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中国地方の未解決凶悪事件を斬る(2014年〔平成26年〕10月6日公開・2021年〔令和3年〕11月 日加筆訂正)
(本ページをご覧頂くに当たってのお断り)
・本編は2014年(平成26年)8月から9月にかけて中国新聞朝刊で5回にわたって連載された「未解決を追う」企画とは何の関係もありません。無論便乗企画でもありません。
・本ページには自分の想像で書いた箇所があります。その点はご了承願います。
・本ページで取り上げる事件の名称は私独自で付けたものがあります。
・本ページで書いた自分の事件に関する推理はあくまでも自分がそのように考えているだけのものです。その点をご理解頂いた上でご覧頂きますようお願い致します。
・記すまでもないことですが事件の被害者の私的領域に属する事柄(氏名や住所、在籍学校名など)は原則として一切記さないことにしております。
・大変申し訳ありませんが本ページで取り上げた事件の詳細はあえてここでは触れません。もし詳細を知りたい方はインターネット百科事典「ウィキペディア」や新聞などで調べて頂きますようお願い致します。
・本ページで取り上げた事件の被害者の肉親を誹謗・中傷したり感情を害するようなことを言ったりするようなことは絶対にしないようにお願い致します。
・私に対する苦情や批判は一切受け付けません。不十分ながらも事件の被害者の肉親などの感情に配慮した上で執筆しておりますのでその点をご理解頂いた上でご覧頂きますようお願い致します。
・中国地方で発生した未解決凶悪事件について事件解決などの動きが起きた場合、内容を書き換える場合があります。
今年8月19日付中国新聞朝刊に現在中国地方には未解決の殺人事件が24件あるという記事が掲載された(注1)。残念ながら未解決殺人事件の一覧表は掲載されなかったのだが、実は今秋、すなわち9月から11月にかけて発生から5年または10年、15年の節目を迎える未解決殺人事件が4件ある。それは下表の通りである。
経過年数 | 事件名称・発生年月日 |
---|---|
5年 | ・島根県立大学女子学生バラバラ殺人事件(2009年〔平成21年〕10月26日(注2)) |
10年 | ・津山女子小学生殺害事件(2004年〔平成16年〕9月3日) ・廿日市女子高校生殺害事件(2004年〔平成16年〕10月5日) |
15年 | ・草津南(注3)ゲートボール場男性殺害事件(1999年〔平成11年〕10月16日) |
これらの事件の発生した県の報道機関(注4)では「○○殺人事件未解決のまま発生からX年」というような報道がなされることであろうし、それを見た方々は「もうあれから○年経ったのね…」とか「警察は何をしているのか」とか「まだ解決していなかったのか…」というような感情を抱くことであろう。中には被害者が自分の子供や甥・姪と同世代ということでいたたまれない思いになる方もいるかもしれない(注5)。
そこで今回の「不定期刊・きょうのトピックス」ではこれらの事件に残る問題点や疑問点、捜査を担当している警察の問題点などを紹介し、今後どのようにしていけば良いかを綴っていくことにしたい。
1 各事件に存在する問題点
不明確な容疑者の動機
津山女子小学生殺害事件・廿日市女子高校生殺害事件・草津南ゲートボール場男性殺害事件・島根県立大学女子学生バラバラ殺人事件のいずれにも言えることはなぜ容疑者は被害者を殺害するに至ったのかがはっきりしないということである(容疑者が検挙されていない以上明らかになるわけはないのだが)。それぞれの事件について考えられる動機を記すと下表の通りになる。
事件名 | 考えられる動機 |
---|---|
島根県立大学女子学生バラバラ殺人事件 | ・被害者に対するストーカー行為。 ・被害者に対する恨み。 ・強姦。 ・無差別殺人。 ・快楽殺人。 ・交通事故(ひき逃げ)の隠蔽(いんぺい)。 |
津山女子小学生殺害事件 | ・物盗りを目的とした住居侵入。 ・被害者または家族に対する恨み。 ・被害者へのいたずら目的での住居侵入。 |
廿日市女子高校生殺害事件 | ・被害者に対するストーカー行為。 ・被害者またはその家族に対する恨み。 ・物盗りを目的とした住居侵入。 ・被害者またはその家族への強姦目的での住居侵入。 |
草津南ゲートボール場男性殺害事件 | ・不良少年によるいわゆるホームレス狩り。 ・屋外生活者間でのいざこざ。 ・物盗り。 |
容疑者が検挙されていないのだから上表で示した通り考えられる動機はいくつも浮かび上がる。この動機が絞り切れないことが捜査方針を固め切れなくし、ひいてはいわゆる迷宮入りに至る原因になっていくわけであるが、更に厄介なのは島根県立大学女子学生バラバラ殺人事件に見られるように我々の理解をはるかに超えた事件まで起きているということである。この点からも捜査担当者の苦悩がうかがい知れるし、更に記すなら現在の捜査手法が果たして良いのかどうか考えるべき時期に差しかかっているとも言えるわけであるが、容疑者が利口なのか、それとも警察がバカなのか。門外漢たる私には分からない。
目撃情報の少なさ
四つの事件のいずれにも言えることは目撃情報が少ないことである。事件現場の状況(島根県立大学女子学生バラバラ殺人事件は被害者が拉致〔らち〕されたと思われる場所、他の三つの事件は被害者が殺害された場所)を記すと下表の通りになる。
事件名 | 事件現場の状況 |
---|---|
島根県立大学女子学生バラバラ殺人事件 | ・夜間の人通りはものすごく少ない市街地。 ・帰宅路の途中からは街灯も少ない山道になる。 ・事件は夜間に発生。 |
津山女子小学生殺害事件 | ・閑静な住宅街。 ・事件は白昼に発生。 |
廿日市女子高校生殺害事件 | ・近くに交通量の多い幹線道路がある住宅街。 ・事件は白昼に発生。 |
草津南ゲートボール場男性殺害事件 | ・広島市郊外の閑静な住宅街の中の公園。 ・事件現場は公園の中にあるゲートボール場の休憩室。 ・事件は早朝に発生。 |
四つの事件のうち容疑者の似顔絵が公開されているのは廿日市女子高校生殺害事件だけであることを考えると目撃情報の少なさがうかがえるのではないかと思うのだが、容疑者の似顔絵が公開されている廿日市女子高校生殺害事件でさえ未だに容疑者の特定に至っていないことを考えると一般市民の関心の薄さや一般市民の警察に対する不信感(もしや…と思って警察に訴えたのにきちんと捜査してくれないと疑わせる状況があること(注6))もあるのではないかと思いたくなってくる。記すまでもないが事件発生から時間が経過すれば事件の一部始終や容疑者、容疑車両を目撃した方の記憶の薄化(注7)や転居、逝去、病気などで有力な情報が得にくくなる状況が生じるため時間との勝負を警察は強いられるわけであるが、どのようにすれば事件解決に直結する有力な情報は入ってくるのだろうか。
消極的だと感じたくなる捜査活動
2011年(平成23年)8月に兵庫県立図書館(明石市明石公園)に行った時のことであるが、国道175号線の沿線にある交番(注8)の掲示板に廿日市女子高校生殺害事件の容疑者の似顔絵が掲載されたポスターが貼られてあるのを目にした。廿日市女子高校生殺害事件の容疑者の似顔絵が掲載されたポスターは更に遠くの北海道や福井県でも貼られているようなのだが、(被害者の遺族の意向もあるのではないかと思われるのだが)事件現場付近には情報提供を求める看板が一切設置されていない一方で何としてでも事件を解決させたいという広島県警察本部(広島市中区基町)及び廿日市警察署(廿日市市本町)の熱い思いを感じることができる(その熱い思いが成就しないことがもどかしいところであろうが…)。
その一方でどうかと思っているのが津山女子小学生殺害事件を捜査している岡山県警察本部(岡山市北区内山下二丁目)と津山警察署(津山市林田〔はいだ〕)である。その捜査の消極ぶりを挙げると次の通りになる。
・被害者の自宅をうかがっていた人物の目撃情報があるらしいが大まかなものでも良いから似顔絵なり全身像のイラストなり作成・公開すれば良いのにそれをしていない。
・以前は情報提供を求めるポスターが岡山県内各地で見られたのに最近はそういうポスターを作成している様子がない。また、ポスターも見かけない。
・捜査特別報奨金制度の適用を求める声がある(注9)が適用への動きが全く見られない。
当然のことながら絶対に事件を解決させ、被害者の無念を晴らしたいという思いは抱いていることだろうし、地元の報道機関もきちんとこの事件について報じている。なのになぜ捜査は消極的になっているのだろうか。私は次のように考えている。
・津山警察署は主婦失踪事件(2002年〔平成14年〕6月3日発生。重要参考人の男女はいずれも死亡したため迷宮入りしている)も抱えており、どちらが重大事件なのかという一般市民にとってはどうでも良いことで警察署内部が分かれているからではないのか。
・岡山県警察本部は岡山市中区での男子小学生失踪事件(2000年〔平成12年〕10月20日発生)や賀陽幼児失踪事件(2001年〔平成13年〕10月25日発生)も抱えており、どれが重大事件なのかという一般市民にとってはどうでも良いことで警察本部内部が分かれているからではないのか。
・捜査特別報奨金制度を適用した事件で解決したものは制度開始から7年半近く経った今もそれほど多くはないため効果はないのではないかと見ているからではないのか。
・岡山県警察本部の中にいくら熱心に捜査をしても解決しないものは解決しないというような冷めた見方をしている職員が多数いるからではないのか。
・岡山県は1990年代半ばからひどい財政難に陥っており、それで無駄なものには費用をかけたくないという思惑が生じたからではないのか。
岡山県は中国・四国地方随一の交通の要衝となっている岡山市を抱えているし、多くの人口を擁する京阪神地方との往来も高速道路の開通で容易にできるようになった。また、山地も多い。つまり、そういう地理的条件に即した警察の在り方が模索されてしかるべきはずである。しかし、(後で詳しく書くが)外から見ていて本当にしっかりやっているのかと思いたくなることばかりである。果たしてそういう状況で良いのだろうか。岡山県警察本部に突き付けられた課題はあまりにも重い。
岡山県南西部のある交番の掲示板。掲示板のどこにも津山女子小学生殺害事件の情報提供を呼びかけるポスターはない。
広島県南東部のある交番の掲示板。県内で発生した未解決凶悪事件の情報提供を求めるポスターまたはチラシがいくつも貼られている。
福山市中心部の商店街にある大衆食堂の脇に貼られている廿日市女子高校生殺害事件の容疑者の似顔絵が掲載されたポスター
2 各事件に存在する疑問点
他の未解決凶悪事件との関係はないのか
何年か前、山陽新聞社公式サイトで津山女子小学生殺害事件発生から○年経過したという記事が掲載されていたのを見たのだが、その中に「津山女子小学生殺害事件の1ヶ月後に起きた廿日市女子高校生殺害事件も視野に入れて捜査している」と書かれてあったのを見て「何を考えているのか」と思ったことがある。被害者の年齢も違うし殺害方法も違うしましてや津山市と廿日市市は200km以上離れている。こんな荒唐無稽な話はあるのかと思ったのである。
