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ニュースダイアリー・2019年(令和元年)7月分

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7月1日(月曜日)

佐賀県で県道路線の再編実施

(概要)

 2019年(令和元年)7月1日佐賀県告示第35号により 佐賀県道351号久間・大町線が認定され、2019年(令和元年)7月1日佐賀県告示第38号により佐賀県道268号久間・白石(しろいし)線が廃止された(区域未編入部分を含む佐賀県道351号久間・大町線のおおよその区域はこちら。佐賀県道351号久間・大町線の認定告示が掲載されている「佐賀県公報」はこちら。佐賀県道268号久間・白石線のおおよその区域はこちら。佐賀県道268号久間・白石線の廃止告示が掲載されている「佐賀県公報」はこちら)。

(コメント)

 佐賀県道351号久間・大町線は杵島(きしま)郡白石町馬洗(もうらい)/白石町馬田(うまだ)交差点で終点となっていた佐賀県道268号久間・白石線を杵島郡大町町大町/大町小学校前交差点まで延伸して発足した路線である。佐賀県公式サイトで閲覧できる「2019年(令和元年)6月定例県議会の『予算外議案等の概要』」を見ると白石町道馬田橋線と大町町道本町・馬田橋線を県道にするとあるのだが、白石町道馬田橋線は杵島郡白石町馬洗/白石町馬田交差点で佐賀県道268号久間・白石線と接続しているし、白石町道馬田橋線と大町町道本町・馬田橋線は杵島郡大町町と杵島郡白石町の境を流れる六角川に架かる馬田橋(全長:270m)で接続しているので佐賀県道351号久間・大町線は佐賀県道268号久間・白石線と白石町道馬田橋線、大町町道本町・馬田橋線を統合して発足したことが明らかになる。延伸の理由は分からないのだが、佐賀県道351号久間・大町線は終点の杵島郡大町町大町/大町小学校前交差点で佐賀県を東西に貫く幹線である国道34号線と接続することから嬉野市役所(嬉野市塩田町馬場下甲)のある嬉野市塩田地区と福岡・佐賀方面を短絡する道路の整備を推進したいことが考えられる。
 ただ、現時点で区域が決まり、供用しているのは佐賀県道268号久間・白石線だった部分だけである(佐賀県道351号久間・大町線の一部区間の区域決定告示が掲載されている「佐賀県公報」はこちら。佐賀県道351号久間・大町線の一部区間の供用開始告示が掲載されている「佐賀県公報」はこちら。2019年〔令和元年〕7月1日佐賀県告示第36号で区域決定、2019年〔令和元年〕7月1日佐賀県告示第37号で供用開始となった佐賀県道351号久間・大町線の一部区間、すなわち佐賀県道268号久間・白石線だった区間はこちら)。恐らく町道部分、すなわち白石町道馬田橋線と大町町道本町・馬田橋線になっている部分(それはこちら)の移管協議が何らかの事情で進まず、とりあえず佐賀県道268号久間・白石線だった部分だけで発足させようということになったのではないかと思われるが、町道部分の区域編入が行われ、佐賀県道351号久間・大町線が完全な姿になるのはいつのことになるのだろうか。その点が気になる。

7月12日(金曜日)

岐阜県道365号和知・兼山停車場線廃止

(概要)

 2019年(令和元年)7月12日岐阜県告示第112号により岐阜県道365号和知・兼山停車場線が廃止された(岐阜県道365号和知・兼山停車場線のおおよその区域はこちら。廃止告示が掲載されている「岐阜県公報」はこちら)。

(コメント)

