規開局が途絶えているところに現状の厳しさがうかがえる。その一方で関西インターメディアとKiss-FM KOBE、エフエム九州、九州国際エフエム(現:ラブエフエム国際放送。福岡市中央区天神二丁目)の経営破綻や愛知国際放送の放送事業継承を全く考慮しない上での廃業といった非常に厳しい現実が起きているわけであるが、このように見てくると今後どうなっていくのだろうかと考えたくなる。
 お断りしておくが私は民間放送局の統合を推進すべきであるとか民間放送の放送区域を都道府県単位から地方単位に拡大すべきであるというような主張を持って本作を執筆・公開しているわけではない(ただ原則として都道府県ごとに設定してきた民間放送の放送区域の在り方が時代にそぐわなくなってきているのではないかと記しているだけのこと)。長年その土地で親しまれてきた番組が放送局の統合をもって終了することになれば「あまりにも惜しい」とか「時代の流れ。始まったものはいつか終わるのだから致し方ない」という声が上がる一方で反対運動が起きるのは確実だろうし、そういう番組がなくなることは地域色の喪失に繋がるであろう。放送局の統合はたださえ本社周辺偏重が見られる放送局を遠ざけ、結果不利益をもたらすことになる恐れがあるし、地方紙と結託して開局した放送局が少なくないことを思えば地元の住民だけでなく政財界からも反発する意見は出ることであろう。統合しても地域別放送を残せば良いだろうという意見もあるかもしれないが、かつて地域別放送を実施していたエフエム山陰(隠岐中継局のみ観光シーズンの昼間に他地域とは別の内容の放送を流していた)や中国放送ラジオ(福山・府中・三原各中継局について福山支社〔福山市北美台〕制作のワイド番組を本社制作のワイド番組を差し替える形で流していた)がいずれも取りやめた現実を考えれば実現も維持も厳しいと考えて良いであろう。しかし、その一方では放送格差は由々しき問題として存在する。東海道・山陽新幹線が通る都府県で山口県だけ視聴できる民間テレビ放送局が3局しかないことが良いのかどうか(他の都府県はいずれも4局以上)。山陰放送ラジオでは島根県飯石(いいし)・邑智(おおち)両郡、エフエム山陰では島根県鹿足(かのあし)郡、テレビせとうちでは井原市、中国放送ラジオでは広島県神石・世羅・山県各郡、広島エフエム放送では庄原市東城地区…というように視聴困難地域または聴取困難地域が残されている現実は良いのかどうか。中国地方最大の都市・広島市を擁する広島県においてテレビ東京系列に属する民間テレビ放送局が存在しないためにテレビ東京及びその系列局制作の番組を十分楽しめない現実は許されて良いのかどうか。テレビせとうちにおいてテレビ東京系列に属する民間テレビ放送局のない広島県では放送されている番組が流れない現実は看過して良いのかどうか。鳥取県では倉吉市、島根県では出雲市・浜田市、岡山県では津山市、広島県では呉市・東広島市・福山市、山口県では岩国市・宇部市・下関市…というように放送局の本社がない主要都市について情報を取り上げる機会が少ない現実は看過して良いのかどうか。まだまだ事例は多数あるのだが、現在のやり方や考え方ではまず解決は不可能だと考えている。現在のやり方や考え方で解決を図ろうものならまず経営破綻、最悪の場合廃業は免れないであろう。
 放送局とそこから流す自社制作番組の地域色を残し、なおかつ経営を安定させる手段とは何なのか。各地で見られる放送格差を解消する手段とは何なのか。今その答えは出てこない。方法はいくつも示せはするが決して万人満足の回答にはならない。しかし、いずれ避けては通れない問題になるのは確実であろう。その時我々は何を目にするのか。それは誰にも分からない。

(2013年〔平成25年〕5月23日追記)