しかし、高速交通網が発達した現代は想定外の展開が起きる事件が起きる可能性を多分にはらんでいる。だから荒唐無稽と決め付けることはできなくなっている。こちら、すなわち「SUNDAY TALK2011」第42回「三つの疑問〜ある殺人・死体遺棄事件から〜」でも触れたのだが、現に首都圏の駅のコインロッカーで見つかったバラバラ遺体のうち見つからなかった頭部が広島県内のある民家で見つかったとか埼玉県在住の女性が福岡県内の臨海埋立地で全裸遺体で見つかったとか大阪府在住の女性の遺体が栃木県内の道端に捨てられていた旅行用キャリーケースの中から見つかったとかいうような事件が起きているのである。そのように考えれば一見無関係に見えるような事件でも実は…ということはあり得るのである。つまり、捜査は広域的視野に立って行わないと袋小路に陥る恐れがあるというわけである。
(荒唐無稽なことを書くなと批判されそうであるが)私としては次に挙げる事件についてもう少し広域的視野に立って捜査を行ってはどうかと考えている。
・津山女子小学生殺害事件。岡山県の東隣にある兵庫県では2006年(平成18年)9月28日にたつの市で当時小学4年生の女子児童が被害に遭った殺人未遂事件(情報提供を求めるページはこちら)が、2007年(平成19年)10月16日に加古川市で当時小学2年生の女子児童が被害に遭った殺人事件(情報提供を求めるページはこちら)がそれぞれ起きており、いずれも迷宮入りしている。犯行現場や殺害方法などに違いはあるが、津山市とたつの市は国道179号線で、たつの市と加古川市は国道2号線でそれぞれ結ばれており、関連があるのではないかと感じたくなる(注10)。
・島根県立大学女子学生バラバラ殺人事件。事件発生の約4ヶ月後の2010年(平成22年)3月6日(注11)に起きた博多湾女性会社員バラバラ殺人事件(情報提供を求めるページは2012年〔平成24年〕12月に捜査特別報奨金制度の適用を打ち切った時点で閉鎖しており、現存しない〔インターネット検索でも探し出せない〕。福岡県警察本部〔福岡市博多区東公園〕にページの再設置を求める意見を送ったことがあるが未だに聞き入れられておらず、福岡県警察本部は何を考えているのかと思っているところである)との関連を疑っている。被害者の年齢や遺体の遺棄場所など違いはあるし、島根県立大学女子学生バラバラ殺人事件については遺体遺棄場所から1995年(平成7年)頃広島県内で電話帳を配布する際に使用されたビニール袋が見つかっているので容疑者は広島県内に住んでいるのではないかと考える方が少なくないが、どちらの事件も被害者は夜忽然と姿を消している点や島根県立大学女子学生バラバラ殺人事件の被害者の遺体発見現場(広島県山県郡北広島町にある臥龍山〔刈尾山とも称する。標高:1,223.2m〕)の近くを浜田市と福岡市を自動車で往来する際に通る可能性がある点(注12)、山に遺体を捨てたところすぐに見つかったために今度は海に捨てれば良いだろうと考え、実行に移したのではないかと思われる点、そして容疑者は1995年(平成7年)頃には広島県に住んでいたが現在も広島県に住んでいるとは限らない点から関連があるのではないかと考えている。
無論これは私の想像であり、真相を突いたものではない。捜査担当者はこの文を見ても真剣に受け止めはしないであろう。しかし、事件に想定外は存在しない。もうそれは多くの事件で見られたことである。今までのやり方に固執するか。それとも想定外の事態を念頭に置いて捜査を展開するか。今捜査のやり方が問われようとしている。
捜査に非協力的な人はいないのか
残念ながら我々一般市民の中には殺人事件の被害者の関係者に対して辛辣(しんらつ)な考えを持つ方がいる。それだけならまだしもそのことを理由に捜査に協力しない考えを持つ人もいる。廿日市女子高校生殺害事件はその典型的な事例であるが、もし被害者の父親の考え方(顔を出さないことを条件に報道機関の取材に応じること)が気に入らなくて容疑者を知っているにもかかわらず一切言おうとしないというのならそれは許されざる問題だと私は考える。確かにそういう考えを持つ人間の気持ちは理解できないわけではないのだが、その態度が事件発生地周辺の住民の恐怖と不安を持続させる結果になっているからである。もし自分の住んでいるところで同じような事件が起きたら同じ態度をとるのだろうか。そういう考え方は捨て、知っていることはきちんと訴えるべきだと思う(なお、本サイトから廿日市女子高校生殺害事件の被害者の父親のブログへのリンクは貼らないことにしている。被害者の父親に対する辛辣な意見、言い換えれば誹謗・中傷に当たる意見を書き込む方がいる恐れがあるからである。また、事件現場を訪れて被害者の父親と思しき男性の写真をこっそり撮り、インターネットで公開したり誹謗・中傷に当たるようなコメントを付けたりするようなことも絶対にしないで頂きたい。腹立たしく思う気持ちは理解できないわけではないがそういう独り善がりな行動で人生を台無しにして頂きたくないと私は考えるからである)。
まあ他にも「容疑者を知っているが後ろ暗い問題があるので…」とか「警察に訴えてもろくな捜査をしてくれないので…」といった理由で捜査に非協力的な態度をとる人はいるのだが、私として問題にしたいのは警察が一般市民からの情報をきちんと受理し、それを元に捜査しているのかということである。警視庁(東京都千代田区霞が関二丁目)と各道府県警察本部の公式サイトの未解決事件の情報提供を求めるページを見ると「捜査結果の報告は原則として致しません」という断り書きが付されているものが少なくないのだが、うがった見方をすれば「我々はあなたから話を聞いてもろくな捜査は致しません」と言っているように受け取られかねない。現に自分が過去にそういう経験をしているのだが、やはりきちんと捜査していることを示す必要があるのではないのだろうか。もしそのようにすれば事件の有力な手掛かりとなる情報がもっと多く寄せられるようになり、事件解決に向けて動き出すようになるのではないかと私は思うのだが…。
3 各県の警察本部が抱える問題点
過去の凶悪事件を教訓として生かせなかった島根県警察本部
島根県のうちの石見地方(大田〔おおだ〕・江津〔ごうつ〕・浜田・益田各市及び邑智〔おおち〕・鹿足〔かのあし〕両郡)は地域によって差はあるが県庁所在地の松江市よりも広島市との繋がりが強い。1970年代以降道路事情が良くなってきたことからその繋がりは更に強まっている。
そうなってくると問題になるのは山間部の多い石見地方で広島県在住の人間による殺人・死体遺棄事件が起きる可能性が高まることである。そしてそれは現実のものになってしまった。1996年(平成8年)8月のある日、益田市郊外の国道191号線の崖下で身元不明の若い女性の他殺遺体が発見されるという事件が起きたのである。捜査を担当した島根県警察本部(松江市殿町)や益田警察署(益田市東町)は女性の遺留品(衣服や装飾品など)を公開して情報提供を呼びかけたのだが、なかなか身元判明に至らなかった。ちょうどその頃広島市及びその周辺では男性タクシー運転手による女性が被害に遭った連続殺人事件(注13)が起きており、関連が疑われたこともあった。
現在島根県警察本部の公式サイトを見てもこの事件の情報提供を求めるページはない。迷宮入りしたのではなく、発覚から2ヶ月後に被害者の身元が判明し、容疑者も検挙されたからである。当時の新聞報道によると被害者・容疑者とも広島県在住の人間であることや被害者の家族は捜索願を警察に出していなかったことが記されているのだが、この事件は島根県石見地方と広島市との繋がりの深さを示したと言える。
だが、話はこれで終わりではない。私はこの事件以前にも島根県石見地方と広島市との繋がりの深さを示した事件があったのではないかと考えている。それは益田市郊外の国道191号線の崖下で若い女性の他殺遺体が発見される事件が起きる1ヶ月ほど前に公訴時効が成立した、1981年(昭和56年)7月に邑智郡邑南(おおなん)町(注14)で起きた女子小学生殺害事件である。この事件は発生後間もなく容疑者は検挙されたのだが、裁判の結果冤罪事件となったのである。冤罪が確定したのは1990年(平成2年)春のことだったから公訴時効成立までまだ6年以上時間は残されていたのだが、捜査を担当した川本警察署(邑智郡川本町川本)が再び捜査に乗り出すことはなかったという。職員がほとんど入れ替わっていたことや新たな証拠が出てくるわけもなかったことなどが再捜査に消極的になった理由だと思われるのだが、私はそれで果たして良かったのかと感じているところである。というのも、邑智郡邑南町での女子小学生殺害事件と相前後して、広島市郊外では女子小学生が何者かに拉致される事件が2件起きていたからである。1979年(昭和54年)5月に廿日市市内(注14)の漁港に家族で釣りに来ていた当時小学2年生の女子小学生が何者かに拉致され、翌1980年(昭和55年)9月に現在の広島・岩国道路大野インターチェンジ(廿日市市大野)近くの山中で白骨遺体で見つかったという殺人・死体遺棄事件と、1983年(昭和58年)10月に広島市安佐北区でジョギングに出かけた当時小学校5年生の女子小学生が何者かに拉致され、30年以上経った今も見つかっていないという事件がそれであるが、この三つの事件の現場を見ていて私はある事実に気付いたのである。それは「事件はいずれも広島市中心部に通じる幹線道路のそばで起きている」ということである。どういうことか説明すると次の通りになる。
・邑南の事件…国道261号線(広島市中区と江津市を結ぶ国道路線)
・廿日市の事件…国道2号線(広島市中心部を貫通する国道路線)
・安佐北の事件…広島県道70号広島・中島線(広島市中心部と広島市安佐北区東部〔高陽・白木地区〕を短絡する主要地方道路線)
三つの事件は発生の時間帯が異なる(邑南…深夜、廿日市…昼間、安佐北…早朝)し、被害者の年齢(学年)も異なる。しかし、いずれも広島市中心部に通じる幹線道路のそばで起きているという事実がある。単なる偶然なのか、それとも連続事件なのか。状況さえ整えば連続女子児童誘拐・殺人事件として取り沙汰されたかもしれない。
しかし、邑南の事件は再捜査されなかったし、廿日市の事件は忘れ去られ、恐らく1994年(平成6年)5月(注15)に迎えたであろう公訴時効の成立は全く報道されなかった。安佐北の事件は情報提供を呼びかける看板が広島県道70号広島・中島線のそばに設置されていたのを見たことがあるが今はどうなっているかは分からない。邑南の事件が起きた当時、島根県では松江市郊外で結婚したばかりの女性が殺害される事件(未解決)も起きており、県の東と西で起きた二つの凶悪事件の早期解決に対して焦っていたことも考えられるのだが、拙速すぎる捜査さえなかったらどうなっていたのか。邑南の事件と廿日市の事件について解決まで諦めないという姿勢を見せていたらどうなっていたのか。本当に悔やまれることばかりである。
こういう凶悪事件が起きなかったとしても島根県警察本部は石見地方と広島市との繋がりの深化は知っていたはずであるし、山間部の多い石見地方で広島県在住の人間による殺人・死体遺棄事件が起きる可能性も認識できたはずである。しかし、島根県警察本部はどういう対策を打ってきたのだろうか。その結果が島根県立大学女子学生バラバラ殺人事件という迷宮入り事件に繋がってしまったのではないか。「石見地方は人口は少ないから…」とか言うのだろうが、軽んじて良いはずはない。邑南の事件は致し方ないとしても益田市郊外での死体遺棄事件が解決した時点で考慮していれば…と思わずにはいられない。
消極的な態度が垣間見える岡山県警察本部