 岐阜県道365号和知・兼山停車場線は加茂郡八百津(やおつ)町和知と名古屋鉄道八百津線兼山駅(可児〔かに〕市兼山(注1)。1930〜2001)を結ぶ路線であった。兼山駅は可児郡兼山町(1889〜2005)の代表駅であることや名古屋鉄道八百津線は名古屋鉄道犬山線を介して名古屋市中心部に通じる鉄道路線であること、可児市兼山地区だけでなく加茂郡八百津町和知地区(注2)に住む人が名古屋市中心部との往来に兼山駅を利用することが想定されたことから県道路線として認定されたことが考えられる。
 しかし、そもそも名古屋鉄道八百津線の終点となる八百津駅(加茂郡八百津町伊岐津志〔いぎつし〕。1930〜2001)は加茂郡八百津町中心部のある地域から離れたところに設置され、利便性が悪かったこと(注3)や沿線地域の過疎化が進展したこと、多くの利用が見込める観光資源がないこと(注4)、近くを通る国道路線、すなわち国道21号線や国道41号線、国道248号線、国道418号線の整備が進展したことなどから利用が低迷したため名古屋鉄道八百津線は合理化の波にさらされることになる。運営者の名古屋鉄道(名古屋市中村区名駅一丁目)は名古屋市中心部方面との直通列車の廃止や電化廃止、レールバスの導入(注5)を実施したのだが、それでも状況は好転せず、遂に2001年(平成13年)10月1日、名古屋鉄道八百津線は全線が廃止されてしまったのである。名古屋市中心部に乗り換えなしで行けなくなった時点で利便性は大きく損なわれ、それが利用者減少→更なる合理化→…という悪循環を招く結果になったわけであるが、大手私鉄に列せられてはいるが経営を脅かす相手(注6)が多い名古屋鉄道としては費用対効果の見込めないものは切り捨てるしかないという考えだったのだろう。
 こうして岐阜県道365号和知・兼山停車場線は存在意義を失う結果になったのだが、別々の地方自治体、すなわち加茂郡八百津町と可児市兼山地区を結ぶ路線であることから岐阜県道365号和知・兼山線に改称して存続させたほうが素人目には良いように感じる。しかし、18年近く改称しないまま存続したあげく今回廃止され、岐阜県道381号多治見・八百津線と可児市道、八百津町道に再編されたのである。なぜ岐阜県道365号和知・兼山線に改称して存続させなかったのか、詳細な事情は知る由もないのだが、恐らくこちらをご覧頂ければうかがえるように全長が1kmに満たないことや岐阜県道365号和知・兼山停車場線が通っていた兼山橋(全長:94.0m)の約1.3km南西に岐阜県道351号御嵩(みたけ)・川辺線が通る下渡橋(全長:120m)があること、その下渡橋も加茂郡八百津町和知地区(注2)と可児市兼山地区を結ぶ橋であることなどから岐阜県道365号和知・兼山停車場線を存続させる意味はなくなったと判断して可児市と加茂郡八百津町に移管する方針にしたのだろう。名古屋鉄道八百津線廃止に伴う兼山駅の営業終了で存在意義が消滅してから移管までに18年近くかかっているが、通過自治体となる可児市及び加茂郡八百津町の財政事情が厳しいことやそのために移管協議が難航したこと、移管させるのに十分な大義名分がなかったことなどが考えられる(注7)
 ちなみに岐阜県にはもう一つ岐阜県道365号和知・兼山停車場線と同じ形、すなわちある場所と営業を終了した鉄道の駅を結んでいる県道路線が存在する。飛騨(ひだ)市神岡地区東部の打保(うつぼ)地区と神岡鉄道神岡線奥飛騨温泉口駅(飛騨市神岡町東雲〔あずも〕。1984〜2006)を結ぶ目的で発足した岐阜県道484号打保・神岡停車場(注8)線がそれである。神岡鉄道神岡線奥飛騨温泉口駅は神岡鉄道神岡線が2006年(平成18年)12月1日に廃止されたことにより営業を終了しているのだが、こちらは今後どうなるのであろうか。岐阜県道365号和知・兼山停車場線と違って長大路線であることや飛騨市神岡地区で完結する路線ではあるが飛騨市は過疎化が進み、財政事情が厳しいこと、飛騨市神岡地区東部の幹線道路であることを考えると将来名称を変更して存続するのではないかと思うのだが…。

(注釈コーナー)

注1:可児市兼山、すなわちかつての可児郡兼山町は行政区域の面積が2.61平方キロメートルと小さく、発足から消滅まで一度も廃置分合を経なかったことから大字は編成されず、可児市編入後は可児郡兼山町だった地域はそのまま可児市兼山となった。また、可児郡兼山町改め可児市兼山にはいくつか小字はあり、「MapionBB」などのインターネット地図では小字名や小字境は表示されるのだが、所在地や住所の表記では小字は書かれることはない(つまり所在地や住所の表記は可児郡兼山町X番地→可児市兼山X番地となっている)。