前にも書いたように岡山県は中国・四国地方随一の交通の要衝となっている岡山市を抱えていることや多くの人口を擁する京阪神地方との往来が高速道路の開通で容易にできるようになったこと、山地が多いことといった地理的条件を有している。そうなれば広域捜査を必要とする事件がいつ起きてもおかしくはないということになる。しかし、その岡山県を管轄区域とする岡山県警察本部は何をしているのかと思いたくなることが多い。そのように思った事実を挙げると次の通りになる。
・1970〜1980年代に岡山・倉敷両市では新生児の死体遺棄事件が相次いだが、そのほとんどが未解決に終わっていること。当時は駅などにあるコインロッカーに新生児の遺体を遺棄する事件が各地で起きており、岡山県だけの事件ではなかったのだが、山陽新幹線新大阪〜岡山間開業で岡山市が交通の要衝としての地位を高めたことを考えると他県に住む人間が岡山市や倉敷市まで来て遺体を遺棄したことは十分考えられるところである。社会問題化した事件が皮肉にも岡山県警察本部が広域的視野を持つべき契機になったわけであるが、当時どれだけの職員が真剣にこのことを考えたのだろうか。
・1982年(昭和57年)7月に倉敷市玉島地区で当時5歳の幼児が失踪し、約3年半後に白骨遺体で見つかった事件について、ろくな捜査をしなかったこと。当時島根県や広島県で女子小学生が失踪し、無残な遺体となって発見された事件が相次いでいたことを考えると真剣にとらえ、きちんと捜査していれば遺体発見まで時間がかかることはなかったのではないか。捜査を担当した玉島警察署(倉敷市玉島)は転落死として処理したのだろうが、白骨遺体から死因を突き止めることは困難であることを考えると殺人・死体遺棄事件(但し死体遺棄罪については遺体発見時点で公訴時効が成立している)も視野に入れるべきではなかったのだろうか。この幼児の遺族がどのようにとらえたかは分からないが、釈然としない思いを抱いたまま今もどこかで生きているのではないかと考えるとどうなのかなと思いたくなる。
・1991年(平成3年)9月のある日の山陽新聞朝刊にその年の7月21日に三好市井川町井内西(注14)の徳島県道140号大利・辻線の待避所に身元不明の若い女性の他殺焼死体が遺棄されてあった事件について不審な岡山ナンバーの自動車の目撃情報があったとの記事が被害者の復顔像とともに掲載されていたのに真剣に受け止めなかったこと。この事件は翌1992年(平成4年)4月に復顔像をなぜか作り直しており、その際も山陽新聞は報じているのだが、被害者の遺体を焼く際に遺体にかけたエンジンオイルが神戸市内のホームセンターで購入されたものであることが判明したことや不審な神戸ナンバーの自動車の目撃情報があったことから不審な岡山ナンバーの自動車の目撃情報はなかったことにされてしまった。結局この事件は被害者の身元も容疑者も判明せず2006年(平成18年)7月21日午前0時に公訴時効が成立してしまうのだが、岡山県民の多くが読む山陽新聞のこの記事を見て岡山県警察本部は岡山県内の歯科医院を捜査したのか疑問が残る結果になった。「遺体を焼く際にかけたエンジンオイルは神戸市内のホームセンターで買ったものだろう。よって被害者も容疑者も神戸市及びその周辺の人間だろう。岡山県は関係ない。捜査する必要もない」と考えたのかもしれないが、もし岡山県警察本部の職員が山陽新聞のこの記事を真剣に受け止めていたら事件はどのような展開を見せたのだろうか。もし本当に被害者が岡山県在住の人間だったとしたらどうするつもりだったのだろうか。遺体を焼く際にかけたエンジンオイルは神戸市内のホームセンターで購入されたものであるという事実(もしかしたら岡山県在住の人間が偽装工作として神戸市までわざわざ買いに行ったのかもしれないし…)にとらわれて捜査をしっかり行わなかったことは悔やまれてならない(注16)。
・1994年(平成6年)2月に真庭市(注14)で男性の白骨遺体が発見された事件について、殺人・死体遺棄事件としての積極的な捜査が見られなかったこと。遺体を元に作成した似顔絵が岡山県警察本部の公式サイトに掲載されていたこともあったのだが今は削除されている(もっとも殺人・死体遺棄事件だったとしても2009年〔平成21年〕2月までに公訴時効が成立してしまい、そこで削除される運命にあったのだが…)。
・JR山陽本線高島駅(岡山市中区清水二丁目)のそばに2000年(平成12年)春頃発生した殺人事件の情報提供を呼びかける看板があるのを見かけたのだが、岡山県警察本部の公式サイトにはこの事件の情報提供を求めるページがないこと。岡山県警察本部としては重要未解決事件として位置付けているはずであるが、なぜ情報提供を求めるページを設置しないのだろうか。
・2000年(平成12年)10月に岡山市中区(注14)で当時小学校2年生の男子児童が失踪した事件について、以前は岡山県警察本部の公式サイトにはこの事件の情報提供を求めるページがあったのにいつの間にか削除してしまったこと。この男子児童が通っていた小学校の公式サイトを見ると今でも情報提供を求めるページがあるのだが、なぜ削除してしまったのだろうか。
・(前にも記したが)津山女子小学生殺害事件について消極的な捜査が目立つこと。不審な人物の目撃情報はあるらしいが大まかなイラストすら公開していないし捜査特別報奨金制度の適用を求める声も無視したままである。更に新しい情報提供を求めるポスターも作成しておらず、「岡山県の警察施設(警察署・交番・駐在所・分駐所など)の掲示板を見ても廿日市女子高校生殺害事件と島根県立大学女子学生バラバラ殺人事件の情報提供を求めるポスターしか見かけない。自県の事件はどうしているのか」という皮肉を言う人もいる始末である。「主婦失踪事件との兼ね合いがあるから」とか「捜査特別報奨金制度の効果を見極めたいから」などと言うのだろうが事件発生からどれだけの時間が経過したのか分かっているのだろうか。
・最近警視庁と各道府県警察本部の公式サイトでは朝鮮民主主義人民共和国に拉致された可能性が否定できない方々の情報提供を求めるページを設置しているが、中国地方では岡山県警察本部だけ未だに設置していないこと。岡山県でもそういう疑いがある方はいくらかいるのは特定失踪者問題調査会のサイトをご覧頂ければうかがえることであるが、関係者の了承が得られないのだろうか。もしそうならその旨を岡山県警察本部公式サイトに明記してはどうであろうか。
そういう中で2012年(平成24年)秋、2001年(平成13年)春に兵庫・徳島両県で男性2人(父と息子)を殺害した事件の容疑者が岡山市中心部で暮らしていたことがこの容疑者が亡くなってから判明するという事件が起きた。まあ長期逃亡の指名手配容疑者が亡くなって初めてその消息が判明したという話はこれまでにもいくつかあったし顔貌などが変われば素人目には判別がつかなくなるから致し方ないこととは言えるのだが、「何をやっているのか」と岡山県警察本部に対して批判する声が多数あったという。これで岡山県警察本部も考えを改めれば良いわけであるが、残念ながらその兆しは見えてこない。
繰り返すが岡山県は中国・四国地方随一の交通の要衝となっている岡山市を抱えていることや多くの人口を擁する京阪神地方との往来が高速道路の開通で容易にできるようになったこと、山地が多いことといった地理的条件を有している。それならどういう警察の在り方を目指すべきなのか。今一度確認すべき時期が来たように感じる。
急激な都市化に対応することが遅れた広島県警察本部
全国各地で展開されたいわゆる平成の大合併と並行して、警視庁と各道府県警察本部では警察署の再編を実施した。中国地方各県について警察署の再編状況を見ると下表の通りになる。
県名 | 実施年月日 | 内容 | 備考 |
---|---|---|---|
鳥取県 | 2005年(平成17年)4月1日 | 溝口警察署を黒坂警察署に統合する。 | |
岩美警察署を鳥取警察署に統合する。 | |||
島根県 | 2004年(平成16年)11月1日 | 西郷警察署を隠岐の島警察署に改称する。 | |
2005年(平成17年)4月1日 | 大社警察署と平田警察署を出雲警察署に統合する。 | ||
掛合(かけや)警察署と木次(きすき)警察署、三成警察署が統合して雲南警察署が発足する。 | |||
温泉津(ゆのつ)警察署を大田警察署に統合する。 | |||
岡山県 | 2004年(平成16年)11月1日 | 牛窓警察署を瀬戸内警察署に改称する。 | |
2005年(平成17年)3月7日 | 瀬戸警察署を赤磐警察署に改称する。 | ||
2005年(平成17年)3月22日 | 久米警察署を美咲警察署に改称する。 | ||
2005年(平成17年)3月31日 | 勝山警察署を真庭警察署に改称する。 | ||
勝英警察署を美作警察署に改称する。 | |||
2006年(平成18年)4月1日 | 矢掛警察署を井原警察署に統合する。 | ||
御津警察署を岡山北警察署に改称する。 | |||
2009年(平成21年)4月1日 | 岡山東警察署を岡山中央警察署に改称する。 | ||
西大寺警察署を岡山東警察署に改称する。 | |||
広島県 | 2007年(平成19年)4月1日 | 吉田警察署を安芸高田警察署に改称する。 | |
可部警察署を安佐北警察署に改称する。 | |||
広島北警察署を安佐南警察署に改称する。 | |||
甲山警察署を世羅警察署に改称する。 | |||
西条警察署を東広島警察署に改称する。 | |||
加計警察署を山県警察署に改称する。 | |||
2008年(平成20年)4月1日 | 福山東警察署の管轄区域の一部と府中警察署の管轄区域の一部を管轄区域とする福山北警察署が設置される。 | ||
2009年(平成21年)4月1日 | 木江(きのえ)警察署が廃止され、管轄区域が竹原警察署と広警察署に分割される。 | ||
2013年(平成25年)9月2日 | 広島西警察署の管轄区域の一部を管轄する佐伯警察署が設置される。 | ||
山口県 | 2003年(平成15年)4月21日 | 徳山警察署を周南警察署に改称する。 | |
新南陽警察署を周南西警察署に改称する。 | |||
2005年(平成17年)4月1日 | 本郷警察署を岩国警察署に統合する。 | ||
2006年(平成18年)4月1日 | 玖珂西警察署を岩国西警察署に改称する。 | ||
下関水上警察署を下関警察署に統合する。 | |||
周南西警察署を周南警察署に統合する。 | |||
2007年(平成19年)4月1日 | 豊田警察署を長府警察署に統合する。 | ||
江崎警察署を萩警察署に統合する。 | |||
阿東警察署を山口警察署に統合する。 | |||
2008年(平成20年)4月1日 | 彦島警察署を下関警察署に統合する。 | ||
2008年(平成20年)5月12日 | 小郡警察署を山口南警察署に改称する。 | ||
2009年(平成21年)4月1日 | 岩国西警察署を岩国警察署に統合する。 | ||
厚狭(あさ)警察署と小野田警察署が統合して山陽小野田警察署が発足する。 | |||
大島警察署と平生(ひらお)警察署を柳井警察署に統合する。 |
中国地方の各県の警察署の数は鳥取県が11から9に、島根県が17から12に、岡山県が23から22に、山口県が27から16にそれぞれ減らしているのに対し広島県は27から28に増えている。広島県自体の人口は減少しているのだが二大都市である広島市と福山市の治安向上が課題になっており、それで福山北警察署(福山市神辺町新道上三丁目)や佐伯警察署(広島市佐伯区倉重一丁目)が設置されたというわけである。
福山北警察署(左)と佐伯警察署(右)
だが、警察署の設置はもっと早く行うべきだったという声は少なくない。というのも、急激な都市化に警察行政が追い付いていない面が多々見られたからである。それは次の事実に示されている。
・広島市及びその周辺(特に広島市と呉市、廿日市市(注14))では1960〜1980年代に迷宮入りしてしまった殺人事件がいくつも起きた。
・福山市では1990年代後半にある小学校に勤務する職員の賞与を狙った強盗事件(未解決)など凶悪事件が多発し、中国新聞朝刊の社説でそのことが取り上げられる事態になった。
・福山東警察署(福山市三吉町南二丁目)はかつて南北に細長い管轄区域を有していたが、都会から過疎地まで多様な地域を管轄していた上に1970年代以降福山市北部地区の都市化が進展したことで重い負担を強いられる結果になった。
・佐伯警察署の管轄区域の一部である広島市佐伯区五日市地区、すなわちかつての佐伯郡五日市町(1911〜1985)は人口が5万人を超えても市制施行に踏み切らず、結果自治体としての町村としては日本で最も多くの人口を有することになったが、そういう状況にあっても佐伯郡五日市町だけを管轄区域とする警察署の設置は考えられず、廿日市警察署→広島西警察署(広島市西区商工センター四丁目)に重い負担を強いる結果になった。
「急激な都市化」といえば74人の犠牲者を出した今年8月20日未明の広島市北部における集中豪雨を思い起こす方が多いのではないかと思うのだが、警察行政にとっても決して良い結果をもたらさなかったことがうかがえるのではないのだろうか。確かに財政事情という重い問題はあったが、もう少し早く警察署再編が行われていたら…と思いたくなる。
非協力・手抜き・怠慢はないと言えるのか
ここまで島根県警察本部・岡山県警察本部・広島県警察本部それぞれの問題点を書いてきたわけであるが、その他の問題点を挙げると次の通りになる。
・小さいながらも重化学工業の工場があるため財政事情が良好で、独立を貫いている山口県玖珂郡和木町には和木町全域を管轄する駐在所(岩国警察署和木駐在所〔玖珂郡和木町和木一丁目〕)があるのだが、2011年(平成23年)3月のある日、用があってそこに入ったところ中には全く廿日市女子高校生殺害事件の情報提供を求めるポスターがないのに気付いた。隣接する岩国市内の警察施設には貼られてあったのは見たことがあるのだが、いくら幹線道路から外れた場所にある駐在所(それでも広島県大竹市と玖珂郡和木町を結ぶ町道のそばにあるのだが)とはいえこれはどうなのかと考えてしまった。玖珂郡和木町は広島県と山口県を往来する時通過する機会の多い町(注17)であるし、もしかしたら廿日市女子高校生殺害事件の容疑者は山口県に住んでいる人間かもしれない。岩国警察署和木駐在所の非協力的な態度が事件を迷宮入りに追い込んだということはないだろうがもう少し広域的視野に立って物事を考えたらどうなのかと考えたくなった。
・呉市中心部の北方にそびえる灰ヶ峰(標高:736.8m)の山頂付近で女性とその子供と思われる幼児(性別不明)の白骨遺体が見つかった事件(2000年〔平成12年〕2月28日)で捜査を担当している広警察署(呉市広大新開一丁目)は殺人・死体遺棄事件として捜査すべきだったのに過去に呉市内で未解決の殺人事件が頻発したことに辟易したのかその姿勢が見られなかった。ようやく女性の復顔像を公開したのは死体遺棄罪の公訴時効が成立した後の2003年(平成15年)5月のことだったのだが、当時の報道によると中国地方各地に復顔像を掲載したポスターを貼るとあった。ところが、鳥取県や山口県の警察施設では全く見かけなかった上、広島県でも福山東警察署管内(現在の福山東警察署の管内と、現在は福山北警察署の管内になっている福山市加茂・神辺・御幸・山野各町及び神石郡が当時の管内となる)では全く見かけなかった。なぜ鳥取県警察本部(鳥取市東町一丁目)や山口県警察本部(山口市滝町)、福山東警察署が非協力的な態度をとったのかは分からないが、もしこの母子がこれらの管内に住む人間だったとしたらどうするつもりだったのだろうか。記すまでもないが最も問題なのは広警察署の態度なのだが…。
・最近は警視庁や各道府県警察本部の公式サイトの未解決事件の情報提供を呼びかけるページに「捜査結果の報告は原則として致しません」という断り書きが記されるようになったが、なぜできないのかきちんとした説明がないのがどうかと思う。公務員の守秘義務や捜査情報の漏洩防止、情報悪用の防止、私的領域の擁護などいろいろ理由はあるのだろうが中には「きちんと捜査をやってくれているのだろうか」とか「長年会っていない友人が心配で訴えたのにその気持ちをなぜ分かってくれないのか」と思う方もいるかもしれない。「これは警察の決まりです。理解して下さい」と上から目線で臨むのではなく、なぜそうなのかをきちんと説明する考えがあっても良いのではないかと思うのだがどうであろうか。
・重要未解決事件なのに何があったのかは分からないが情報提供を呼びかけるページが簡素だったりある時期をもって公開を取りやめたりするものがあるのはどうかと思う。(中国地方の事件ではないが)世間を騒がせた博多湾女性会社員バラバラ殺人事件はそのどちらにも当てはまった代表的な事例であるが、警察にとってなかったことにしたい事件なのだろうか。被害者の遺族がどのような思いでいるのか考えたことはあるのだろうか。一般市民の恐怖感や不安感を考えたことはあるのだろうか。こういうことをすることは敗北を認めるのと同じことであり、犯罪者に屈したのと同じことでもある。殺人事件については公訴時効は撤廃されたのだから「我々はもう二度とこういう悲劇を繰り返さないように頑張っています」とか「我々は事件解決に向けて日夜努力しています。犯人よ、いつかお前を捕まえ、法の裁きにかけてやるから覚悟しておけ!!」という熱い思いを見せて欲しい。
・「最寄りの警察署」とは何なのかと思ったことがある。他県で起きた殺人事件の身元不明の被害者の復顔像が大学時代の後輩に似ているということを私の住んでいる地域を管轄する福山東警察署に訴えたのに数日後私の家に電話をかけてきて「大変申し訳ないのですが自分で○○警察署(その事件を捜査している警察署)に伝えて頂けませんでしょうか。何度か電話をしたのですが一切繋がりませんでした」といって私の思いを一蹴する態度に出たことが未だに納得できない(更にいつ電話をかけたのかを明らかにせずに「何度か電話をしたのですが一切繋がりませんでした」と言っているし…。嘘をつくなと言いたい(注18))。確かに直接捜査を担当している警察署に訴えなかった私も悪いが、これでは「福山東警察署はあなた(というより福山市民)にとっての最寄りの警察署ではありません」と言っているようなものである。結局大学時代の後輩はその事件とは無関係に終わったわけであるが、もしその遺体が大学時代の後輩だったとしたらこの福山東警察署の対応はどうなのだろうか。恐らく重大な問題になっていたことであろうし、私は福山東警察署を告訴していたことであろう。面倒なことはしたくない気持ちは分かるが相手の心情を考えないような上から目線で臨むのはやめて頂きたいと今も考えているところである。
警察は我々一般市民の安寧秩序を守るために存在するものである。こんなことが許されて良いのだろうか。その態度が事件解決の障害になるとしたら、その態度が一般市民の不信感を買うとしたら、その態度を契機に一般市民に非協力的な態度をとられる結果になってしまったとしたらそれはどれだけ愚かなことであろうか。その点を認識して頂きたいものだと思う。
4 最後に〜今後我々に求められること〜
我々としては津山女子小学生殺害事件・廿日市女子高校生殺害事件・草津南ゲートボール場男性殺害事件・島根県立大学女子学生バラバラ殺人事件を含めた全ての未解決事件の早期解決を望みたいところであるが、同時に我々はいくつもの課題を克服し、いくつもの問題を改善する必要もあるのではないかと考えている。それを紹介することにしたい。
立場 | 記事 |
---|---|
警察に求められること | ・「我々は一般市民の安寧秩序を守っているのだぞ。文句あるのか」というような上から目線で一般市民に臨むことをやめ、一般市民の心情に配慮した対応をとること。 ・たとえ他の都道府県での事件であったとしても一般市民からの訴えに真摯に対応し、最寄りの警察署としての信頼を一般市民に与えること。 ・捜査結果の報告について、一部(殺人事件の身元不明の被害者の似顔絵が自分の身近な人間に似ているという訴えなど)については解禁すること(その際通報者に情報を悪用しないとの念書を書かせるべきであろう)。 ・相手の心情を考えて説明責任を尽くすこと。 ・事件に想定外はないと考え、あらゆる可能性を考えた捜査を行うこと。 ・事件に差別を付けないこと。 ・情報提供を求めるポスターを貼る地域を限定しないこと。 ・警察庁や警視庁、他の道府県警察本部、警察署からの依頼に対して非協力的な態度をとらないこと。 ・事件発生からかなりの時間が経過してから遺留品や殺人事件の身元不明の被害者の似顔絵(復顔像)を公開するようなことはやめること(つまり早い段階で出せる情報は全て出し、一般市民からの有力な情報提供を呼びかけるべきだということ)。 ・人の記憶は時間が経てば経つほど薄れることを真剣に受け止めること。 ・もっと「時は金なり」ということわざの意味を噛み締めるべきであること。 ・我々は汗水流して一生懸命捜査しているのだという思いをもっと一般市民に知って頂くように努めること。 ・かつて11月1日付の朝刊に指名手配被疑者捜査強化月間が始まったという記事が指名手配容疑者の顔写真や指名手配容疑、特徴とともに掲載されていたが、最近は全くといって良いほど見られなくなったので一般市民の関心を喚起するためにも再び記事化するようにすること(無論その他の時期は手を抜いてはいけないことは記すまでもない)。 ・一方でお盆の季節である8月、彼岸の季節である3月・9月のいずれかについて「行方不明者捜査強化月間」を設定し、失踪者の居所特定や身元不明遺体の身元特定を進めるようにすること(無論その他の時期は手を抜いてはいけないことは記すまでもない。ただ、身元不明の他殺遺体の復顔像または似顔絵がいくつも掲載されたポスターを作成・公開することは慎重に臨まなければならないだろうが…(注19))。 ・身元不明の他殺遺体の復顔像または似顔絵について不気味さや怖さを軽減することに努めること。 ・一般市民が事件情報に触れる機会を増やすこと(テレビやラジオで取り上げる、ポスターの作成枚数を増やすなど)。 ・ある手段だけに頼らないこと。 ・捜索願のデータベース化を推進し、失踪者の早期発見や身元不明遺体の身元の早期解明ができるようにすること。 ・警視庁や各道府県警察本部の公式サイトの身元不明遺体の情報提供を求めるページについて、対象がまちまちなので統一し、かなり昔のものも掲載するように努めること。 ・公訴時効の在り方を見直すこと(殺人事件だけでなく殺人事件に付随する場合が多い死体遺棄罪・死体損壊罪の公訴時効を撤廃することや既に公訴時効が成立している事件についても公訴時効を解除し、捜査を再開できるようにすること、殺人事件の公訴時効撤廃の功罪について長期的に検証することなど)。 ・警察署間や警察本部間の縄張り意識を解消すること。 ・広域捜査や未解決事件を担当する全国的な組織を設置すること。 ・捜査特別報奨金制度の在り方を再検討すること(重要事件について警視庁や各道府県警察本部が適用を渋り続けている場合は警察庁が適用勧奨を行うようにするなど)。 |