注2:加茂郡八百津町上飯田・上牧野・野上・和知を指す。但し加茂郡八百津町上飯田はJR高山本線中川辺駅(加茂郡川辺町中川辺)、加茂郡八百津町野上は中野駅(加茂郡八百津町伊岐津志。1930〜2001)が、加茂郡八百津町上牧野は兼山口駅(可児市兼山。1930〜2001)がそれぞれ最寄駅になっており、加茂郡八百津町和知地区で兼山駅が最寄駅になっていたのは加茂郡八百津町和知ぐらいだったのではないかと思われる。

注3:そのようになったのは名古屋鉄道八百津線を建設した東美鉄道(可児郡御嵩町中。1926〜1943)の経営が厳しいために木曽川への橋梁建設を諦めたことが考えられる。
※このように経営環境が厳しいために建設費用を節減せざるを得なくなり、需要が見込める中心部や観光地を目前にして建設を打ち切り、後に廃止の憂き目に遭ったところは少なくない。中国地方でもそういう路線はいくつかあり、JR大社線(1912〜1990)や井笠(いかさ)鉄道矢掛(やかげ)線(1921〜1967)、鞆鉄道鞆鉄道線(1913〜1954)が代表的な事例である。

福山市鞆町後地の広島県道22号福山・鞆線沿線にある、鞆駅前SSと壁に記された給油所。
名称から考えて恐らく鞆鉄道鞆鉄道線鞆駅(福山市鞆町後地。1913〜1954)があった頃から存在する給油所と思われる。
この給油所から福山市鞆地区の中心部までは1km以上離れており、それが結局は仇(あだ)になってしまった。

注4:金山城跡(可児市兼山。犬山城〔犬山市犬山〕への建築物移築伝承があることで知られている山城)や蘇水峡(加茂郡八百津町錦織〔にしこおり〕・八百津)、丸山ダム(可児郡御嵩町小和沢・加茂郡八百津町八百津)が挙げられる。実は丸山ダムが建設されていた頃に名古屋鉄道八百津線八百津駅から丸山ダムの近くまで専用鉄道が敷設されていたことがあり、丸山ダム完成後に活用することが考えられても良かったのだろうが実現しないままに終わっている。
※このように既存の鉄道路線の終着駅から大規模ダム建設現場に向けて鉄道路線が敷設される例はいくつかあり、他には田子倉ダム(福島県南会津郡只見町田子倉)や小河内ダム(東京都西多摩郡奥多摩町原)で見られた。しかし、沿線に人家がほとんどないことやダムを観光資源として売り出しても鉄道利用者がどのくらいいるか疑問が残ることからダム完成後は放棄されることがほとんどである(旅客鉄道に転用されたのは田子倉ダム建設のために敷設された鉄道、すなわち現在のJR只見線ぐらいだろう)。

注5:名古屋鉄道ではこの他三河線西中金〜猿投(さなげ)間及び碧南(へきなん)〜吉良吉田(きらよしだ)間で電化廃止→レールバス導入を実施したが、そこも結局は廃止されている。
※私鉄路線では電化を廃止したところはどこも後に廃止の憂き目に遭っている。中国地方では玉野市営電気鉄道(1953〜1972)が1964年(昭和39年)に電化を廃止し、気動車での運行に切り替えたが状況が好転せず、1972年(昭和47年)に廃止されている。ちなみに日本国有鉄道(東京都千代田区丸の内一丁目。1949〜1987)→JRグループ各社が管理している路線で電化を廃止したところで廃止の憂き目に遭ったところはない(そもそもわずか8年で電化を廃止したJR福塩線府中〜下川辺間しかない)。

注6:名古屋鉄道の経営環境に大きな影響を及ぼしているものは次の通りである。
・東海旅客鉄道(JR東海。名古屋市中村区名駅一丁目)。
・トヨタ自動車(豊田市トヨタ町)を筆頭とする、愛知県内各地に本社または工場がある自動車製造会社。
・高速道路や国道路線、県道路線の整備の進展(ちなみに愛知県は下表で示す通り都道府県道路線の数は全国第4位となっている)。

(参考資料:2019年〔令和元年〕7月12日時点の都道府県道路線数上位10都道府県)