我々一般市民に求められること | ・もし警察の対応について不満を抱いた時は諦めたり泣き寝入りしたりするのではなく、正々堂々と訴えること(但し自主解決は避けたほうが良い。場合によっては恐喝や脅迫と見なされ、自分が犯罪者になる恐れがあるからである)。 ・変な感情(偏見など)を抱かず、もし事件について何か知っているのであれば正々堂々となるべくなら捜査を担当している警察署に訴えること。 ・もう少し自分が住んでいる家の周辺の住人に関心を持つこと(但しその住人の私的領域には十分配慮すべきである)。 ・町内会や自治会の活動を活発化させること。 ・同窓会や同期会の活動を活発化させること。 ・もし事件に巻き込まれたとしても誰かに誤解されるような態度はとらないこと。 ・匿名報道や顔出し拒否などの配慮に対して批判的な目で見ず、理解するように努めること。 |
報道機関に求められること | ・被害者の心情に配慮した報道を行うこと(全裸などの衝撃性を含んだ単語の使用を控える、被害者の私的領域を侵犯するような報道は控えるなど)。 ・どっちつかずの配慮はなるべくならやめること。 ・過剰な取材は控えること。 ・被害者に関係する方々の心情に配慮した報道を行うこと。 ・定期の公開捜査番組を復活させること(但し結果を報告する、視聴率至上主義に走らないなどの条件付き)。 ・昭和時代のワイドショーでよく企画されていた公開捜査コーナーを復活させること(但し結果を報告する、視聴率至上主義に走らないなどの条件付き)。 ・未解決事件に対する関心を喚起させるためにも未解決事件を取り上げた企画をワイドショーやニュース番組で設定すること。 ・警察側が未解決事件の情報提供を求める宣伝を流すことに対して消極的な態度をとり続けるのであれば放送局が独自で未解決事件の情報提供を求める宣伝を制作・放送するようにすること。 |
その他 | ・欧米諸国の失踪者や身元不明遺体の情報提供を求めるサイト「The Doe Network」(全て英語などの外国語で書かれているので閲覧する際は注意)の日本版を作ること。 |
最後になったが、次の写真を見て頂きたい。
上の写真は本サイトのこのページでも掲載しているのだが、浜田市郊外のあるバス停に残されていた2010年(平成22年)の島根県立大学(浜田市野原町)の学園祭のポスターを2011年(平成23年)7月に撮影したものである(肖像権が絡むため一部加工を施している)。島根県立大学女子学生バラバラ殺人事件が起きて1年経った頃に行われた学園祭だったのだが、私はこのポスターに島根県立大学の学生の非常に残念なことがあったけれど頑張っていこうという気概を感じたものであった。そして私は今このように思っている。
「あなた(島根県立大学女子学生バラバラ殺人事件の容疑者)が起こした事件が原因で多くの方々は衝撃を受け、恐怖に怯えた。捜査が行き詰まっていることに憤慨している方も少なくない(注20)。それがあなたの思う壺だったのだろう。しかし、あなたの思い通りに全てがなるわけではない。いつまでも恐怖と悲しみに打ちひしがれているわけでもない。あなたにこのポスターに込められた思いは分かるだろうか。このポスターを見て自分のやったことを申し訳ないことだと感じるようになったのなら今すぐ浜田警察署(浜田市殿町)か自分の家の近くにある警察施設に出頭して欲しい。そして自分の犯した罪を悔い改めて欲しい」
恐らくこのサイトのこのページを島根県立大学女子学生バラバラ殺人事件の容疑者は見ることはないであろう。しかし、私は凶悪事件克服の象徴として今回あえて島根県立大学の学園祭のポスターの写真をここに掲載することにしたのである。賛否両論はあるがご理解頂きたいところである。
私は訴えたい。もし何か知っていることがあったらすぐになるべく捜査を担当している警察署に訴えて欲しい。不幸にも事件の被害に遭った方々は逃げずに立ち向かって欲しい。警察は汗水垂らして事件解決に向けて努力している姿を一般市民に見せて欲しい。そして一日でも早く、一つでも多く、未解決凶悪事件がなくなって欲しい。それが私の偽らざる現在の思いである。
参考資料:中国地方の現在捜査中の未解決事件一覧表
※下表は殺人事件や死体遺棄事件、失踪事件を主に取り上げており、強盗事件やひき逃げ事件は取り上げていない。
※各県の警察本部の公式サイトに情報提供を求めるページがないことやインターネット検索をかけても詳しいことが分からないものがあることから全ての未解決事件を取り上げているわけではない。
※担当警察署名は2014年(平成26年)10月6日現在のものを記している(岡山・広島両県内で発生した事件の一部に警察署再編で担当警察署が変わったものがある)。
県名 | 担当 警察署名 |
事件名 | 発生年月日 | 情報提供を呼びかける ページの有無 |
備考 |
---|---|---|---|---|---|
鳥取県 | 鳥取 | タクシー強盗殺人事件 | 2009年 (平成21年) 7月17日 |
○ | 鳥取駅北口からタクシーに乗った客が運転手を射殺し、鳥取市郊外まで運転して乗り捨てて逃げた事件。 最近になってようやく鳥取県警察本部公式サイトのトップページに情報提供を呼びかけるページへのリンクを貼るようになった(但しトップページの左下部にあり、スクロールしないとそれは見られない)が、重大な未解決事件であることには変わりはなく、積極的な態度を見せることが求められる。 |
島根県 | 江津 | 済生会江津総合病院 入院患者(宮司)殺害事件 |
2006年 (平成18年) 3月18日 |
× | 島根県警察本部及び江津警察署の公式サイトには情報提供を呼びかけるページがない。 事件発生現場となった済生会江津総合病院は事件発生から間もない時期に江津市江津町の丘の上から江津市江津町の海岸近くに移転している。 |
浜田 | 黒川町高齢女性殺害事件 | 2004年 (平成16年) 2月5日 |
○ | 黒川町は浜田市の町名。 被害者は事件発生3日後に死亡。 浜田市中心部にある発生現場の近くには情報提供を求める看板が設置されているが事件の知名度は低い。 2018年(平成30年)2月2日付中国新聞朝刊によると事件当日現場(被害者の自宅)付近で不審な車が複数見られたとのことであるが、関連があるかどうかは分かっていない。 情報提供を求めるページは設置・削除を繰り返しており、島根県警察本部及び浜田警察署のやる気を疑いたくなる。 |
|
松江 | 東忌部町死体遺棄事件 | 2015年 (平成27年) 10月26日 |
○ | 東忌部(ひがしいんべ)町は松江市の町名。 頭蓋骨(下顎部を除く)しか見つかっておらず、死因は不明である(2018年〔平成30年〕11月8日付中国新聞朝刊による)が、殺人・死体損壊・死体遺棄事件の可能性も考えられるため本表に掲載し、なおかつ死体遺棄事件として取り扱うことにした(但し2005〜2012年〔平成17〜24年〕に死亡したと推定されているため死体損壊罪・死体遺棄罪は既に公訴時効が成立している)。 2018年(平成30年)11月に被害者(死亡当時18〜30歳の男性)の復顔像(似顔絵)が公開された。 |
|
岡山県 | 岡山北 | 賀陽幼児失踪事件 | 2001年 (平成13年) 10月25日 |
○ | 賀陽は上房郡(2004年〔平成16年〕10月1日消滅)に属していた自治体の名称(上房郡賀陽町〔1955〜2004〕)。現在は加賀郡吉備中央町になっている。 |
岡山中央 | 高島市営住宅放火殺人事件 | 2000年 (平成12年) 2月14日 |
× | 高島は岡山市中区の地区名。 容疑者は特定され、指名手配されているらしい。 JR山陽本線高島駅のそばに情報提供を呼びかける看板が設置されている(「Googleマップ」で閲覧できる「Googleストリートビュー」でも見られる)が、岡山県警察本部や岡山中央警察署の公式サイトに情報提供を求めるページはない。 |
|
男子小学生失踪事件 | 2000年 (平成12年) 10月20日 |
○ | 以前は岡山県警察本部公式サイトに情報提供を求めるページがあったが削除されており、閲覧できなくなっている。その代わりにこの男子児童が通っていた岡山市立旭東(きょくとう)小学校(岡山市中区門田〔かどた〕屋敷本町)の公式サイトに情報提供を呼びかけるページがあるのを見つけたためそこへのリンクを貼っている。 | ||
児島 | 児島老夫婦殺害・放火事件 | 1995年 (平成7年) 4月27日 |
○ | 児島は倉敷市の地区名。 容疑者は老夫婦を殺害した後その頭部を切断して持ち去り、更に家に放火した。頭部は現在も発見されていない(恐らくどこかに埋めるか捨てるかしたのだろう)。 死体損壊罪に関しては公訴時効成立。 殺人事件の公訴時効撤廃はこの事件の公訴時効成立前日に施行されたことで全国的にこの事件は知られるようにはなったがそれでも事件解決には至っていない。 |
|
津山 | 主婦失踪事件 | 2002年 (平成14年) 6月3日 |
○ | 重要参考人として行方を追っていた男女がともに死亡したため迷宮入りしている。新見市周辺に何らかの手がかりがあるらしいがそれすらも定かではない。 | |
広島県 | 呉 | 焼山高齢女性殺害事件 | 2003年 (平成15年) 1月22日 |
× | 焼山は呉市の地区名。 2003年(平成15年)1月22日朝に訪問介護員が自宅を訪ねて何者かに窒息死させられた被害者を発見したことで発覚した事件であり、2003年(平成15年)1月21日に殺害された可能性もある。 2018年(平成30年)5月9日付中国新聞朝刊によると捜査本部が置かれているとのことであるが、広島県警察本部及び呉警察署の公式サイトには情報提供を呼びかけるページはない。 |
佐伯 | 五日市スーパー強盗殺人事件 | 2000年 (平成12年) 9月3日 |
○ | 五日市は広島市佐伯区の地区名。 容疑者の大まかなイラストが公開されているが有力な情報はない。 |
|
広 | 灰ヶ峰母子死体遺棄事件 | 2000年 (平成12年) 2月28日 |
○ | 母子とも身元不明のまま。更に子供(幼児)の性別も不明(調べる手段がないのだろうか)。 死体遺棄罪に関しては公訴時効成立。 捜査を担当している広警察署としては殺人事件と見なしていない姿勢が見られるが、灰ヶ峰は1980年(昭和55年)1月に17歳の少女の遺体(未解決)が、2009年(平成21年)2月に生後間もない女児の遺体が、2013年(平成25年)7月に16歳の少女の遺体がそれぞれ発見されるなど死体遺棄事件が何度か起きた場所であることや親子心中をするにしてはどうかと思う場所であること、この親子と思しき人間を灰ヶ峰山頂近くまで乗せたタクシーが見つかっていないことなどを考えれば殺人・死体遺棄事件として捜査すべきだと思われる(殺人・死体遺棄事件としたくないのは呉市では昭和50年代〔1975〜1984〕に迷宮入りした殺人事件が多発したこと〔4件5人。被害者はいずれも女性〕で辟易してしまったからだろうか)。 死体遺棄罪の公訴時効が成立した後の2003年(平成15年)5月になって女性の似顔絵が公開されたが、その似顔絵を掲載したポスターは貼る地域が限定されたことや貼ることについて非協力的な態度をとった警察本部・警察署があったこと、その後一切ポスターを作成していないことから身元判明→事件解決には繋がらないままになっている。 |
|
広島中央 | 白島地下道少女殺害事件 | 2000年 (平成12年) 1月20日 |
○ | 白島(はくしま)は広島市中区北部の地区名。 ともに多車線道路で、交通量も多い国道54号線(国道191号線重用)と県道84号東海田・広島線が交わる場所に建設された地下道なのに事件発生当時防犯カメラが一切設置されていなかったことや犯行時刻が深夜・早朝だったことが容疑者特定に繋がらない一因になっている。 |
|
天満川新生児死体遺棄事件 | 2008年 (平成20年) 5月22日 |
○ | 天満川は広島市中心部を流れる川。 死体遺棄罪に関しては公訴時効成立。この新生児の死因(放置による衰弱死や羊水または糞便吸引による窒息死、死産など)によってはもし容疑者が検挙されても起訴できなくなる恐れがある。 広島県では2007〜2009年(平成19〜21年)に新生児(被害者はいずれも女児)が殺害される事件が3件起きているが、この事件だけ未解決になっている。 |
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舟入南新聞配達員殺人未遂事件 | 2016年 (平成28年) 7月27日 |
× | 舟入南は広島市中区の町名。 なぜか広島県警察本部及び広島中央警察署の公式サイトには情報提供を呼びかけるページがない。 |
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署内現金盗難事件 | 2017年 (平成29年) 5月8日 |
× | 広域詐欺事件の証拠品である現金約8,572万円が何者かによって盗み出された事件。恐らく内部犯行であるが容疑者を庇(かば)おうという警察側の姿勢が事件解決を困難にしているものと思われる。 広島県警察本部及び広島中央警察署にとっては恥ずべき事件であることもあり、広島県警察本部及び広島中央警察署の公式サイトには情報提供を呼びかけるページは設置されていない。 |
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広島西 | 草津南ゲートボール場男性殺害事件 | 1999年 (平成11年) 10月16日 |
○ | 草津南は広島市西区の町名。 | |
広島南 | 翠高齢男性殺害事件 | 2007年 (平成19年) 10月6日 |
× | 翠(みどり)は広島市南区の町名。 2018年(平成30年)5月9日付中国新聞朝刊によると捜査本部が置かれているとのことであるが、広島県警察本部及び広島南警察署の公式サイトには情報提供を呼びかけるページはない。 なお、インターネットで検索したところ容疑者と思しき人物が2013年(平成25年)2月に逮捕されたと記されているものをいくつか見かけたが、現在も捜査本部が置かれていることから考えて結局無関係だったものと思われる。 |
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福山東 | 東吉津町喫茶店放火殺人事件 | 1996年 (平成8年) 3月3日 |
× | 東吉津町は福山市の町名。 広島県で起きた、公訴時効が成立しなくなった殺人事件としては最古の事件になるが広島県警察本部及び福山東警察署の公式サイトには情報提供を呼びかけるページがない。2018年(平成30年)5月9日付中国新聞朝刊によると捜査本部が置かれているとのことであるが…。 |
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山県 | 大朝高齢者介護施設施設長殺害事件 | 2000年 (平成12年) 12月8日 |
○ | 大朝は山県郡に属していた自治体の名称(山県郡大朝町〔1926〜2005〕)。現在は山県郡北広島町になっている。 容疑者の似顔絵が公開されているが有力な情報はない。 |
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山口県 | 宇部 | 西岐波死体遺棄事件 | 2014年 (平成26年) 7月3日 |
○ | 西岐波(にしきわ)は宇部市の大字名。 2014年(平成26年)12月には被害者(40〜70代の男性)の似顔絵が公開されているが現在も身元不明のまま。2009〜2013年(平成21〜25年)に遺棄されたものと考えられている。 死体遺棄罪に関しては公訴時効成立。 殺人・死体遺棄事件の可能性があるにもかかわらずなぜか未解決事件の情報提供を求めるページではなく身元不明遺体の情報提供を求めるページに他の身元不明遺体とともに掲載されており、山口県警察本部の考え方を疑いたくなる。 |
下関 | 竹崎町男性殺害事件 | 2008年 (平成20年) 3月3日 |
○ | 竹崎町は下関市の町名。 動機は不明だが通り魔の可能性もある。 容疑者の大まかなイラストが公開されているが有力な情報はない(下関市から近い福岡・大分方面に逃げた可能性も考えられる)。 捜査特別報奨金制度適用事件になったこともあるが情報提供の少なさを理由に一度きりになり、その後この事件の情報提供を求めるページが削除されていたこともあった(但しインターネット検索で探し出し、閲覧することは可能だった)。 廿日市女子高校生殺害事件と浜田女子学生バラバラ殺人事件が解決したことにより捜査特別報奨金制度が適用されたことのある中国地方の未解決凶悪事件では唯一の未解決事件となっている。 |
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点滴袋異物注入事件 | 2018年 (平成30年) 8月21日 |
× | 下関市内の病院で小さな穴が開けられた点滴袋が見つかり、調べたところ界面活性剤が注入されていたことが判明した事件。もし実際にその点滴袋が使用されれば横浜市内の病院における点滴袋異物注入事件(2016年〔平成28年〕9月発覚。2018年〔平成30年〕7月容疑者検挙)に見られるように被害者が出た可能性が高いのだがその後どうなったかは分かっていない(恐らく捜査は難航しているのだろうが…)。 | ||
山口 | 赤妻町女性殺害事件 | 2009年 (平成21年) 1月12日 |
○ | 赤妻町は山口市の町名。 被害者の夫(1935年〔昭和10年〕9月15日生まれ)が指名手配されている。 |
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山口南 | 佐山親子強盗殺人事件 | 2013年 (平成25年) 3月24日 |
○ | 佐山は山口市の大字名。 親子(母親〔高齢者〕と娘)の遺体は事件発生数日後に発見されたためそれが捜査を難航させる要因になった。 |
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山口県 | 下関 | 響灘バラバラ殺人事件 | 1995年 (平成7年) 11月7日 |
× | 被害者(男性)の頭部が入ったカバンが下関市安岡駅前二丁目にある海水浴場で1995年(平成7年)11月7日に、被害者の腰部が入ったカバンが北九州市小倉北区西港町の海面で1995年(平成7年)11月12日にそれぞれ見つかったバラバラ殺人事件(他の部位は見つかっていないものと思われる)。 死体遺棄罪・死体損壊罪に関しては公訴時効成立。 被害者の父親が指名手配されている(但し顔写真はなぜか公開されていない)が、2021年(令和3年)9月19日に100歳の誕生日を迎え、生存の見込みがなくなったと考えたからか2021年(令和3年)10月頃山口県警察本部は公式サイトの情報提供を呼びかけるページからこの事件に関する記述を削除している。しかし、山口県警察本部はそのことに関して一切声明は出していないし、指名手配を解除したのかどうかも分からないままになっている。そもそも顔写真を公開しないまま指名手配したことがこのような事態を招いたと言え、(何度も書くが)山口県警察本部の考え方を疑いたくなる。 なお、福岡県警察本部の公式サイトにこの事件の情報提供を呼びかけるページは設置されていない。 |
福岡県 | 小倉北 |
(本ページ初公開後、すなわち2014年〔平成26年〕10月6日以降に解決した事件)
県名 | 担当 警察署名 |
事件名 | 発生年月日 | 備考 |
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鳥取県 | 境港 | 福定町殺人・死体遺棄事件 | 2011年 (平成23年) 7月16日 |
福定町は境港市の町名。 身元不明の若い女性の遺体が廃業した給油所の屋根に遺棄されていたのが見つかったことに端を発する事件。2015年(平成27年)に遺体は新見市在住の死亡当時28歳の女性と判明し、2019年(平成31年)1月26日に高梁市在住の男性が容疑者として検挙された。 死体遺棄罪は事件解決時点で既に公訴時効が成立している。 被害者・容疑者とも他県在住者だったことや失踪から2年半も経ってから被害者の家族が捜索願を出したことだけでなく状況(給油所の屋根で遺体が見つかったことや遺体には絞殺の疑いがあったことなど)から殺人・死体遺棄事件の疑いが濃厚だったのに殺人・死体遺棄事件としての積極的な捜査が見られなかったこと(情報提供を呼びかけるページを設置しなかったことや被害者の復顔像を作成・公開しなかったことなど)が身元判明→容疑者検挙にかなりの時間がかかる結果になったことは否めないところであろう(被害者の身元判明までに死体遺棄罪の公訴時効は成立してしまったし…)。 |
島根県 | 浜田 | 浜田女子学生バラバラ殺人事件 | 2009年 (平成21年) 10月26日 |
発生年月日は被害者が失踪した日としている。 2010年(平成22年)2月以降捜査特別報奨金制度が適用されていた(2016年〔平成28年〕12月20日適用解除)。 死体遺棄罪及び死体損壊罪は事件解決時点で既に公訴時効が成立している。 2016年(平成28年)12月になり、事件当時益田市に住み、遺体発見2日後の2009年(平成21年)11月8日に美祢市内の中国自動車道で母親とともに交通事故死した男性が容疑者(過去に女性に乱暴しようとして逮捕されたことがある)であることが判明し、2016年(平成28年)12月20日に書類送検されて捜査は終結した。 |
広島県 | 山県 | |||
島根県 | 松江 | 女性失踪事件 | 2012年 (平成24年) 9月27日 |
2015年(平成27年)8月8日松江市内を流れる大橋川で失踪者の乗っていた車が発見され、中から失踪者の遺体が発見された。誤って大橋川に転落したものと思われる。 |
浜田 | 女性誘拐事件 | 2017年 (平成29年) 7月22日 |
事件発生当時19歳の女性が深夜家族と別れてから消息を絶った事件。 2018年(平成30年)5月4日に浜田市内に住む男性が誘拐容疑で逮捕され、被害者は無事保護された。但し容疑者はその後不起訴処分になっている(理由は非公表)。 |