順位 都道府県名 路線数 備考
主要地方道 一般
都道府県道
合計
1 北海道 151 742 893
2 新潟県 89 453 542
3 兵庫県 97 394 491
4 愛知県 80 386 466
5 福岡県 101 354 455
6 長野県 83 319 402
7 岡山県 68 305 373 一般都道府県道の路線数と合計の路線数には鳥取県が津山市阿波(あば)字大高下と鳥取県八頭郡智頭(ちづ)町口波多を結ぶ目的で鳥取県が認定しながら岡山県が未だに存在を認めていない鳥取県道303号大高下・口波多線を含めている。
8 福島県 76 295 371
9 広島県 76 285 361
10 埼玉県 90 256 346

・郊外への大型商業施設の進出。
・自動車製造会社の存在や道路整備の進展がもたらしたモータリゼーションの進展。
・少子・高齢化や過疎化による人口の減少。

注7:こういう路線は全国各地にある。こちらで紹介した福岡県道733号筑後柳河停車場線もそれである。

注8:神岡停車場、すなわち神岡駅(飛騨市神岡町東雲。1966〜1984)というのは奥飛騨温泉口駅の日本国有鉄道時代の名称である。神岡線の運営者が日本国有鉄道から神岡鉄道(飛騨市神岡町東雲。1984〜2007)に変更された1984年(昭和59年)10月1日に奥飛騨温泉口駅に改称されている。神岡鉄道神岡線には神岡鉱山前駅・飛騨神岡駅・神岡大橋駅というように神岡が名称に入った駅がいくつもあったことを考えると岐阜県道484号打保・神岡停車場線は岐阜県道484号打保・奥飛騨温泉口停車場線に改称したほうが良かったのでは…と思うのだがなぜしなかったのだろうか。
※同じようなことは実は広島県でも見られた。広島県道241号筒賀停車場線(1969〜2009)と広島県道303号上筒賀・筒賀停車場線(1969〜2009)は国鉄可部線筒賀駅(通称:初代筒賀駅。山県郡安芸太田町中筒賀。1956〜1969)を起終点とする路線として1969年(昭和44年)5月30日広島県告示第428号により発足したのだが、その約1ヶ月後の1969年(昭和44年)7月1日にこの筒賀駅は田之尻駅(山県郡安芸太田町中筒賀。1969〜2003)に改称し、なおかつその26日後の1969年(昭和44年)7月27日に別の場所に筒賀駅(通称:二代目筒賀駅。山県郡安芸太田町中筒賀。1969〜2003)が開業したのにそれぞれ広島県道241号田之尻停車場線と広島県道303号上筒賀・田之尻停車場線に改称されることはなかったのである。そもそも初代筒賀駅が田之尻駅に改称する直前に路線認定するのはいかがなものかと思うのだが、実は国鉄可部線の可部〜加計(かけ)間(その間に初代筒賀駅→田之尻駅はある)は1968年(昭和43年)9月4日に日本国有鉄道の整理対象路線(いわゆる赤字83線)に指定されていたことや整理対象路線に指定されていた時点で加計〜三段峡間(その間に二代目筒賀駅はある)の建設は進んでいたが三段峡駅(山県郡安芸太田町柴木〔しわぎ〕。1969〜2003)以遠への延伸問題は進展していなかったこと(結局日本国有鉄道の経営再建の一環として建設放棄。JR山陰本線浜田駅〔浜田市浅井町〕まで延ばす計画だったがもし全線開業に漕ぎ着けても迂回に迂回を重ねる線形になり、広島〜浜田間を最短経路で結べなくなったことや沿線地域の過疎化が進展していたことを考えると有用な路線になり得たかどうかは疑問が残る)などから広島県としてはもうどうでも良いこととしてとらえていたのだろう。結局国鉄可部線改めJR可部線のうちの可部〜加計〜三段峡間は2003年(平成15年)12月1日に廃止され、存在意義を失った広島県道241号筒賀停車場線と広島県道303号上筒賀・筒賀停車場線は一度も改称されることのないまま2009年(平成21年)2月5日広島県告示第119号により廃止された(ちなみに広島県道241号筒賀停車場線と広島県道303号上筒賀・筒賀停車場線は広島県道303号上筒賀・津浪線と広島県道304号中筒賀・下線に再編され、全線が現在も県道として存続している)。