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岡山県 | 津山 | 女子小学生殺害事件 | 2004年 (平成16年) 9月3日 |
目撃証言が少ないことや岡山県警察本部及び津山警察署が捜査に対して消極的な態度をとったことなどから捜査は難航を極めたが、2018年(平成30年)5月になって別の事件で検挙された男性が自供したことにより発生から14年近くかかっての解決となった(この男性は2018年〔平成30年〕5月30日に検挙されている)。被害者などとの面識はなく、行きずりの犯行と思われる。 この男性は兵庫県在住であり、(本文でも触れているのだが)2006〜2007年(平成18〜19年)にかけて兵庫県内で発生した、女子小学生が被害に遭った殺人未遂事件または殺人事件との関連も疑われるところであるが、現在のところはっきりしていない。また、2021年(令和3年)10月から始まった公判ではこの男性は無罪を主張しており、どのようになるかは予断を許さない状況になっている。 |
広島県 | 庄原 | 山内主婦殺害事件 | 2000年 (平成12年) 3月21日 |
山内(やまのうち)は庄原市の地名。 被害者の夫が指名手配されていたが、同じ年に広島県内で起きた他の未解決凶悪事件ほど報じられることはなく、また情報提供を呼びかけるページが広島県警察本部や庄原警察署の公式サイトに設けられることもなく全く知られていない事件と化していた。しかし、2015年(平成27年)秋になって松江市内の海中から容疑者の車が発見され、同年11月10日に引き揚げたところ容疑者の遺体が発見された。松江女性失踪事件(2012年〔平成24年〕9月27日発生→2015年〔平成27年〕8月8日遺体発見)の捜査の過程で容疑者の車が発見されたのだが、島根県警察本部がもう少ししっかりしていればもう数年遺体発見は早まったのではないかと思うのは私だけであろうか。 |
廿日市 | 女子高校生殺害事件 | 2004年 (平成16年) 10月5日 |
2008年(平成20年)2月以降捜査特別報奨金制度が適用されていた(2018年〔平成30年〕4月13日適用解除)。 捜査特別報奨金制度の適用を受けていたこともあり、広島県警察本部における未解決事件の代表的存在になっていた他、広島県を放送区域とする民間テレビ放送局・広島ホームテレビ(HOME、広島市中区白島北町)の公式サイトではこの事件に関するページを設定していたこともあった(容疑者が検挙された現在もそのページは残されている)。 容疑者の似顔絵が公開されながら有力な情報が得られず、長らく未解決のままになっていたが、2018年(平成30年)4月13日に宇部市在住の男性が逮捕され、発生から約13年半かかっての事件解決となった。被害者などとの面識はなく、行きずりの犯行と思われる。 |
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広 | 阿賀中央高齢男性殺害事件 | 2018年 (平成30年) 6月12日 |
阿賀中央は呉市の町名。 被害者は2018年(平成30年)5月頃刺殺されたものと思われるが独り暮らしだったことなどもあって発見が遅れ、事件発覚時点で既に遺体の一部は白骨化していた。 そのことから捜査は難航したが被害者の親戚の男性(2018年〔平成30年〕8月25日自殺)が容疑者であることが判明し、2019年(平成31年)1月31日に書類送検されて捜査は終結した。 |
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福山西 | 明王台主婦殺害事件 | 2001年 (平成13年) 2月6日 |
(本ページ初公開後、すなわち2014年〔平成26年〕10月6日以降に公訴時効が成立した事件)
県名 | 担当 警察署名 |
事件名 | 発生年月日 | 備考 |
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広島県 | 佐伯 | 西広島バイパス男性暴行事件 | 2005年 (平成17年) 9月8日 |
西広島バイパスは広島市西区〜廿日市市間に1960〜1970年代に建設された国道2号線のバイパスである。 動機としては何らかの交通トラブル(急な車線変更、あおり運転など)が考えられているが結局容疑者も動機も判明しないまま2015年(平成27年)9月8日午前0時に公訴時効が成立した(但しそのことに関する報道はなかった。広島県警察本部公式サイトに掲載されていた情報提供を呼びかけるページが削除されていたことと2014年〔平成26年〕夏に中国新聞で2015年〔平成27年〕9月8日午前0時をもって公訴時効が成立する旨の報道があったことから公訴時効が成立したものと判断した)。 2014年(平成26年)夏の中国新聞の報道によると被害者の男性はその後この事件が原因で自殺したとのことであり、実質的な殺人事件と解することもできるのだが何とかすることはできなかったのかと思うのは私だけだろうか。 |
※この他にも多数あるようなのだが詳細をつかみ切れなかったことなどから上表には掲載しなかった。とにかく1995年(平成7年)4月27日以降に起きた殺人事件の公訴時効はなくなったのだから警視庁及び各道府県警察本部は未解決の殺人事件(殺人事件が疑われる死体遺棄事件を含む)を全て公式サイトで公開し、情報提供を呼びかけて頂きたいものであるが…。
(注釈コーナー)
注1:冒頭の「本ページをご覧頂くに当たってのお断り」でも記しているように中国新聞では8月19日付朝刊から未解決事件について取り上げる企画「未解決を追う」を連載していた。しかし、広島市北部における集中豪雨災害(今年8月20日)や御嶽山噴火(今年9月27日)に関する報道を優先させたこともあり飛び飛びになってしまい、5回で終わってしまった。また、中国地方でも鳥取県(鳥取タクシー強盗殺人事件)と岡山県(津山女子小学生殺害事件など)で発生した事件については一切取り上げていない(中国新聞が全くといって良いほど購読されていない地域だったせいもあるが島根県・広島県・山口県の未解決事件でも取り上げていないものがあることを思えばそれだけが理由ではないのではないかと思われる)。
注2:被害者の遺体が発見されたのは2009年(平成21年)11月6日のことであり、その日を発生年月日としている場合が多いが私は被害者が失踪した日を発生年月日としている。
注3:草津南は広島市西区の町名である。
注4:報道機関の対象区域の都合上発生した県ではないところでもその報道に触れざるを得ない場合がある。例えば津山女子小学生殺害事件は香川県で、島根県立大学女子学生バラバラ殺人事件は鳥取県でそれぞれその報道に接せざるを得なくなる。
※なぜこのようになっているのかは「不定期刊・きょうのトピックス」の一編である「山陰放送開局60周年」で触れているので併せてご覧頂きたい。
注5:私の友人で「下関市立大学・大学祭実行委員会事務局OB会公式サイト」というサイトを運営している中島孝祐(なかしま・こうすけ)さんもその一人である。津山女子小学生殺害事件の被害者と東京に住んでいる甥(中島さんの兄の長男。現在大学1年生)、廿日市女子高校生殺害事件の被害者と大阪に住んでいる姪(中島さんの姉の次女。2012年〔平成24年〕1月に大学時代の同級生と結婚し、現在は一児の母親になっている)がそれぞれ同級生であることもあって前途ある若者の命を奪い、どこかでのうのうと暮らしている犯人と、事件について何かを知っているのに見て知らぬふりをしている一般市民は絶対に許せないという思いを抱き続けているそうである。
注6:実は自分もその一人である。そのことはこちら、すなわち「SUNDAY TALK2011」第42回「三つの疑問〜ある殺人・死体遺棄事件から〜」で触れている。
注7:だんだん薄れてしまうことを指す単語。私の造語である。
注8:恐らく神戸西警察署出合交番(神戸市西区玉津町出合)ではないかと思う。その時は第二神明道路玉津インターチェンジ(神戸市西区玉津町居住)から国道175号線を南下していることや第二神明道路玉津インターチェンジから少し南下した場所にあったように記憶していること、第二神明道路玉津インターチェンジ以南の国道175号線には神戸西警察署枝吉交番(神戸市西区枝吉一丁目)もあるが神戸西警察署枝吉交番までのどこかで左折しないと兵庫県立図書館に行くのには遠回りになることがそのように考えている理由である。
注9:岡山県公式サイトの「マルチメディア目安箱」(知事が交代したこともあるのか2013年〔平成25年〕1月分からは「県政への提言」に改称)に2008年(平成20年)2月分と2010年(平成22年)2月分の二度津山女子小学生殺害事件への捜査特別報奨金制度適用を求める意見が掲載されたことがある。投稿時期から考えて廿日市女子高校生殺害事件(2008年〔平成20年〕2月〜)と島根県立大学女子学生バラバラ殺人事件(2010年〔平成22年〕2月〜。適用開始時点で事件発生からまだ半年経過していなかったが特例で前倒し適用となった)に捜査特別報奨金制度が適用されるようになったことで中国地方における重要未解決凶悪事件の一つである津山女子小学生殺害事件も適用されてしかるべきだという考えで投稿したものと思われるが、廿日市女子高校生殺害事件と島根県立大学女子学生バラバラ殺人事件は現在も適用は続けられているのに対し津山女子小学生殺害事件は適用されないままになっているところに事件捜査に対する温度差を感じたくなるのは私だけであろうか。とにかく最初の投稿があってすぐの時点で適用に踏み切ることを決断しなかったのは非常に残念なことである。
注10:先日神戸市長田区で小学校1年生の女子児童が男性に拉致されて殺害され、バラバラ遺体になって発見される事件が起きているがこの事件と加古川市で起きた女子小学生殺害事件、たつの市で起きた女子小学生殺人未遂事件、津山市で起きた女子小学生殺害事件は無関係だと私は考えている。現在のところ神戸市長田区の事件の容疑者は黙秘を貫いているが、この事件の容疑者が女子児童の遺体を自宅近くの山中に捨てたのは運搬手段、すなわち自動車を所有していなかったからであり、何十kmも離れた加古川市やたつの市、津山市で事件を起こせるわけはないと考えているからである。
注11:被害者の遺体が発見されたのは2010年(平成22年)3月15日のことであり、その日を発生年月日としている場合が多いが私は被害者が失踪した日を発生年月日としている。但し被害者が失踪したのは2010年(平成22年)3月5日の可能性もある(どの時点で被害者が容疑者に呼び出されるなり拉致されるなりして殺害されたか判然としないため)。
注12:浜田市と福岡市を自動車で往来する場合、高速道路だけ通るとかなり遠回りになるし、反対に一般道路だけ通ると時間がかかる。そんな中で最適な経路だと考えているのが国道186号線→島根県道/広島県道11号旭・戸河内線→国道191号線を経由して中国自動車道戸河内インターチェンジ(広島県山県郡安芸太田町上殿)に出る経路である。島根県立大学女子学生バラバラ殺人事件の被害者の遺体が遺棄された臥龍山は島根県道/広島県道11号旭・戸河内線から西にいくらか離れたところにあり、厳密には島根県道/広島県道11号旭・戸河内線の沿線ということにはならないのだが、広島県道307号八幡・雲耕(やわた・うずのう)線→島根県道/広島県道115号波佐・芸北線を経由して国道186号線から国道191号線に移る方法(それだと臥龍山の近くを通ることになるが県道部分の道路状況は芳しくはない)もあるので容疑者はそのことを念頭に置いていた可能性がある。もし島根県立大学女子学生バラバラ殺人事件と博多湾女性会社員バラバラ殺人事件が同じ容疑者の仕業だったとしたら容疑者は犯行当時中国地方西部か九州地方北部に住んでいた、1990年代半ばに広島県に住んでいた人間ということになるのだが、果たして真相はどうなのだろうか。
注13:連続殺人事件として世間が騒然となったのは容疑者が逮捕された1996年(平成8年)9月下旬以降のことである。
注14:便宜上2014年(平成26年)10月5日時点の市区郡町村名で記している。
注15:公訴時効の成立時期については解釈が分かれるところである。例えば1984年(昭和59年)6月に呉港で女子高校生の他殺漂流遺体が発見された事件(未解決。強姦後に殺害され、海に投げ込まれたものと思われる)は被害者の失踪した日=殺害された日としたため公訴時効が成立したのは1999年(平成11年)5月23日午前0時となっている(当時中国新聞朝刊でもそういう報道があったし、中島さんは1999年〔平成11年〕5月21日に放送された中国放送テレビ〔RCC、広島市中区基町〕のニュース番組「RCCニュース・ブリッジ」〔1998〜2000年〈平成10〜12年〉放送〕で当時報道記者を務めていた中島さんの大学時代の一級上の先輩がその事件の時効成立が間近いことを伝えていたのを見たと証言している)。その考えで行けば廿日市市の女子小学生誘拐・殺人事件は1994年(平成6年)5月に公訴時効が成立したということになるが実際のところは当時一切報道がなされなかったため分からない。
注16:本文では岡山県警察本部の対応を批判しているが、実は広島県警察本部も関心を持つべき事件だった。というのも次に挙げる事実があるからである。
・広島県南東部では山陽新聞を購読している人がいくらかいること。
・事件が発生した当時福山市と香川県仲多度郡多度津町を結ぶフェリーボート(福山・多度津フェリー)があった(2008年〔平成20年〕廃止)のだが、香川県仲多度郡多度津町から三好市までは香川県道25号善通寺・多度津線→国道319号線→国道32号線経由の一本道で行けたためにフェリー料金が高額という問題はあるが福山市から三好市までは比較的容易に行けたこと。
・事件が発生した当時既に福山市内から高速道路を通って四国に渡ることは可能だったこと(もっとも瀬戸中央自動車道・高松自動車道坂出インターチェンジ〔坂出市川津町〕までだったが)。
・広島県南東部は岡山県との繋がりが深いこと。
この事件が迷宮入りし、結局公訴時効が成立した背景には捜査を担当した徳島県警察本部(徳島市万代町二丁目)や三好警察署(三好市池田町ウエノ)の捜査方法に問題があったこと(復顔像を作り直すという失態をしたこと。ただそういう事件は多数あり、失態というよりは試行錯誤と解するべきかもしれない)もあるのだが、本文でも記したように私は遺体を焼く際に使用したエンジンオイルが神戸市内のホームセンターで購入されたものであるという事実にとらわれたことがいけなかったのではないかと考えている。神戸市内のホームセンターで買い物をした人が神戸市及びその周辺に住む人間とは限らないし、偽装工作でわざわざ神戸市内まで買いに来たことも考えられるからである。更に1989年(平成元年)6月8日に富山県下新川郡朝日町大平(だいら)の新潟県道/富山県道115号上路(あげろ)・市振停車場線のそばで身元不明の若い男性の焼死体が見つかった事件(未解決)との関係も考えられてしかるべきではなかったのかと思っている(被害者の歯に高額な治療痕があることや遺体を焼いたのは土曜日の夜だったこと、山の中で途切れる県道路線のそばに遺体を遺棄したことなど共通点はいくつもある)。言い換えれば柔軟な発想がなかったことが袋小路に入り込む結果を招いたというわけであるが、本当のところはどうなのだろうか。
※1989年(平成元年)6月8日は木曜日だっただろうと思った方がいるかもしれない(1989年〔平成元年〕は曜日パターンGなので曜日配列はこちらを参照して頂きたい)のだが、富山県下新川郡朝日町大平で身元不明の若い男性の焼死体が発見された事件の本当の発生日は1989年(平成元年)5月27日(土曜日)である。その日に「人のようなものが燃えている」という通報があったのだがその時は見つからず、12日も経った1989年(平成元年)6月8日になってようやく見つかったのだという。山奥の県道路線の人目に付きにくい場所で遺体を焼いたことが発見を遅らせ、捜査を困難にさせたわけである(時期を考えれば分かることだがその間に遺体の腐乱はかなり進んでしまうし…。結局この焼死体の死因は判明しなかったという)が、そのことで容疑者が味を占め、今度は徳島県で…ということは考えられないだろうか。なお、富山県警察本部(富山市新総曲輪〔しんそうがわ〕)と入善警察署(富山県下新川郡入善町椚山〔くぬぎやま〕)は一日でも長く捜査ができるよう事件発生日を1989年(平成元年)6月8日として捜査を続けたがその努力は報われることなく2004年(平成16年)6月8日午前0時をもって被害者の身元も容疑者も判明しないまま公訴時効が成立してしまった。
注17:広島県と山口県を結ぶ道路(高速道路・国道路線・県道路線)は下表の通りである。
番号 | 路線名称 | 広島県側の 市区郡町村名 |
山口県側の 市区郡町村名 |
備考 |
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1 | 国道2号線 | 大竹市 | 玖珂郡和木町 | 栄橋。 |
2 | 広島県道/山口県道122号大竹・和木線 | 大竹市 | 玖珂郡和木町 | 計画路線。 1990年(平成2年)2月1日広島県告示第119号及び1990年(平成2年)2月6日山口県告示第122号により認定されたが、大竹市新町二丁目と山口県玖珂郡和木町和木三丁目を結ぶ都市計画道路の建設が進展していないことから広島県内では未だに区域決定に至っていない。また、山口県側は小瀬川右岸土手〜終点間について区域が決定しているが山口県道135号北中山・岩国線の旧道を区域に編入したからか大型車通行禁止規制が実施されており、有用な道にはなり得ていない。 |
3 | 国道2号線岩国・大竹道路 | 大竹市 | 玖珂郡和木町 | 計画路線。 開通時期は未定。 |
4 | 山口県道/広島県道1号岩国・大竹線 | 大竹市 | 岩国市 | 両国橋。 山口県道/広島県道1号岩国・大竹線はかつてはこの両国橋を渡ったところで終点になっていた(2013年〔平成25年〕12月2日広島県告示第884号及び2014年〔平成26年〕3月31日広島県告示第278号により終点が変更されている)。 |
5 | 山陽自動車道 | 大竹市 | 岩国市 | |
6 | 山口県道/広島県道117号乙瀬・小方線 | 大竹市 | 岩国市 | 乙瀬(おとぜ)橋。 山口県道/広島県道117号乙瀬・小方線は乙瀬橋南詰が起点になっているため山口県側の総延長はわずか32mしかない(但しこれでも山口県道の最短路線ではない。山口県道の最短路線は県道277号長門市停車場線の29mである)。 |
7 | 広島県道/山口県道116号大竹・美和線 | 大竹市 | 岩国市 | 弥栄大橋。 小瀬川に架かる橋に広島・山口県境が設定されているのはここまでである。 |
8 | 広島県道/山口県道2号岩国・佐伯線 | 廿日市市 | 岩国市 | 「佐伯」は「さいき」と読む。 |
9 | 広島県道/山口県道119号佐伯・錦線 | 廿日市市 | 岩国市 | 生山峠。 今は一般県道だが主要地方道(広瀬・廿日市線)だった時代がある(1954〜1965)。 |
10 | 国道434号線 | 廿日市市 | 岩国市 | 松ノ木峠(松の木峠とも表記する)。 国道434号線の最高地点であることを示す看板が設置されている。 |
この他主たる市町村道としては大和橋(大竹市〜玖珂郡和木町間。岩国警察署和木駐在所が沿線にある道でこの道を広島県道/山口県道122号大竹・和木線としているものがある〔無論誤り〕)や小川津橋(大竹市〜岩国市間。山口県道135号北中山・岩国線を岩国市中心部方面から進んでくると岩国市美和町へは右折して橋を渡るように促す標識があるのを目にする。山口県道135号北中山・岩国線はそこから少し進んだ先の民家の前で通行不能になるためである)があるのだが、道路事情などを考えた時最も多く通るのは国道2号線となるのではないのだろうか。つまり、広島県と山口県を往来するに当たって玖珂郡和木町は必ずと言って良いほど通るところとなるのである。その玖珂郡和木町の治安を守る警察施設が廿日市女子高校生殺害事件の情報提供を求めるポスターを貼らないのはどういうことなのだろうか。もしかしたら貼っていた時期もあったのかもしれないし、その後改善されたかもしれないのだが、岩国市や玖珂郡和木町は広島県との繋がりが深いことを思うと広島県警察本部に対して非協力的な態度はとれないのではないのだろうか。
注18:この方法、すなわち「何度か連絡を試みたが通じなかった」とか「連絡がとれなかった」と相手に言って相手の思いを一蹴する方法はいくつかの大手派遣会社でも就職希望者に不採用を伝える手段として使用されているようである。しかし、携帯電話は電源を切っていたとしても電源を切っていた間の着信はきちんと記録されるし、就職希望者が嘘の電話番号を記すはずもない。更に電子メールで「あなたとは連絡がつきません」と訴えてくること自体おかしい(電子メールも連絡の一手段だから。伝えたいことがあるのなら電子メールを使えば良いのではないか)。素直に「派遣先に予定していた企業の意向によりこれ以上話を進めることはできなくなりました。大変申し訳ありません」と言えば良いのではないかと私は思うのだが、なぜそのようにせず、幼稚園児の言い訳のような嘘をつくのだろうか(しかもいつ連絡を試みたのかも明らかにしていない)。何年か前、世界的な不況の時にいわゆる派遣切りが社会問題化したことがあるが、派遣会社がこういうぞんざいな不採用通告を行うことが問題にならないのは私としてはどうかと思う。ぞんざいな不採用通告を行うということは相手を大切に思わない証でもあるわけであるが、派遣会社に頼ることは考え物ではあるけれど改善の声が上がっても良いのではないのだろうか。
注19:1970年代末期に警察庁(東京都千代田区霞が関二丁目)では複数の身元不明の殺人事件の被害者の似顔絵を掲載したポスター「この人を見知りませんか?」を数パターン作成し、全国各地に貼ったことがあった。ところが似顔絵または復顔像の不気味さに嫌悪感を示す方が少なくなかったこと(所構わず貼りまくった警察署もあったことも一因。当時の福山東警察署管内では何と福山市中心部のある木工作業所〔現存せず〕の入口の引き戸にまで貼っていたほどである)からその後こういうポスターは企画されなくなった。
※「この人を見知りませんか?」というポスターは当時多くの刑事ドラマやヴァラエティ番組でも登場していた。最も多くテレビに「出演」したポスターということになるかもしれないのだが、視聴者の中に不快感を抱いた方はいなかったのだろうか。
注20:中島さんの父親(浜田市出身で元島根県警察本部職員。もっとも中島さんが生まれる前に退職し、当時急激な成長を遂げていた福山市に移住したとのこと)もその一人である。